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いま、最高の一本に出会える

「毛皮のマリー」稽古の様子。(撮影:御堂義乘)

「毛皮のマリー」稽古場にて、美輪明宏が“無償の愛”を語る

ナタリー

19/3/23(土) 14:05

4月2日に開幕する「毛皮のマリー」の稽古場公開と合同取材が、3月21日に行われた。

「毛皮のマリー」は、寺山修司が美輪明宏に書き下ろした1967年初演の作品。2001年に美輪明宏演出版が誕生し、定期的に上演を重ねている。日本一ゴージャスな美貌の男娼・毛皮のマリーは、絶世の美少年・欣也を我が子以上にかわいがっているが……。毛皮のマリーを美輪、美少年・欣也を藤堂日向、下男・醜女(しこめ)のマリーを麿赤兒、美少女・紋白を深沢敦が演じる。

取材に訪れた日は、まず3場の下男・醜女のマリーが妄想を繰り広げるシーンの稽古が行われた。マリーの不在時、豪奢なバスタブに身を横たえた下男が「出ておいで、本物のあたしのあたしたち!」と叫ぶと、さまざまな扮装の男たちが姿を現す。麿はセリフを朗々と発しながら長いドレスの裾をさっと捌き、存在感の強さを見せつけた。

続けて毛皮のマリーと名もない水夫(三宅克幸)が語らうシーン。自らの生い立ちや欣也との親子関係について水夫に語り始めるマリーの様を、美輪はあるときは歌舞伎ふうに、あるときはささやくように、またあるときは毅然とした口調で、とさまざまな声音を駆使しながらたっぷりと表現した。

一方、紋白は欣也に外の世界を見せようと必死に語りかける。苦悩する欣也を、藤堂は髪を振り乱しながら細い身体を震わせるように演じ、深沢は紋白を愛嬌を交えつつ実直な少女として作り上げた。

その後、美輪のインタビューが行われた。稽古の手応えについて美輪は「疲れました(笑)。私の芝居には長ゼリフが多いので、『双頭の鷲』ほどではありませんが、大変です」と明かす。さらに「長ゼリフは音程、速度、リズムなど、とにかくいろいろな技術が必要です。歌なら伴奏に乗っていけばいいのですが、芝居ではセリフの中でそれらを全部自分でコントロールしなくてはいけません。稽古では、その方法を若い人たちにも伝えていかなくてはいけませんから……」と続ける。

今回「毛皮のマリー」を上演する思いについては、「寺山修司という天才が最近はあまり取り上げられませんが、あれほどの天才は日本の財産ですから、それを忘れないでほしいと思っています。また寺山さんもですが、三島(由紀夫)さん、川端(康成)さん、江戸川(乱歩)さんなど交流があった方たちからは、何か“言付け”をもらっているような気がしています」と美輪。「それと最近はラップの影響か、歌にメロディがなく歌詞もメールの文面のようなものが並んでいるだけ。このままどうなっていくのだろうという危機意識があります。それと、寺山氏のイデオロギーである『見世物の復権』ということを、今一度訴えたいと思っています」と思いを述べる。

欣也役の藤堂については「オーディションに来てくれて、えくぼで採りました(笑)。あとで聞いたらサーフィンをやるらしいのですが、このオーディションのために筋肉を落とし、日焼けもしないようにがんばっていたそうです。稽古では“てにをは”から細かい動きの1つひとつまで徹底して演出しました」と語る。

また毛皮のマリー役を演じる心境は初演から一貫して変わらないと言い、「無償の愛というのは父性愛でも母性愛でも他人への愛でも変わりません。以前、私が訳した『愛の讃歌』の歌詞が越路吹雪さんの『愛の讃歌』とあまりに違うので大騒ぎになったことがありますが、私の訳はピアフの原詩そのまま。“自分の愛する人が健康で平和に生きていてくれさえすればそれでいい、自分のことはどうでもよろしい、与えて与えて与えっぱなし、それが愛”という考えで、“男同士であっても、男女でも、年寄りと若い人でも、異国人同士であっても、人殺しをしたわけでも、物を盗んだわけでもない、ただ人間が人間を愛しただけなのだから、そのことを非難するのはおかしい”ということ、それがこの作品の中でもテーマになっていると思います」と語り、インタビューを締めくくった。

