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ファンタビ『黒い魔法使いの誕生』は大人向け? 覚えておきたい『ハリー・ポッター』との繋がり

リアルサウンド

18/11/27(火) 10:00

 11月23日に『ファンタスティック・ビーストと黒い魔法使いの誕生』が公開された。『ハリー・ポッター』シリーズの前日譚となる本シリーズは、ホグワーツ魔法学校の卒業生で魔法動物学者のニュート・スキャマンダー(エディ・レッドメイン)を主人公にした物語。第2作目となる本作では、ニューヨークで囚われの身だった“黒い魔法使い”グリンデルバルド(ジョニー・デップ)が脱獄するところから始まる。ダンブルドア(ジュード・ロウ)から「黒い魔法使いを倒せるのは君だけだ」と告げられたニュートは、仲間と魔法動物とともに、グリンデルバルドがいるパリへ向かう。

参考:最近のダニエル・ラドクリフ【写真】

 シリーズ第1作目である『ファンタスティック・ビーストと魔法使いの旅』は、ロマンス、そして反トランプをも彷彿とさせる社会的側面を持った大人向けという印象だったが、本作ではさらにパワーアップ。また、『ハリー・ポッター』シリーズの映画化作品とは異なり、本シリーズは原作者のJ・K・ローリングが直接脚本を務めているため、ファンでないと気付かないマニアックな描写もしばしば見受けられた。ゆえに、初見では物語を見失ってしまうかもしれない点がある。

 そこで今回は、『ファンタスティック・ビーストと黒い魔法使いの誕生』を楽しむために覚えておきたいポイントをご紹介。ネタバレとなってしまうかもしれないが、物語を動かす見逃せないポイントを簡単にまとめたい。

【時系列】
 『黒い魔法使いの誕生』は1927年の物語。1991年に、ハリーたちがホグワーツ魔法魔術学校に入学するので、あのときから実に64年前の出来事である。ローリングのサイト「pottermore」にも掲載されているように、同じく1927年の3月19日にニュートは、のちにホグワーツで教科書として使われる魔法生物に関する書籍『幻の動物とその生息地』を刊行する。少し後の話をすると、本作から11年後の1938年、ダンブルドアはトム・リドルにホグワーツ入学を勧めることになる。『ハリー・ポッター』シリーズでのダンブルドアは、偉大な校長の姿がフィーチャーされていたが、『ファンタスティック・ビースト』では若さゆえの人間らしさも見えてくる。

【アルバス・ダンブルドアについて】
 1991年にハリー・ポッターがホグワーツ魔法魔術学校に入学したとき、ダンブルドアはすでに110歳。本作でのダンブルドアは、“若き”といえども46歳である。

 アルバス・ダンブルドアは、『ハリー・ポッター』シリーズでも語られていた通り、3人兄弟の長男。弟アバーフォースと死んだ妹アリアナを兄弟に持つ。映画『ハリー・ポッターと死の秘宝 PART2』ではアリアナが死んだ理由が省かれていたが、アリアナは6歳のときにマグルの少年たちに暴力を振るわれたことにより、情緒不安定になり魔力の制御ができなくなったと原作には記されている。

 アルバスの父は、アリアナを襲った少年たちに復讐し、アズカバンで獄中死。母もアリアナの発作に巻き込まれ命を落としてしまい、妹の面倒をアルバスが見なければいけなくなった。アバーフォースはホグワーツへ、アルバスは世話のためにゴドリックの谷に留まるが、自分の中に宿る才能を発揮できる場所がなく、フラストレーションを抱えていた。そんなときに、ゴドリックの谷を訪れた“ある優秀な人物”と出会い、アルバスは意気投合。そのせいで、アルバスはアリアナの世話を怠るようになってしまう。

 その優秀な人物というのが、グリンデルバルド。2人は死の秘宝探しに夢中になり、“魔法使いがマグルを支配する世界の構築”を夢見たのだが、アバーフォースがこれに大反対。アルバスとアバーフォースは決闘を行うのだが、これに巻き込まれアリアナが死亡する。この事件を機に、アルバスとグリンデルバルドの友情が壊れ、アルバスとアバーフォースとは犬猿の仲に。今回描かれた『黒い魔法使いの誕生』は、アリアナの死亡事件から28年後の出来事となる。それから後の物語は、今後のシリーズの核心に触れそうなため避けるが、グリンデルバルドの最期は1998年。ニワトコの杖のありかを聞きに来たヴォルデモート卿に、ヌルメンガードにて死の呪いをかけられる(※映画版では殺害シーンは描かれていない)。

