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LACCO TOWERは比べようのないバンドへと成長している 結成16周年ライブ『黒白歌合戦』を見て

リアルサウンド

18/7/24(火) 19:00

 LACCO TOWERがバンド結成日を照準に毎年開催している『黒白歌合戦(こくはくうたがっせん)』が、今年も恵比寿リキッドルームで開催された。なんと今年は「白の日」「黒の日」に分けての2日間公演という、コンセプチュアルなアプローチである。しかもこの『黒白歌合戦』の開催に際して、オフィシャルサイトでは“趣旨書”というか、高級料亭の季節のお品書きのような、もしくは絵画展の案内のような(それはメインビジュアルをかの“鳥獣人物戯画”から引用しているせいもあるのだが)コーナーを設ける念の入れよう。しかも2日間に分け、どちらの日に参加するのか? 悶々とするファンのために1曲の未定曲以外が曲順不同で、あらかじめ演目(演奏する楽曲)が公開されるという、バンド結成日にメンバー自らがお客様(ファン)をおもてなしするかのような準備が整えられていたのである。

(関連:LACCO TOWER、15年の軌跡を示した『黒白歌合戦』  松川「これからもついてきてください」

 昨年は一部を「白」、二部を「黒」に分け、衣装も和装と洋装に分けるという、情報量の多い展開だったが、今年は2日間公演ということで、1日に賭ける熱量を重視し、量より質のサービス(!?)へ、趣きをシフトした印象だった。ちなみに白と黒の定義は「これまで“日本語1つのワード”で曲のタイトルを統一してきた我々。その曲たちが持つ、激しさや柔らかさ、歌詞の世界観やその内容において、メンバー自体が“白い曲”黒い曲”の2つの世界を軸に曲を振り分けることが多くありました」(引用:オフィシャルサイト)と、サイトの説明にもあるが、彼らの曲の世界観はメジャーコードで開けていくメロディを導き出したり、逆にマイナーコードでアグレッシブな展開を構成したりしている印象だ。メジャーデビュー以降は自然とメジャーコードだがどこか切ないLACCO TOWERの表現の心臓とも言える日本語の美しさが映える“白”の世界観を持つ楽曲、たとえば「薄紅」や「遥」といった名曲が、バンドの表現の幅を拡張してきた。つまり、“白い曲”の充実によって、『黒白歌合戦』はさらに意義のあるものになってきたのだ。

 筆者が見たのは2日目の「黒の日」。あらかじめ演目(演奏する楽曲)が公開されているので、ファンのイントロ一音一音への反応が凄まじい。ちなみにこの日、メンバーはブラックスーツなど、かなりフォーマルな出で立ちでステージに登場し、松川ケイスケ(Vo)にいたってはこの日初めて前髪を上げてライブに挑んだという。ドラキュラ伯爵やモンテ・クリスト伯を想像させるビジュアルであった。選曲は2009年『短編傷説』収録の「苺」から、唯一非公開だったアンコールでの新曲「狂喜乱舞」(8月22日リリースのメジャー4thアルバム『若葉ノ頃』収録)まで、新旧のレパートリーを散りばめていた。いわばキラーチューンばかりの選曲であるし、基本的にハードかつエッジーな攻めの選曲なのだが、今のLACCO TOWERの各楽器の音の良さと、ボーカルを含めたバランスの良さにこの日は特に圧倒された。

 テンポチェンジやコード感の変化がまさに狂騒的な2017年『遥』収録の「純情狂騒曲」の統制され、研ぎ澄まされたアンサンブル。2012年『心枯論』収録の「仮面」での〈研いだ刃は いつの日か戦うためとか 御託を並べては 仕舞う現実〉という歌詞の符割から、LACCO TOWERのメロディがどこか唱歌に近いことを感じさせる。日本人のDNAを呼び起こす理由を改めて実感した。非常にハードでアグレッシブな演奏の中に、日本的な叙情もあり、確実に心が反応しているのがわかる。

 また、すでに加入から5年が経つが、ここにきてギターの細川大介が楽曲ごとのアプローチを鮮明に構築しているのも見事だった。基本的にハードロックギターの王道を行きつつ、2014年『狂想演奏家』収録の「橙」ではストラトでブルースやジャズをイメージさせるフレージングを際立たせ、彼がギタリストとして自信を持って的確な演奏をすることで、1曲1曲の情景が浮かび上がり、松川の歌にも集中できる。今のアンサンブルの完成度の高さは、LACCO TOWERの文学性や日本語表現の美しさをさらに一歩も二歩も推し進め、初見のオーディエンスにも唯一無二のバンドであることを即座に感じさせるに違いない。ビジュアルの洗練とともに、他とは比べようのないバンドへと成長しているプロセスを、結成16周年ライブでしっかり証明したのだ。

 アッパーな楽曲ではダイバーやリフトも出現するエクストリームなライブだが、同時に夕立の前の土の匂いや、闇夜の心許なさ、涙が出るような夕焼けの美しさ、そんな五感を震わせる何かが今のLACCO TOWERのライブでは、スケールアップして再び強く実感できる。新作『若葉ノ頃』で感じ取れる叙情に気持ちははやるばかりだ。

■石角友香
フリーの音楽ライター、編集者。ぴあ関西版・音楽担当を経てフリーに。現在は「Qetic」「SPiCE」「Skream!」「PMC」などで執筆。音楽以外にカルチャー系やライフスタイル系の取材・執筆も行う。