なお藤堂は本作について「幾度も再演しているこの作品は、先代が積み上げてきた苦労の結晶です。その世界観を壊さないように、できるだけ慎重に、精神と体をコントロールして、欣也という人物に徹したいと思います」とコメント。麿は「美輪さん主演における三代目の下男です。今も新しい自分を発見することもあり、観ている方にも発見があったらいいなと思います」と意気込みを述べ、深沢も「いろいろなところで上演されている作品ですが、僕はやはり美輪明宏版『毛皮のマリー』が一番だと思います。皆さまぜひ、観にいらしてください!」と来場を呼びかけている。

公演は4月2日から21日まで東京・新国立劇場 中劇場、4月25日に福岡・福岡市民会館、5月8日に愛知・愛知県芸術劇場 大ホール、5月24日から26日まで大阪の梅田芸術劇場 シアター・ドラマシティにて行われる。

藤堂日向コメント

欣也役に選ばれたときの心境について

大好きな映画「もののけ姫」で美輪さんが演じる「モロの君」のシーンに当時小学生ながらも圧倒されました。表現者として尊敬している美輪さんと同じ舞台に立つことが出来、ご指導賜れたら、これからの俳優人生でどれだけ大きな宝になるのか、本当に光栄で、わくわくしました。

作品に対しての感じ方やとらえ方の変化について

めまぐるしく世界が変わって行っています。稽古に入る前に、繰り返し台本を読み、ある程度世界観を理解しているつもりになっていましたが、実際稽古に入ったら、毎回、固定概念を壊されている感じです。自分の思っていたものとは違う解釈がふさわしいことが分かったりと、発見ばかりの毎日です。美輪さんは分かりやすく教えてくださるので、厳しいけど、苦しくはない、楽しい稽古です。

観客へのメッセージ

幾度も再演しているこの作品は、先代が積み上げてきた苦労の結晶です。その世界観を壊さないように、できるだけ慎重に、精神と体をコントロールして、欣也という人物に徹したいと思います。皆さま、どうぞご期待ください。劇場でお待ちしております!

麿赤兒コメント

稽古について

美輪さんの優しいけれど、するどく、厳しい演出に、ゆったり、やわらかくも、緊張感のある、至福の芝居作りの時間を過ごしています。

下男・醜女のマリー役について

美と醜、「きれいはきたない、きたないはきれい」のように、美醜の概念が入れ替わるくらいギリギリのところを楽しんでやりたいと思っています。

観客へのメッセージ

美輪さん主演における三代目の下男です。今も新しい自分を発見することもあり、観ている方にも発見があったらいいなと思います。どうぞ楽しみにいらしてください。

深沢敦コメント

稽古について

セリフを覚えたてのころは四苦八苦でしたが、美輪さんの音楽的な演出も新鮮で、今はとても楽しいです。

美少女・紋白役について

「あんたが美少女やるの?」って、ビックリされるかもしれませんが、この体格を生かしたコケティッシュさあふれ出る、キュートな美少女を演じたいと思います。

観客へのメッセージ

いろいろなところで上演されている作品ですが、僕はやはり美輪明宏版『毛皮のマリー』が一番だと思います。皆さまぜひ、観にいらしてください!

「毛皮のマリー」

2019年4月2日(火)~21日(日)
東京都 新国立劇場 中劇場 

2019年4月25日(木)
福岡県 福岡市民会館

2019年5月8日(水)
愛知県 愛知県芸術劇場 大ホール

2019年5月24日(金)~26日(日)
大阪府 梅田芸術劇場 シアター・ドラマシティ

作:寺山修司
演出・美術:美輪明宏
出演:美輪明宏、藤堂日向、麿赤兒、深沢敦、大野俊亮、三宅克幸、プリティ太田、小林永幸、真京孝行、松田拓磨、米田敬、谷沢龍馬、菅沼岳、川瀬遼太、樋口祥久、岡本祐輔、吉岡佑也、岩井克之、大濱和朗、重岡峻徳、重松直樹

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