【『ハリー・ポッター』シリーズとの繋がり】
 本作では、若きダンブルドアが登場することもあり、懐かしのホグワーツ魔法魔術学校もスクリーンに帰ってきた。それと同時に『ハリー・ポッター』シリーズおなじみのキャラクターや道具、用語なども登場。

■セストラル
 まず冒頭のセストラルの登場は、かなりのサプライズでもあり、“大人向け宣言“のようにも映った。セストラルは、グリンデルバルドがニューヨークから護送される際に馬車を引いていた、黒く骨ばった翼のある馬。初登場は『ハリー・ポッターと不死鳥の騎士団』で、死を目の当たりにした者にしか見えない動物である。『不死鳥の騎士団』では、ハーマイオニーやロンには見えず、『ハリー・ポッターと炎のゴブレット』でセドリック・ディゴリーを目の前で殺されたハリーと、母を亡くしたルーナ・ラブグッドにのみ見えるという描写があった。『ハリー・ポッター』では、子供から大人へ成長する過程の中での大きな経験となる「死」をセストラルを通して描いている印象だったが、『黒い魔法使いの誕生』では、ニフラーたちと同じく当たり前の生き物ようにセストラルが登場し、『ファンタスティック・ビースト』のキャラクターと「死」は、ニュートと魔法動物のごとく共存していることがわかる。

■ニコラス・フラメル
 コミコン予告で話題となったニコラス・フラメルの登場。日本版予告ではカットされ、CMでも登場しないため、一部のマニアの間でしか話題になっていないが、ニコラスは、賢者の石をダンブルドアと共同で開発した錬金術師だ。『黒い魔法使いの誕生』では、ニコラスが棚からアルバムを取り出した際に、賢者の石が赤く光っているのが見える。『ハリー・ポッターと賢者の石』小説版では文中のみ、映画版ではハグリッドが言う「あの犬(フラッフィー)が守っているものに関われるのは、ダンブルドアとニコラス・フラメルだけだ」などセリフのみで登場。ニコラスは賢者の石から作る「命の水」で延命しており、『賢者の石』の1992年の時点で665歳。しかし、『賢者の石』でのヴォルデモートの事件を受け、ダンブルドアとニコラスは賢者の石の破壊を決意。ニコラスもついに死を迎えることになる。それを聞いて彼の死を案じたハリーに、ダンブルドアがかけた「結局、きちんと整理された心を持つ者にとっては、死は次の大いなる冒険にすぎないのじゃ」という言葉はファンの中でも人気が高い名言とされている。

 今回ニコラスを演じたのは、ブロンティス・ホドロフスキー。『エル・トポ』『リアリティのダンス』などのアレハンドロ・ホドロフスキー監督の息子で、『リアリティのダンス』『エンドレス・ポエトリー』で、アレハンドロの父親ハイメ役を務めていた。

■レストレンジ家
 『黒い魔法使いの誕生』は、グリンデルバルドとリタ・レストレンジ(ゾーイ・クラビッツ)の物語と言っても過言ではないだろう。リタは前作『魔法使いの旅』で、ニュートのトランクの中に飾ってある写真で登場し、今回ニュートの兄のテセウスの婚約者だということが明らかになった。そんな本作の中でも見逃せなかったのが、リタがホグワーツを訪れたシーン。リタが開けた机の裏には、「L + N」というリタとニュートが惹かれ合っていたかのような文字や、死の秘宝マークが掘られていた。さらに、INSIDERなどによれば、「Nigellus(ナイジェラス)」という文字も確認できるそう。ナイジェラスと言えば、かつてのホグワーツの校長で、シリウス・ブラックの高祖父であるフィニアス・ナイジェラス・ブラックが思い当たる。

