Download on the App Store ANDROID APP ON Google Play

ぴあ

いま、最高の一本に出会える

18scott×SUNNOVAが語る、濃密なヒップホップアルバム『4GIVE4GET』で示したシーンの行方

リアルサウンド

18/12/19(水) 13:00

 1993年生まれ、神奈川県藤沢市出身のラッパー/ビートメイカー・18scott、そして、DAOKO、泉まくらなどへのビート提供、ロックバンド・downyのライブメンバーとしても知られる音楽プロデューサー/ビートメイカーのSUNNOVAによるアルバム『4GIVE4GET』(18scott×SUNNOVA)がリリースされる。エレクトロ、アンビエント、ドローンなどを融合させたSUNNOVAのトラック、そして、「自分がラップをすれば、どんなトラックもヒップホップになる」(18scott)という18scottのスキルフルなラップが融合した本作は、この先のヒップホップシーンの行方を示す大充実作に仕上がってる。

 3年前、恵比寿のクラブで出会ったふたりが本作『4GIVE4GET』を生み出すまでのプロセスを中心に、お互いのルーツ、現在のヒップホップシーンに対するスタンスなどについて語ってもらった。(森朋之)

(関連:輝夜 月「Dirty Party feat. エビーバー」に見るヒップホップ/パンクからの影響をさやわかが解説

■「これだけの人が、なんで名前を知られていないんだろう?」って

——18scottさん、SUNNOVAさんの交流が始まったのはいつ頃ですか?

18scott:3年くらい前かな。恵比寿のBATICAというクラブでイベントが一緒になって。そのときにお互いのライブを観て、話し掛けてもらったのがファーストコンタクトです。僕はSUNNOVAさんというビートメイカーを知っていたんですけど、僕のほうは今以上に無名だったから、たぶん認知されてなかったんじゃないかな。

SUNNOVA:うん(笑)。そのときに初めて彼の存在を知って、「こういう才能のあるラッパーがいるんだな」と思って。ヒップホップ的な基礎体力、スキルがすごくあって、なおかつサビのメロディも自分で作れるラッパーは、そんなにいないですから。あのときって大学生だったよね?

18scott:はい。就職活動中でした(笑)。

——18scottさんは当時、どんな活動をしていたんですか?

18scott:以前はクルーに所属していたんですけど、ちょうどソロでやり始めた時期ですね。そのライブのときは、クルーを辞めて、ひとりでやりはじめた直後だったんです。ただ、活動と言えるようなことはやってなかったですね。BATICAの店長は目を掛けてくれて、ときどきイベントに呼んでもらってたんですけど、それ以外にハコの知り合いもいなくて。ずっと曲は作っていたし、自分ではいいものが出来てる自負もあったんだけど、それをどうやってアウトプットすればいいのか全然わからなかったんです。あと「飛び級したい」とも思っていたんですよね。22歳って若いけど、当時、もっと若くて有名なラッパーもいたし、いまから下積みをやる時間はないなと。どうにかして一歩目を大きく踏み出せないかなって、いろいろ考えている時期でした。

SUNNOVA:一歩踏み出すまでに、だいぶ時間かかったね(笑)。

18scott:そうですね(笑)。

SUNNOVA:「これだけの人が、なんで名前を知られていないんだろう?」って思いましたからね。個人的にはFla$hBackSのライブを初めて観たとき以来の衝撃だったし、「この人は勝手にひとりで大きくなっていくだろうな」と。

——一緒に制作をするとは思ってなかった?

SUNNOVA:そのときは思ってなかったですね。「一緒に出来たらいいね」って声は掛けたんだけど、その後、半年くらいタイムラグがあって。

18scott:一緒にライブをやるはずだったDJがいなくなっちゃって、半年くらい何のコンタクトも取ってなかったSUNNOVAさんにいきなり「バックDJをやってもらえませんか?」って連絡したんです。他にDJの知り合いもいなかったので……。人付き合いが上手いタイプじゃないんですよね。

——クラブとのつながりもないし、DJとの交流もない(笑)。そういえばプロフィールにも「藤沢を地元に持ち、藤沢を愛しながらも、既存の藤沢のヒップホップシーンに関わることなく活動してきた」とありますが。

