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小野島大が選ぶ、2018年エレクトロニック年間ベスト10 アルバムの評価が難しい時代に

リアルサウンド

18/12/26(水) 8:00

・Daniel Avely『Song For Alpha』<Fanatasy>
・Serpentwithfeet『Soil』<Secretly Canadian>
・Saba『Care For Me』<Saba Pivot>
・Tim Hecker『Konoyo』<kranky>
・Laurel Halo『Raw Silk Uncut Wood』<Latency>
・Leon Vynehall『Nothing Is Still』<Ninja Tune>
・Kode9 & Burial『Fabliclive 100』 <Fablic>
・Kelly Moran『Ultraviolet』<Warp>
・Rejoicer『Enegy Dreams』<Stones Throw>
・Ross From Friends『Family Portrait』<Brainfeeder>

 本サイトの新譜キュレーション連載ではエレクトロニックな音楽を対象にしているので、このベスト10もここで扱ったものを中心にエレクトロニックな音楽から選んだ。順不同。なお全ジャンル対象のベストアルバムは『ミュージックマガジン』に、日本の音楽のみ対象のベスト・アルバムは『MUSICA』誌に、それぞれ掲載されているので、興味のある方はご覧ください。

 以下は、『ミュージックマガジン』にも書いたことだが、同誌ではスペースの関係で語りきれなかったことも含め、もう少し詳しく書く。

 2017年末から、東京・渋谷の小さなバーで、「I’ve Gotta Have New Songs」という、新譜ばかりかけるDJパーティーというのを始めた。かける曲は本連載で扱っているようなエレクトロニックな音楽と、R&B、ヒップホップなどだが、そこで使っているスマホ/タブレット用DJアプリがSpotifyと連動していて、Spotifyで扱っている曲は全てDJプレイに使うことができる。これまでのCD・ヴァイナルなどフィジカルメディアやPCを使うDJプレイよりもはるかに簡便だし気楽だし、USBを使ったプレイに比べても、その場の閃きでSpotifyの数千万曲から即座に選曲できる利便性は圧倒的だ(もちろんストリーミングだから音質は期待できないが、小さなバー程度なら問題ない)。もともと日々の新譜チェックにSpotifyを使う機会は多かったが、そんなわけで2018年からはアルバム単位だけでなく曲単位でも細かく掘りはじめた(単に「ニューリリース」の項目をチェックしているだけでは不足。本当に面白いものはその下に隠れている)。もちろん日々「Beatport」などをチェックするプロのDJならそんなことは当たり前だが、専門のDJでもない、いち音楽リスナーである自分にとっては新鮮かつ刺激的な作業で、かなり楽しく飽きない。そのため、これまでのようなアルバム中心のリスニング態勢に多少なりとも変化があったのである。

 そして、この連載で扱うようなエレクトロニックなダンスミュージックやヒップホップ、R&Bなどはこうしたリスニング態勢の変化に応じて、アーティストの側も曲単位での制作・リリース態勢にとうの昔に移行している。アルバムの制作・リリースタームでは時代に乗り遅れてしまうのだ。たとえばEDMのミュージシャンが矢継ぎ早にシングルを出し、それが数十曲たまった時点でアルバムにして出す。それはコンセプトが入念に練られアルバムとして作り込まれたものではなく、必然的に「グレイテスト・ヒッツ」的な寄せ集めにならざるをえない。それをアルバムとしてきちんと評価するのは難しい。

 この時期になると内外メディアとも年間ベストアルバム企画で1年を振り返るのが恒例になっているが、それで音楽シーンの1年を総括することには無理がきている。もちろん曲単位の勝負であることはダンスミュージック〜ディスコ/クラブの現場では昔から当たり前のことだが、ここ最近はアルバムで勝負する「アルバムミュージック」「リスニングミュージック」だったはずのロックや、ダンスミュージックではないエレクトロニカなどにもそうした傾向が強まっている。アルバムの数十分というサイズが、現代人のタイム感に合わなくなっているのは以前から指摘されているが、Spotifyで新譜をチェックしていると、へたするとわずか数分の楽曲であっても集中力が続かないことがあって、いろいろな意味でストリーミングサービスというインフラの普及が、音楽ライフスタイルを大きく変えていることを実感した。

 もちろんこうした変化はずいぶん前からいろんな人が実感してきたことだろうが、我々が生業としているような音楽評論の対象としては依然アルバム単位で語る傾向が圧倒的に強いので、そこは齟齬があるのだ。

 そんなわけでここに挙げた10枚が必ずしも自分にとってのエレクトロニックな音楽の1年間を表しているわけではないが、テクノやハウスのめぼしいアルバムが去年に続きほとんどなかったという事実は、仕方ないとはいえ寂しい気がする。

■小野島大
音楽評論家。 『ミュージック・マガジン』『ロッキング・オン』『ロッキング・オン・ジャパン』『MUSICA』『ナタリー』『週刊SPA』『CDジャーナル』などに執筆。Real Soundにて新譜キュレーション記事を連載中。facebookTwitter

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