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西野カナが支持され続ける理由は“言葉のチョイス”にあり? ラブソングの変遷を辿る

リアルサウンド

19/4/2(火) 16:00

 先日、自身が30歳を迎えると同時に電撃結婚した西野カナ。年明け早々には、2月の横浜アリーナ公演を最後に無期限の活動休止を発表し、こちらも大きなニュースとなっていただけに、世間の驚きもひとしおだったのではないだろうか。公式サイトに掲載されたメッセージを読んだファンからは「西野カナの結婚嬉しすぎる」「カナやんらしく幸せになってほしい」などの声が相次ぎ、SNSは祝福ムード一色に。発信者の多くが、彼女と同世代の女性だったことからも、改めて同性からの支持の高さがうかがえた。1990年代なら安室奈美恵、のちに浜崎あゆみや宇多田ヒカルが登場し、2000年代にはaikoや椎名林檎の人気が高まってきたように、時代ごとに女心を代弁すると評されるアーティストは枚挙にいとまがないが、西野カナも間違いなくその系譜に連なる歌い手のひとりと言っていいだろう。

(関連:西野カナ、無期限の活動休止を発表 レビューや分析記事から活躍を振り返る

 2008年に1stシングル『I』でメジャーデビューした西野カナ。矢継ぎ早に新曲をリリースする中で、シンディ・ローパーのジャパンツアーでオープニングアクトを務めたり、出身地でもある三重県の観光大使に就任したりと、新人アーティストらしからぬ大抜擢も注目を集めた。その人気を不動のものにしたのは、2009年から2010年にかけてリリースした『もっと…』『Dear…/MAYBE』『Best Friend』『会いたくて 会いたくて』といった一連のシングル楽曲群だろう。全てオリコンチャートで上位10位入りを果たしたほか、当時全盛だった携帯電話への配信、デジタルダウンロードにおいては圧倒的な強さを見せ、“着うた女王”の異名を持つまでに。以降、紅白歌合戦には通算9回出演、レコード大賞や有線大賞でも数多の賞を受賞し、名実ともに2010年代を代表する女性歌手としての立ち位置を確立した。

 彼女の楽曲の要となってきたのは歌詞だ。デビュー以来、ほぼすべての曲で作詞を手がけるその理由は、「自分の想いを伝えたいし、そうすることで”西野カナ自身のことを知ってもらえる”と思ったから(参照:エニーミュージック)。その言葉の通り、彼女の書く詞には、その時々の西野自身の心情をすくい取ったものも少なくない。たとえば過去10年間の活動を前半と後半に分けると、最初の5年は「もっと…」や「会いたくて 会いたくて」など失恋や遠距離恋愛などをテーマに一方通行の恋心を描いた楽曲が多い。 

 一方、2014年の「Darling」「好き」以降は恋人に向けたまっすぐな気持ちや、女心をわかってほしいというメッセージが描かれるように。結婚の報を聞いた今なら、その変化にプライベートも影響していたのではないかとも考えてしまうが、さすがに野暮だろう。とはいえ、どちらのタイプの楽曲とも多くの同性から共感を得ているのは事実。では、彼女の詞の何が女性たちの心を捉えて離さないのか。

 その最たるは言葉のチョイスにある。たとえば「トリセツ」で自分自身を“一点物”“永久保証”とアピールする場面。ほかの誰でもない自分だけの価値を恋人に知ってほしいという女心を、ここまで簡潔にシンプルな言葉で表した歌詞はほかにはないのではないだろうか。

 また「29」は、30歳を目前に控えた女性の気持ちを歌った1曲。〈Goodbye 花の20代 Goodbye 私の青春〉と20代を全力で肯定しながら、年齢を重ねることへの不安を軽く笑い飛ばしていく。それを29歳当時の西野が歌ったことも、言葉にリアリティが増す要因となった。歌詞を書く際、周囲に徹底的にリサーチすることで知られる彼女は、用いる言葉も意識的に選択している。より多くのリスナーにリーチし、心を動かす言葉をいつも探ってきた。だぁらこそ“西野節”とも言える歌詞世界が生まれたのではないだろうか。

 今回の西野カナの活動休止に関しては、ファンからの反応も意外なほど肯定的なものだった。これまで彼女とともに歩み、楽曲を通して思いを共有してきたことで、突然にも思える決断も自然に受け入れられた人が多かったのかもしれない。また、休止への思いを綴ったメッセージには「やっぱり私は歌が好きで、これからもきっと毎日のように歌を口ずさんでいる気がします」との一文がある。あくまで活動の休止、音楽から退くということではないようだ。再びステージへと戻ってくる時、彼女は一体どんな世界を携えているのだろうか。今はただ再会がそう遠くない未来であることを願っている。(渡部あきこ)

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