 やはり気になるのは、『ハリー・ポッター』シリーズで登場したベラトリックス・レストレンジとの関係性。ベラトリックスは、ブラック家の生まれで、のちにロドルファス・レストレンジと結婚し、レストレンジ家に入った。しかも今回登場したレストレンジ家の家系図は、女性が花で表されていたり、死者の木は枯れたりなど顕著な違いがあるものの、デザイン面ではブラック家のものとよく似ているのだ。本作ではリタと弟のコーヴァスが、レストレンジ家の最後の子だと紹介されていたが、『ハリー・ポッター』シリーズまでレストレンジ家が関わっているということは、今後一家の血筋が絶えない理由が描かれることが期待できる(もっと言えば、『ハリー・ポッターと呪いの子』でベラトリックスとヴォルデモートの娘デルフィーニが登場するので、レストレンジ家はすべてのシリーズに関係していることになる)。

 余談だが、劇中で語られたレストレンジ家の物語に混乱が生まれるのは、リタの父も弟も同じ名前であることが原因の1つだろう。POPSUGAR Entertainmentなどによれば、父の方のコーヴァスは4世、リタの弟のコーヴァスは5世ということになる。

■みぞの鏡
 ダンブルドアがゲイであることは有名である。2007年にニューヨークで行われた朗読会で、ローリングは、若い頃のダンブルドアがグリンデルバルドに恋愛感情を持っていたことを明言している。『黒い魔法使いの誕生』公開前には直接的な同性愛描写がないと報じられ、ファンから落胆の声もあったが、蓋を開けたところ、“みぞの鏡”という最も美しい表現方法で2人の関係が描かれており、思わずため息が出た人もいたことだろう。みぞの鏡は、鏡の前に立った者の心からの願望をあらわにする鏡。『賢者の石』では、鏡を覗くハリーの背後に、死んだ両親であるリリーとジェームズが立っていた。言うまでもないが、“みぞの”は「のぞみ」を逆から読んだ名前で、英語では「the Mirror of Erised(desireの逆さ読み)」。『黒い魔法使いの誕生』でのシーンからは、アリアナの死をきっかけにグリンデルバルドとの関係が破綻した今でも、心の奥には彼への想いが眠っているダンブルドアの恋心の強さが伺える。ちなみに、鏡に映った青年時代のダンブルドアを演じたのはトビー・レグボで、同じく青年期のグリンデルバルドを演じたのはジェイミー・キャンベル・バウアー。この2人は、『ハリー・ポッターと死の秘宝 PART1』でも同役で登場しており、さらにバウアーは、『スウィーニー・トッド フリート街の悪魔の理髪師』でジョニー・デップと共演している。

 『ハリー・ポッター』シリーズと『ファンタスティック・ビースト』シリーズでは、同じ魔法界とはいえ様々な違いが出てくる。もはや子ども向けではなく、大人も混乱しそうなストーリーとなっているが、その中でも1番の違いを感じたのが、ニューヨーク、ロンドン、パリと3つの実在する場所が劇中で登場すること。『ハリー・ポッター』シリーズの場合、ホグワーツ魔法魔術学校や禁じられた森、ダイアゴン横丁、魔法省本庁、ゴドリックの谷などたくさんの場所へ冒険に出かけたが、架空の場所ともあり視覚的な特徴がそれぞれにあったように思う。さらに、学生なので主にイギリス国内のことしか登場しない。

 一方、『ファンタスティック・ビースト』では、ニューヨーク、パリの魔法省など魔法界ならではの場所が出てくるとは言え、実際に存在する街並みも登場する。それらは『ハリー・ポッター』シリーズと比べれば特徴的な部分が少なく、うっかり目を離すと置いてけぼりを食らいそうになる人もいるかもしれない。本作を鑑賞するにあたって、心の隅に置いていてほしいのは、物語がどの場所で進んでいるかと、各キャラクターが発するセリフを一文字たりとも聞き/見逃さないこと。『ファンタスティック・ビースト』の冒険は、ファイアボルトばりに畳み掛けるようなスピードで進んでいく。さすが、創造主ローリングの手から直接生まれた世界。もしかすると『ファンタスティック・ビースト』シリーズは、『ハリー・ポッター』とともに成長した大人たちのための物語なのかもしれない。(阿部桜子)