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『まんぷく』内田有紀が“みんなの親”に 物語を支え続けた包容力

リアルサウンド

19/3/21(木) 6:00

 夢枕に立つ咲(内田有紀)は、これまでの『まんぷく』(NHK総合)で何度も福子(安藤サクラ)や鈴(松坂慶子)のそばで寄り添ってきた。家族や萬平(長谷川博己)のことで悩んでいるとき、自分なりの決断ができないときに、そっと現れて、大切な言葉を残す。福子の父は早くに亡くなったこともあり、しっかり者の咲はみんなが頼りにする存在だった。咲の言葉のおかげで、福子たちは何度背中を押されてきたことか。

参考:安藤サクラ、柄本佑、奥田瑛二、柄本明……日本映画・ドラマ界を牽引する華麗なる一族

 咲は結核で若くしてこの世を去った。父親に続いて、咲もいなくなった今井家は、みんなの拠り所がまた一つ失われてしまったようにも見えた。それだけに、限られた人にしか見ることができないとはいえ、夢枕という形で彼女がみんなを見守り続ける意義はとても大きい。次から次へと新しいことにチャレンジしていく萬平を支えるべく、必死に頑張り抜こうとする福子。でも、そんな福子とはいえ自分一人ではどうにもできない状況は必ずあるもの。そんな時に、咲だからこそできる役割というものがある。

 いつだって咲はすべてお見通しなのだ。福子や鈴が本当になすべきことを的確に教える。もちろん、咲以外にも福子たちを支えてくれる人々はたくさんいる。克子(松下奈緒)も、真一(大谷亮平)も、忠彦(要潤)もみんないざという時には力になってくれる。ただ、とりわけ咲に関して言えば、他の誰よりも問題の本質を射抜く目が鋭い。

 そして、何度も咲のアドバイスを聞いていて思うのは、困ったときにするべきことは、しばしばシンプルなことばかりであるということだ。とはいえ、シンプルなことにこそ人は気づかないし、忘れかけてしまうもの。だからこそ、咲が施してくれる助言は貴重なものばかりなのだ。そして、その多くは自分が素直な気持ちになれば、自ずと浮かび上がってくるものなのだから、難しく考えすぎることはないと教えてくれるようでもある。

 また、亡くなった咲との交流は、まるで本人が本当に生きているかのような描かれ方をすることが多い。例えば第120話でのこと。いつものように、福子の夢に咲が現れるのだが、なんと咲は「まんぷくラーメン」をすすっている。本人曰く、1日に3食「まんぷくラーメン」を“食べる”という(ちなみに、生卵を入れて食べるという歴史的アイデアを福子はここで知る)。でも、咲だったらきっとそんなことを言って「まんぷくラーメン」を褒めてくれるだろうと思わせる台詞でもある。

 “咲だったら、何と言うだろうか?”。きっと、福子も鈴もそう思う場面が何度もあったことだろう。場合によっては、実の母親である鈴以上に親らしい包容力を見せる咲の存在は、今日の放送までずっと『まんぷく』の世界を優しく包み込んできた。亡くなる直前、ベッドの上で「ありがとう」と呟いてこの世を去った咲。みんなの父親代わりになって一家を支えてきた彼女であるが、父親と母親の両方の性格を併せ持った、“みんなの親”として登場し続けて、支えてきた咲にこそ「ありがとう」を言ってしかるべきだろう。(國重駿平)