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綾瀬はるか、『いだてん』で圧倒的な華に NHK×宮藤官九郎は“不思議”系女優を輝かせる?

リアルサウンド

19/2/7(木) 6:00

 宮藤官九郎のオリジナル脚本のNHKの大河ドラマ『いだてん~東京オリムピック噺~』が視聴率では苦戦を強いられている。

 初回の猛スピードで駆け抜けた展開の速さや、中村勘九郎演じる「オリンピックに初参加した男」金栗四三役の知名度の低さなどがその理由として挙げられているが、その一方で、四三の幼なじみで、後に妻となる春野スヤを演じる綾瀬はるかには絶賛の声が多い。

【写真】『いだてん』の綾瀬はるか

 いつも前向きで、ハイカラで、自転車で爆走しながら大声で叫んだり歌ったりする明るさ・元気さの一方で、自分自身のことは語らず、相手の話を聞こうとする繊細な優しさも持ち合わせているスヤ。声が聴こえてくるだけで、思わずその姿を画面上に探し、画面の隅に姿が見えてくるだけで、目で追ってしまう圧倒的な華がある。 

 ところで、綾瀬×NHKといえば、大河ドラマ初出演で初主演を果たした『八重の桜』をまず思い出す人が多いだろう。「幕末のジャンヌダルク」と呼ばれる新島八重を演じたが、前半はヒロインが出張らず、歴史をじっくり丁寧に描いていたにもかかわらず、視聴率の苦戦ぶりのためか、後半になってテイストが急変。凛々しく美しい綾瀬を堪能できた一方で、加齢は一切感じさせず、前半の世界観を失い、学校設立の別の物語になってしまっていた。

 また、三年がかりで放送された“ファンタジー大河ファンタジー”『精霊の守り人』では、バルサ役として顔を黒くし、少年のような凛々しい雰囲気でキレの良いアクションを見せたが、ファンタジーの世界観や設定が頭に入ってきにくいこと、バルサと綾瀬のイメージが合わないことなどから、やはり苦戦を強いられてしまった。

 これらの作品から、実はこれまで綾瀬とNHKとの相性は、あまり良くないんじゃないかと思っていた。そんなイメージを見事に覆したのが、綾瀬はるかの本来の魅力を存分に生かした『いだてん』の脚本・演出である。

 綾瀬に限らず、NHKと相性の良い女優・そうでない女優というのは、多少なりともいる気がする。

 例えば、一年間放送の朝ドラ『君の名は』でヒロイン・真知子を演じ、眩いばかりの美貌と「棒読み」の印象を強く与えた鈴木京香。彼女は、三谷幸喜脚本の『王様のレストラン』(フジテレビ系)において、元ホステスで「愛人顔」の三条を軽やかにコミカルに演じ、コメディエンヌとしての魅力を開花させる。その後、『恋人よ』(フジテレビ系)では結婚式前に夫を裏切り、かつての恋人と関係を持つ女性をなまめかしく演じ、『きらきらひかる』(フジテレビ系)ではクールで知的な助教授役を演じた。上品でお人形のようだった美人女優から、後に得意分野となる「色気」と「知性」を体温ある温度で民放ドラマが引き出したわけだ。そして、民放でブレイクした後にドラマ10の『セカンドバージン』や、朝ドラ『わろてんか』の厳しい義母役などでNHKドラマに出戻りを果たしている。

 また、上野樹里の場合は、朝ドラ『てるてる家族』のヒロインの姉で、品行方正な理系女子役で人気を得た。しかし、『のだめカンタービレ』(フジテレビ系)の型破りで変態で天才な「のだめちゃん」で大ブレイクした印象が強すぎて、『ラスト・フレンズ』(フジテレビ系)では性同一性障害を抱える役を繊細に美しく演じたにもかかわらず、大河ドラマ『江~姫たちの戦国~』が「のだめにしか見えない」と言われて大惨敗してしまったケースもある。こちらは民放でのブレイクの影響を悪い意味で受けてしまったのだろう。

 また、多部未華子の場合は、玉の輿を狙って猛アタックをする女子を演じた『山田太郎ものがたり』(TBS系)や、鹿になってしまった主人公の秘密に深く関わる剣道部女子を演じた『鹿男あをによし』(フジテレビ系)、『デカワンコ』(日本テレビ系)など、サブカルテイストの作品とは実に相性が良い。にもかかわらず、朝ドラ『つばさ』で演じた「20歳のおかん」ヒロインは、不思議な劇団臭が強すぎてお茶の間で浮いてしまい、大惨敗してしまった。多部のカルチャー臭が吉と出るか凶と出るか、その調理方法の巧拙が分かれた印象だ。

 かと思えば、宮崎あおいのように、もともと活動の主軸をCMや映画に置きつつ、朝ドラ『純情きらり』主演や、『あさが来た』のヒロインの姉、大河ドラマ『篤姫』主演、さらに単発スペシャルドラマ『眩~北斎の娘~』主演と、どれも高評価を得ているNHKと相性抜群の女優もいる。

 また、『アシガール』主演で大人気となったほか、朝ドラ『マッサン』、大河ドラマ『花燃ゆ』、土曜ドラマ『夏目漱石の妻』出演など、NHKドラマの世界観にしっくりなじむ黒島結菜のようなタイプの女優もいる。

 こうして振り返ると、NHKドラマによくなじむのは、どこか「優等生」だったり、「真面目」に見えたり、「ふんわりやわらかに見えて芯が強そう、気丈そう」だったりするタイプが多い気がする。一方、NHKドラマが扱いにややてこずるのは、「天然系」「おっとり系」「不思議ちゃん系」で、民放ドラマでの輝きを見た上でそれをうまくNHK的に翻訳できるかどうかが、評価の分かれるところなのではないか。

 と思うと、『いだてん』の綾瀬はるかも、『あまちゃん』ののん(能年玲奈)も、「おっとり系」「天然系」「不思議ちゃん系」ではあるが、いずれも本人の魅力を役柄に生かす「あてがき」の上手い宮藤官九郎作品で魅力を開花させている。NHK×宮藤官九郎は、これまでのNHK文脈にない「おっとり」「天然」「不思議」系女優を輝かせるための一つの確立された方法論なのかもしれない。

(田幸和歌子)