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『まんぷく』安藤サクラ、“朝ドラの難題”クリアし国民的女優へ 表現者としての類い稀な存在感

リアルサウンド

19/3/30(土) 6:00

 『まんぷく』(NHK)で、朝ドラ初の“ママさんヒロイン”として駆け抜けた安藤サクラ。彼女が演じる福子のパワフルなキャラクターから、日々元気をもらっていた方も多いのではないだろうか。

 安藤といえば、昨年フランスで開催された第71回カンヌ国際映画祭にて、出演した『万引き家族』がパルム・ドール(最高賞)を受賞したことも記憶に新しい。さらに本作での演技において、自身2度目となる日本アカデミー賞最優秀主演女優賞も獲得したばかりだ。こうして今や国内外にその名はとどろき、“国際派女優”となった安藤だが、この流れはここ最近にはじまったことではない。デビュー当初から見せていた彼女のその異能の片鱗に、早くから気づいていた方も少なくないだろう。

【写真】安藤サクラから広瀬すずへ バトンタッチ会の様子

 安藤は、父・奥田瑛二が監督した『風の外側』(2007)で正式な女優デビューを飾ると、『むずかしい恋』(2008年)、『俺たちに明日はないッス』(2008)、『愛のむきだし』(2009)と、ミニシアター系の作品を中心に立て続けに出演し、メキメキと頭角をあらわしてきた。早くも転機となったのが、園子温監督の『愛のむきだし』だろう。一大センセーションを巻き起こした本作で安藤はカルト教団の一員に扮し、艶かしくエキセントリックな好演で、その存在をスクリーン内で爆発させた。

 その後は、『SR サイタマノラッパー2 女子ラッパー☆傷だらけのライム 』(2010)、『愛と誠』(2012)、実の夫である柄本佑と主演した『今日子と修一の場合』(2013)、実姉・安藤モモ子が監督した『0.5ミリ』(2014)など、ジャンルや作品の規模を問わずキャリアを重ね、『百円の恋』(2014)で初めてのアカデミー賞最優秀主演女優賞を獲得。限られた予算や撮影スケジュールの中でロバート・デ・ニーロ並みの驚異の肉体改造までをも実現し、女優の凄みを世に知らしめ、そのほか数多くの女優賞を獲得した。

 すでに触れたように、安藤は業界でも有数の芸能一家であることが背景にあり、潜在的な表現者のDNAを継いでいることがうかがえる。これはなにも血統の話ではない。生まれてから日々を過ごしていく中で、つねに何かしらの表現に触れてきたことは、やはり他の人々には持ちえない、稀有な財産となっているのではないだろうか。

 さて、そんな安藤が主演を務めた『まんぷく』もついに最終回となった。かつては新社会人としてホテルの電話交換手の初々しい姿を見せていた福子だが、夫である萬平(長谷川博己)との二人三脚で時代の荒波をいくつも乗り越え、彼の革新的な発明の数々に貢献。ラーメンが売れなければサクラにも扮し(サクラなだけに!)、気がつけば大きくなった二児の母でもある。

 DREAMS COME TRUEの歌う主題歌「あなたとトゥラッタッタ♪」に合わせ、福子が愛らしい姿を見せるオープニング。登場するのは安藤だけであり、放送開始当初に面食らった方も多いのではないだろうか。しかしここだけでも十分に、彼女のポテンシャルが現れているように思える。いくら短い映像だとはいえ、そして大自然がバックにあるとはいえ、主体となるのは安藤ただひとりだ。華美な演出のないシンプルな作りのそれは、作り手たちの挑戦的な試みと受け取ることができ、毎朝の物語の幕開けを、彼女たったひとりで背負えることを証明した。さらに安藤は、満面の笑みを浮かべて終始奇妙な動きを繰り返すが、少女のようなあどけなさの中に、ときおりグッと大人びた表情をのぞかせ、“オトナ”と“コドモ”をひとつの身体で体現している。

 これは本編でも、安藤の大きな武器となった。彼女の年齢不詳性は、朝ドラの難題ともいえる、演者とキャラクターの年齢の開きを軽快にクリア。さらに、品の良さと愛嬌、安心感を与える柔和な笑顔と不屈のタフネスとが、性別というものまでも乗り越えていたように思える。こういったさまざまな要素が重なり合い、福子というキャラクターが、男女問わず幅広い世代から愛されるものになっていったのではないだろうか。

 こうして“国民的女優”とも呼べる存在になった安藤だが、2014年にキネマ旬報が企画した「オールタイム・ベスト 映画遺産 日本映画男優・女優100」の女優部門において、高峰秀子や原節子、山田五十鈴らに続き8位に選出されている。これは映画の目利きの人々のアンケートによるものだ。映画史に名を刻む錚々たる顔ぶれの中、ここに安藤の名が挙がる理由が、いよいよもってより広く認識されたのではないだろうか。いち映画・ドラマファンとして、安藤サクラと同時代を生きられることは、この上なく幸福なことに思える。

(折田侑駿)

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