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「繰り返しは嫌だった」 ルカ・グァダニーノ監督が明かす『サスペリア』オリジナル版との差別化

リアルサウンド

19/2/6(水) 10:00

 1977年に公開されたダリオ・アルジェントによる同名ホラー映画を、『君の名前で僕を呼んで』のルカ・グァダニーノ監督がリメイクした映画『サスペリア』が、現在公開されている。そのショッキングな映像やグァダニーノによる新解釈などで、日本でも賛否両論だ。

参考:『君の名前で僕を呼んで』監督が明かす桃への思い 「日本の美味しい白桃を使えたらよかった」

 『胸騒ぎのシチリア』『君の名前で僕を呼んで』では陽光を浴びた豊かな自然の姿を収めた彼が、血生臭く湿度の高い本作を手掛けたことに驚いた人も多かったのではないだろうか。しかし、グァダニーノは小さい頃から大のホラー好きだと答えている。

 「『サイコ』や『ザ・フライ』『遊星からの物体X』『キャット・ピープル』が大好きだった。あと、『アッシャー家の惨劇』などロジャー・コーマンが手掛けたエドガー・アラン・ポー原作の映画には感銘を受けた」と彼の感性を刺激した名作たちを愛に満ちた表情で語ったグァダニーノ。

 『サスペリア』は、1977年、ベルリンを拠点とする世界的に有名な舞踊団マルコス・ダンス・カンパニーに入団したスージー・バニヨン(ダコタ・ジョンソン)が、魔女の脅威にさらされるという物語。幽霊、殺人鬼、悪魔、ピエロ、宇宙人など様々なホラーが存在する中、『サスペリア』が描く魔女の脅威というのは、日本では馴染みの浅い文化と言えるだろう。

 グァダニーノは魔女について、「権力を持った集団が、独立心のある女性を魔女と呼んで抑圧してきた歴史がヨーロッパにはあると思う。ヨーロッパでは何度も何度も人が起こした暴力の波が存在し、何世紀もの間深い傷として残ってきた」と語り、魔女は超自然的な存在と言うよりは、ある種の “訴えられた人々”だと考えていると言う。

 “魔女の脅威”は、言葉のみでは想像し難いが、百聞は一見にしかず。本作の序盤では、マルコス・ダンス・カンパニーの生徒オルガ(エレナ・フォキーナ)が、魔女たちによる“とある儀式”によって、身体が思いもよらぬ方向に折れ曲がるというショッキングなシーンが映し出される。これはどんなホラーアイコンも与えられない魔女ならではの苦痛だと言えるが、グァダニーノは同シーンを以下のように振り返る。

 「時間がとてもかかったよ。ものすごくジェスチャーに気をつけた。あのシーンは、ダンサーのエレナ・フォキーナと、振付師のダミアン・ジャレの素晴らしい仕事だった。実は、ビジュアルエフェクトはほとんど使っていなくて、鏡に写り込んだカメラを消すくらいの作業だった。身体が折れ曲がるところは、エレナの手を動くところまで動かして、プロステティックを作って曲げていたんだ。僕はCGを使った世界には批判的で、アナログの身体性がすごく好きだからね」

 グロテスクのみに留まらぬ芸術性を孕んだ映像が本作の特徴とも言えるが、潜在する恐怖を汲み上げるレディオヘッドのトム・ヨークの音楽もグァダニーノの世界と調和する。グァダニーノは起用理由について「僕の世代を代表する、とても有名な人がよかった。メランコリックで詩的な要素をすべて持っているのがトム・ヨークだった」と語る。

 また楽曲は共同で作り上げていったそう。「僕が『お願いします』とリクエストしたのではなく、一緒に協力して共に探していった感じだ。『マダム・ブランが決断するときは、こういう音楽、ダンスはこれがいいんじゃないか』という風に考えていった。非常に長く時間がかかったが、とても美しいプロセスだった」。

 今回リメイクするにあたって、グァダニーノは「女性のアイデンティティが支配する映画にしたかった」と言っている。現にメインキャストは全員女性。ティルダ・スウィントンは、マダム・ブラン/クレンペラー博士(ルッツ・エバースドルフ名義)/マダム・マルコスの3役で出演しているが、「このアイデアはデヴィッド・カイガニックと脚本を書き始める段階からあった」と話し、女性だけの映画にすることにこだわったと明かす。

 その一方で、アルジェント版の『サスペリア』はインスピレーションの1つに過ぎなかったと吐露。「繰り返しをするだけでは嫌だったんだ。アルジェントの『サスペリア』は、1976年に製作され、1977年に公開されたが、同作はファンタジーで周りの社会と全く関係ない物語だった。でも僕はアプローチとして、社会情勢に浸かっているものが作りたかったから、今回1977年のベルリンを掘り下げた」。

 ヒューマンドラマ、ラブストーリー、ホラーと新作が公開される度に、振り幅の広さを知らしめてきたグァダニーノだが、監督としては「折衷主義的になりたい」と考えているという。「違うものをより合わせて、色んなことができるようになりたい。僕は幽霊のホラー映画も撮りたいんだ。まだまだホラーは撮っていきたいね」。(取材・文・写真=阿部桜子)

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