18soctt:そうなんですよね(笑)。藤沢はヒップホップが盛んで、まだ作品をリリースしてない人も含めて、たくさんラッパーがいるんです。彼らは本当に藤沢のノリが色濃くて、作る音、言葉のチョイスや乗せ方を含めて、「藤沢のラッパーだな」という感じがすごくあるんですよ。中学くらいからスケボーをはじめて、そこでヒップホップを知って、自分でもやるようになって……という人が多いし、ルーツが地元にあるので。僕はそうじゃなくて、後になって「藤沢にもカッコいい人達がいる」って知ったタイプなので、そもそもルーツが違うというか。曲のなかに「藤沢」ってフレーズも出してるけど、藤沢を代表している感覚はないんですよね。生まれ育った場所だし、いまも住んでいるので大好きですけどね。いつか「藤沢といえば18scottだよね」って言ってもらえるようになれたら嬉しいけど、自称はしないです。

■どんなトラックでも、自分がやれば絶対にヒップホップにできる

——ふたりで楽曲を作り始めたのは何がきっかけだったんですか?

18scot:SUNNOVAさんにバックDJをやってもらった直後、すぐ1曲作りましたよね?

SUNNOVA:うん。トラックメイカーとしての彼もすごくいいなと思っていたし、「この人はソロでやっていくんだろうな」と思ってたんです、最初は。そのなかで「何曲か一緒にやれたらいいな」くらいで。ただ、何曲か作っていくなかで、ふたりで作ることで広がりが出ることに気付いて。もともと好きな音楽やスタイルが違うからこそ、お互いにないものを補完できるんじゃないかなと。そういう幅の広さを持っているラッパーって、シーン全体を見渡してもそんなにいないと思うんですよ。

18scott:ラッパーとビートメイカーが一緒にやる意味は、まさにそこにあると思っていて。自分でも作れるようなビートだったり、似た傾向の人と一緒にやる理由は何もなくて、自分では思い付かないこと、センスの外側にあるビートを作れる人と一緒にやるからこそ、ひとりでは作れない曲につながるっていう。SUNNOVAさんのビートはヒップホップのそれではなくて、いろんな音楽を吸収した独自のものですからね。あと、僕自身が「自分がラップをすればヒップホップになる」と思っているのが大きいですかね。

SUNNOVA:そうだね。

18scott:どんなトラックでも、自分がやれば絶対にヒップホップにできるっていう。ヒップホップとかけ離れたものを自分のラップでヒップホップに持ってくることで、いままで聴いたことがない音楽を作れると思っていたんですよ。

SUNNOVA:ラップは歌唱法のひとつであって、「ラップ=ヒップホップ」でいうことではないと思うんです。でも、彼のラップは「本当にヒップホップだな」という感じがあって。僕のトラックと彼のラップが合わさると、すべてヒップホップのレールに乗るんですよ。

18scott:いまって、ラッパーの腕が試されてる時期だと思うんですよね。USで流行っているようなビートであれば、どんなラッパーも乗りこなせると思うんです。それがカッコいいかどうかか別にして。そうじゃないビートにラップを乗せたときに、いかにヒップホップのカルチャーを消さず、いいものにできるか?というのがラッパーの実力じゃないかなって。今回のアルバムは「どんなトラックでもヒップホップに昇華できる」という提案でもあるんですよね。

SUNNOVA:うん。楽器のプレイヤーには手グセみたいなものがあって、「あの人が弾くとブルースっぽくなるよね」みたいなことってあるじゃないですか。18scottのラップはそれに近しいものがあると思いますね。どんなジャンルのトラックでもヒップホップになるっていう。

——いちばん聴いてきた音楽も、やはりヒップホップ?

18scott:そうですね。父親の影響で小学校の頃から聴き始めたのが、KREVAさん、RHYMESTERさんなどの日本のヒップホップで。中学生になるとB系ファッションが流行って、「クラスのイケてるやつはヒップホップを知ってる」みたいな雰囲気があったんですけど、僕はもっと前から聴いてたから「あいつ、結構すごいよ」みたいなポジションで過ごしていて(笑)。

SUNNOVA:(笑)。そういうのあるよね、ジャンルは違っても。

18scott:そうですそうです(笑)。僕はその頃から「自分でやりたい。ステージに立つ側になりたい」と思っていて。人知れずリリックを書いたりもしてたんですよ、中学のときから。ふだん聴いてる曲のトラックに合わせてラップしたり……。みんなやってたと思いますけどね、まわりのヤツらも。

