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『カメラを止めるな!』『BLEACH』『斬、』など出品 多様化する国際映画祭の魅力に迫る

リアルサウンド

18/10/6(土) 12:00

 国内・海外問わず映画祭というものは、星の数ほどある。作品のポスターやCMでも、映画祭の受賞や出品のコピーを目にすることは多々あるだろう。近年では、国内映画の海外映画祭出品も多いが、映画祭によって、部門数、出品・受賞される作品の倍率や傾向もそれぞれであり、“映画祭出品”とは言っても、その出品が意味することは映画祭によって異なる。

 参考:日本勢が強いファンタジア国際映画祭、今年の結果は? 映画評論家・小野寺系がレポート

 直近の国内における、国際映画祭出品のニュースを振り返ってみると、『ここは退屈むかえに来て』バンクーバー国際映画祭(カナダ)、『生きてるだけで、愛』レインダンス映画祭(英)、『斬、』ヴェネチア国際映画祭(イタリア)、『BLEACH』ファンタジア国際映画祭(カナダ)、『Vision』サン・セバスティアン国際映画祭(スペイン)、『真っ赤な星』レインダンス映画祭(イギリス)、『カメラを止めるな!』ファンタジア国際映画祭(カナダ)などが挙げられる。

ファンタジア国際映画祭会場風景(撮影:小野寺系)
 先述の映画祭において、最も国内作品に縁深いと言えるのが、ファンタジア国際映画祭かもしれない。ファンタジア国際映画祭は、「北米最大のジャンル映画祭」をテーマに、主にアクション・ファンタジー・SF・ホラー作品が出品に名を連ねる。元々、アジア映画祭としてスタートした経緯もあり、今年も『カメラを止めるな!』『BLEACH』のみならず計30作品もの国内映画が出品されており、アジアカルチャーの映画を総覧することができるといっても過言ではない。

 映画祭は、海外へのステップアップの大きな手段の一つである。国際舞台への登竜門とも言えるのがバンクーバー国際映画祭だ。バンクーバー国際映画祭は、「映画芸術を通じて各国の相互理解を深め、映画産業の活性化を図る」をテーマに掲げ、毎年約300作品を上映。インディペンデント監督の発掘と育成に力を入れ、国際的に無名な監督や、学生の作品も積極的に選出しており、海外進出への大きな足がけとなり得る。また、設立当初から東アジアの作品を紹介する部門「ドラゴン&タイガー」を設け、三池崇史監督作『オーディション』のワールドプレミア(世界で最初に披露する試写会)を成功させるなど、これまでに数多くのアジア人監督を輩出してきた実績を持つ。

 インディペンデントという意味で、もう一つ外せないのがレインダンス映画祭だ。クエンティン・タランティーノ監督『パルプ・フィクション』、クリストファー・ノーラン監督『メメント』など多くの注目作の英国プレミアをインディペンデントながら成功させており、ヨーロッパ最大の独立系映画祭の一つと言える。レインダンス映画祭では平栁敦子監督『オー・ルーシー!』が去年オープニング作品で選出され、今年も『生きてるだけで、愛』『真っ赤な星』の2作品がコンペティション部門でノミネートされるなど、日本の独立系作品も高く評価している。

 これらだけをとってみても、作品の傾向も出品されている映画祭もバラバラであることは明白だ。

 また、映画祭において、大きな指標となるものが2つある。

 ひとつは、「国際映画製作者連盟」(FIAPF)という世界各国の映画製作者の権利を代表する唯一の組織の公認だ。公認されている映画祭の中には、10月25日より開催される東京国際映画祭も含まれる。

  2つ目の指標が、アカデミー賞の公認だ。アカデミー賞は、アメリカ国内の特定地域で公開された作品が選考の対象だが、例外として、アカデミー賞公認の映画祭でグランプリを受賞することで、アカデミー賞ノミネート候補作となる。国内においては、ショートショートフィルムフェスティバルと広島国際アニメーションフェスティバル、山形国際ドキュメンタリー映画祭がアカデミー賞の公認を受けている。

 アカデミー賞前哨戦ともいわれる、トロント国際映画祭も先日閉幕を迎え、閉会セレモニーでは、観客賞などの受賞作品も発表された。なぜトロント国際映画祭がアカデミー賞前哨戦とまで言われるのか? トロント映画祭の観客賞受賞作品は、『スラムドッグ$ミリオネア』『それでも夜は明ける』『ラ・ラ・ランド』など、アカデミー賞においても高い確率でノミネート・受賞しているというジンクスがあるのだ。トロント映画祭は、関係者だけでなく、トロントの普通の市民が参加する映画祭であり、コンペティションも設けない、ある意味最も「民主的」に面白い映画を決める映画祭とも言える。そのため、トロント映画祭の最高賞は、観客の投票によって決まる「観客」賞と名付けられている。

 今年のトロント国際映画祭において観客賞を受賞したのは、『メリーに首ったけ』『ジム・キャリーはMr.ダマー』などを手がけてきたピーター・ファレリー監督作『Green Book(原題)』だ。『Green Book』は、実話を元にしたコメディー作品で、舞台は、まだ黒人差別が色濃く残る1960年代のアメリカ。コンサートツアーを計画するアフリカ系黒人ジャズピアニストが、イタリア系の用心棒兼ドライバーを雇い、南部をめぐるコンサートツアーに出るというコメディー映画となっており、多様性が問われる社会の時流にもマッチした結果となる。

 ファレリー監督は、アカデミー賞や国際映画祭での賞に恵まれてきたわけではなく、今回の受賞は大きなステップアップとも言える。今回の受賞によって、『Green Book』はアカデミー賞で作品賞・脚色賞・監督賞候補、ワイルドなイタリア系男性を演じたヴィゴ・モーテンセンは昨年の『はじまりへの旅』に続く主演男優賞候補、紳士的なピアニスト役を演じたマハーシャラ・アリは、『ムーンライト』に続いて2度目の助演男優賞候補となる可能性が出てきた。

 なお、次点にはその『ムーンライト』でメガホンを取ったバリー・ジェンキンス監督が、20世紀半ばのアメリカにおける人種問題と同性愛を描いてきたジェームズ・ボールドウィンの小説を映画化した『If Beale Street Could Talk(原題)』が選ばれた。本作は、70年代初期のニューヨーク・ハーレムを舞台にして、レイプ犯の疑いがかけられた婚約者の無実を証明しようとする女性の闘いを、ジェンキンス監督らしい映像美で描く。

 次々点には、『ゼロ・グラビティ』などを手がけたアルフォンソ・キュアロン監督がメガホンを取り、今年のヴェネチア映画祭で金獅子賞も受賞した、Netflixオリジナル映画『ROMA/ローマ』が並んだ。こちらも、現在アメリカとの国境問題に揺れるメキシコの1970年代の独裁体制を背景にしており、それだけが映画の全てではないにしろ、近年大きなテーマとなっている政治性を多分に含んだ映画が高く評価された印象だ。

 これらの政治色が濃い作品が、依然保守的傾向の残るアカデミー賞において、ジンクス通り受賞するのか。その行方を見守ることは、ある種エンターテインメントの可能性を探ることにも近い。

 このように一口に映画祭と言っても、その受賞作品やジャンルも多種多様なものがある。自分のテイストに合った映画祭を探し、実際に足を運んでみるのもよし、受賞作品の日本公開を首を長くして待つのもよし、好きな作品の受賞を願うもよし。映画祭を知ることで、新たな映画の楽しみ方を知ることができるだろう。

(文=島田怜於)