——それはちょっと意外ですね。アルバムを聴いても、USヒップホップの影響が強いのかなと思ってました。

18scott:「USばっかり聴いてたんでしょ?」ってよく言われるんですけど、海外のヒップホップをちゃんと聴くようになったのは、わりと最近なんですよ。サブスクが発達して、めちゃくちゃ聴きやすくなったので。藤沢のタワレコは最近復活しましたけどしばらくなかったし、iTunesでダウンロードするのもめんどくさかったから、「サブスク、すげえ」って(笑)。

SUNNOVA:ホントだよね。聴いてなかった名盤も気軽に聴けるようになったり。

18scott:そうそう。新譜もすぐチェックできるし、時間があれば1日中聴いてますね。ただ、系譜みたいなものがわからないんですよ。「このラッパーはNYで」とか「アトランタで」とか、誰と誰がつながってるとかはあまり知らなくて。いちばん色濃いルーツは日本語のラップなんですよね、やっぱり。高校の頃のフロウなんて、ほとんどMummy-Dさんだったので(笑)。

SUNNOVA:そうなんだ?(笑)。

18scott:学生の頃に作ってた音源を聴くと「○○っぽい」という感じがあるし、まだまだ自分のスタイルが確立できてなくて。それができたのも最近かもしれないですね。ヒップホップを知ったのは早かったかもしれないけど、自分の表現に持ってくるまでにはかなり時間がかかってます。

■いまの日本のヒップホップの枠には収まらない作品

——では、アルバム『4GIVE4GET』の楽曲について聞かせてください。ふたりで作った最初の曲はどれですか?

18scott:「MONEY TALX」ですね。アルバムの最後にRamzaさんのリミックス(「MONEY TALX(Ramza Remix)」)が入ってるんですが、そのオリジナルバージョンが最初です。

SUNNOVA:最初は違うビートだったんですよ。

18scott:そう。ラップを乗せてから、ビートを差し替えて。

SUNNOVA:そのやりとりのなかで、「こういうビートが合いそうだな」というのがわかってきて、作るビートの傾向を変えて。個人的にポイントになった曲は「PHONE CALL」ですね。「バンドっぽい感じでやってみよう」というイメージで作ったんですけど、その頃に聴いてたThe xxの新譜(『I See You』)の影響もあるかも。そういう話はしてないですけどね。

18scott:The xx、ぜんぜん知らないです(笑)。ただ、「PHONE CALL」はトラックが届いたときに「すごくいい」と思ったし、歌詞もすぐに書けて。「絶対、この曲でMVを作ろう」と思ったし、「PHONE CALL」が出来たことでアルバムの全体像がバチっと見えたんですよね。<ULTRA-VYBE>(レーベル)から出すという話が進み始めたのも、ちょうどその時期で。

SUNNOVA:いまのモードに即した曲を作り始めたタイミングでしたね。僕は決まった制作方法がなくて、時期によって機材や作り方を変えちゃうので、「以前みたいな感じでやってみよう」と思ってもできないんですよ(笑)。

——アルバムの全体像が見えてからは、制作はスムーズでした?

18scott:そうですね。曲数を決めて、「こういう曲が足りないから、こんな感じのビートをください」という話をしながら、慎重にピースを埋めていって。

SUNNOVA:かなり緻密に構成した感じですね。18scottにとっては初めてのフィジカルの作品だけど、初期衝動というより、しっかり考えて作り込んだアルバムだと思います。

18scott:ビートも何もない時期から、曲順と曲名だけメモってたんですよ(笑)。SUNNOVAさんはインスタにビートをアップすることがあるんですけど、アルバムの設計図に照らし合わせて「○曲目に合いそうだな」と思って「そのビート、キープさせてください」とか。勢いで作って、後からアルバムとしてまとめる人もいると思うんですけど、僕はまず大枠を作りたいので。

——1曲目の「ALLRIGHT」、2曲目の「FOREST」はがっちりラップを聴かせる曲ですが、それも最初から決めてた?

18scott:あ、そうですね。リスナーとしても、1曲目で喰らいたいというか、ガツンと来てほしいので。

SUNNOVA:確かに最初の2曲は、ラップが上手くないと成立しないトラックだよね。サビのメロディもそんなに動いてないし。

18scott:ラッパーである以上、ラップは絶対にカッコ良くないといけないし、行けるところまで行ってないとダメだと思っていて。アルバムのなかにはメロディアスな曲もあるし、ヒップホップが好きな人もそうでもない人どちらにもアプローチ出来るようにバランスはすごく考えたんですけど、順番として、まずはラッパーであることを1曲目、2曲目でわかってもらわないといけないなと。7曲目の「BLUe」もそうですね。アルバムの中盤は歌モノが続くから、このあたりでラップを聴かせる曲を入れておきたくて。

SUNNOVA:途中、オートチューンを使った曲もあるからね。

18scott:オートチューンを使った曲は以前から好きなんですけど、ヒップホップシーンのなかでは、だいぶ垣根が高い時期があって。

SUNNOVA:オートチューンを使ったとたんに「セルアウトした」っていうね(笑)。

18scott:そうそう(笑)。それも人によると思うんですよ。たとえばKREVAさんがオートチューンを使っても、がっつり歌ったとしても、「この人がやってることはヒップホップだ」という認識が自分のなかにあって。ロックバンドでラップをやってる人もいるけど、「この人のなかにあるヒップホップが完全に出てるな」と感じたりしますからね。もちろん、そうじゃない人もいるけど。

SUNNOVA:そのあたりの感覚って、僕はわからないんですよ。「たとえばヒップホップの現場で、どの曲が刺さるか?」ということは彼のほうがよくわかってるので。僕としては、さっきも言った通り「広がりが出ればいいな」というところですね。曲としてもいいものが出来たと思うし、そこは良かったかなと。

——歌詞に関しても、大枠のテーマみたいなものがあったんですか?

18scott:アルバムのタイトルをだいぶ前から決めていて、それに準じて書いていった感じです。『4GIVE4GET』は、許す(forgive)、忘れる(forget)という意味で。アルバムの制作に入る頃に、信頼していた仲間、大切に思っていた人から裏切られることが重なったんですよね。そのときはだいぶ参ってたんですけど、バッド・ヴァイブスをため込むとどんどん連鎖しちゃって、いいものが入って来なくなると思って。「あいつにこんなことされた」「あいつマジむかつく」みたいなことは、誰にでもあるじゃないですか。大事なのはそのことにどう対処して、どう昇華するかってことだと思うんです。最終的には、許せるマインドを持って、忘れることなのかなと。それができれば、自分自身の生活がもっと豊かになると思うので。

SUNNOVA:なるほど。

18scott:自分がそれを実行できたかはわからないけど、そういうテーマで歌詞を書いてましたね、このアルバムは。なので、イライラしている人にも聴いてほしいんですよね。そういう人の気持ちもわかるし、最後は大切なものを見つけられるアルバムになっていると思うので。

——ヒップホップに対するスタンス、幅広い音楽性、伝えるべきメッセージを含めて、濃密なアルバムになりましたね。

18scott:ようやく世に問えますね。2年くらい前から、ライブでずっと「アルバムを出します」って言ってたんですよ。数少ないファンの人から「楽しみにしてます」って言われて、何も決まってないのに「来年の夏には出すよ」とか。

SUNNOVA:出す出す詐欺だね(笑)。

18scott:最近は恥ずかしくて言えなくなってましたからね(笑)。ようやくアルバムを出せることがまず嬉しいし、すぐに次の作品に向かって動かないといけないなと思ってます。遅くなったぶん、取り返さないと。

SUNNOVA:1枚アルバムを作って、わかってきたところもたくさんありますからね。

18scott:「こうすれば効率的にやれる」とか。次はもうちょっと早く出せると思います。

——18scottという名前もさらに広まると思いますが、シーンのなかで、どういう立ち位置を目指しているんですか?

18scott:個人的にはシーンのトップに行きたいですね。

SUNNOVA:おー!!

18scott:それを目指さないと、やる意味ないと思うので。もしトップになれたら、次のステージが見えてくるだろうし。がんばらないとダメですけどね、まだまだ。同世代でも、かなり先に行ってる人たちがいるので、まずは彼らに追いついて、追い越さないと。

——『4GIVE4GET』のクオリティは世界レベルだと思いますけどね、個人的には。

18scott:ホントですか?じつは僕も、世界水準のアルバムが出来たと思ってますけどね。いまの日本のヒップホップの枠には収まらない作品だと思うので。

SUNNOVA:まずは日本のなかで認知してもらうことが大事だけど、たとえばKOHHさん、88risingのHigher Brothers、Jojiが世界で活躍しているのを見ると、英語圏においても「英語じゃない」という理由で切り捨てられる感じではなくなってるじゃないですか。それもサブスクの恩恵の一つかもしれないけど、海外に発信しやすい時代になったと思いますね。(森朋之)

Download on the App Store ANDROID APP ON Google Play