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草なぎ剛というエンターテイナーは何にも縛られない 宮藤官九郎との対談から感じたこと

リアルサウンド

18/9/10(月) 7:00

 草なぎ剛が、雑誌『CREA』内の連載対談『宮藤官九郎の最近、いつ笑いました?』に、ゲストとして登場。前篇・後篇と2号にわたって、たっぷりとトークを繰り広げた。ふたりの初対面は1996年のドラマ『おいしい関係』(フジテレビ系)での共演。そして2013年には、映画『中学生円山』でタッグを組んだ仲。だが、宮藤が『SMAP×SMAP』(フジテレビ系)の“ビストロSMAP”に出演したのも4年半前と、実はこうして揃うのは久しぶりだ。

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 YouTubeの草なぎチャンネルでもギターをかき鳴らし、自作の歌を気持ちよさそうに歌う姿が印象深いが、まさか対談でもギターを持ち込むとは。中学からギターを始めた宮藤がギターを受け取りポロリと響かせると「なんで、押さえてるところ見ないで弾けるの? こっちの指とこっちの指が合わなくなっちゃうじゃん」と尋ねる草なぎ。宮藤も「ああ、わかるわかる(笑)。両方見ないで、みんな目つぶってよく弾けるな、って?」と盛り上げる。このやりとりひとつ取ってみても、素朴な疑問を恐れない草なぎの無邪気さ、それを真っ直ぐに受け止める宮藤の柔軟さが感じられる。

 さらに「今、AbemaTVで月1回の生放送を3人でやってて、“7.2時間テレビ”っていう。そうだ、宮藤さん、今度出てくださいよ」と急な草なぎの誘いも彼らしいが、「はい是非」と即答する宮藤もさすがだ。そんな宮藤の大らかな雰囲気が、草なぎの心をさらにオープンにさせていく。「でも、3人って言っても、結局はひとりなんですよ。感覚的に。面白いもんで、やっぱりグループじゃないから」(草なぎ)、「やっぱりグループじゃないんだ。“新しい地図”っていうのは」(宮藤)と、話題は稲垣吾郎、香取慎吾、草なぎ剛の3人がどのような想いで活動をしているのかに迫る。

 「そこは前と全然違っていて、今はスカスカしてるっていうか(笑)。でも、それが“結構、心地いいな”と。ちゃんと風切って歩いている感覚」「彼らもそう思っているだろうし、そこで、自分らの中で違和感があったら、グループを作るんじゃないかな」「いろんな不安もあるんだけど、より自由にできてるっていうのはありますね」と続ける草なぎ。宮藤も、「見てて、そういう感じ、伝わってきます」と相槌を打つ。

 「そうは言っても、3人で向いている方向は一緒なんだな、と。それぞれ考えは違って、やりたいことも違って、ひとりじゃない心強さもある。わかりやすく言うと“大人にならなきゃいけない”みたいな(笑)」。その言い方は、まるで同じホームを持ちながら、今はそれぞれが自分の希望する先へ留学に出ているような……一人ひとりは自立をしているけれど、決して切れない絆が確かにあることを感じさせるものだった。

 もちろん、新たな挑戦には不安はつきものだ。テレビが中心だった彼らの活動の場は、新しい地図がスタートして以来、Webや舞台へと大きくシフトした。直接、視聴者のコメントが飛び込んできたり、観客の顔が見えたりと、ダイレクトな反応を感じられるようになったはずだ。その中で、草なぎが感じたという「うまくいったとかダメだったとか、自分の手応えってあんまり関係ないんだな、と。結局やったもん勝ちっていうか、笑われてもいいから、やり続けることが正しいんじゃないかと思うんです」の言葉に、今の時代に求められるスター性を見た。

 人の世は常に流動的。流行り廃りが一層早く感じられる今、その変化にどう対応していくかは、どうかっこよく歳を重ねていくかということにつながってくる。草なぎがYouTuberとして様々な動画をアップしている姿こそ、変化を楽しむお手本にも感じられる。そして教えられるのは、変わっていくことは決して失うことではないのだ、ということだ。好きなファッションを熱く語る姿。“ビストロSMAP”を思い出させるような料理動画。プライベートな姿を彷彿とさせる愛犬くるみちゃんとのやりとり。そしてギターでの自作ソング……新しい一面として発信しながらも、私たちがそこに見るのは変わらない彼の柔らかな人間性だ。

 そんななか、この夏、人気YouTuber水溜りボンドとのコラボ動画には衝撃が走った。サムネイルからもわかる、草なぎの気迫に満ちた表情。まさかYouTubeで彼の本気の演技が見られる日がくるとは。いよいよ時代が変わったのだと感じずにはいられなかった。それと同時に、新しいものが生まれている喜びも。YouTube動画のプロ・水溜りボンド×演技のプロ・草なぎ剛が化学反応を起こすと、こんなにもワクワクするものができるのか、と。コメント欄には、幅広い世代の視聴者からの感想が届き、水溜りボンド、草なぎ双方のファンが、お互いにリスペクトするような書き込みが並ぶ。日常に、こうした感動を生み出すのがスターの存在なのだろう。

 水溜りボンドの企画力の高さと、草なぎのオープンマインドがあったからこそ実現できたこの企画。水溜りボンドもドッキリや無人島企画、都市伝説など様々なことに興味を広げ、毎日投稿を“やり続ける”YouTuber。草なぎのポリシーに共鳴する部分があるのだろう。YouTubeという新たなエンタメも黎明期を超え、YouTuberも気軽に投稿してきたところから、次に何が見せられるかを迫られていく時期に入ったように思う。それは、かつてアイドルという概念を再構築しなければならなかった、SMAPの置かれた環境と似ているかもしれない。ゼロからマスターすることが好きな草なぎが、YouTubeにハマるのも必然だったように思う。

 「自分が何者かなんて、今、どうでもいいんだろうなと感じました」。対談を終えた宮藤は、草なぎの“今”をこんなふうに綴った。アイドル、俳優、歌手、YouTuber……そのどれでもあって、どれでもない。草なぎ剛というエンターテイナーは、何にも縛られないのだ。だから、どんなに時代が変化していっても、どんなに環境が変わっても視聴者を楽しませることができる。もしかしたら私たちは、人間・草なぎ剛に『人はどれだけ自由に歳をとっていけるか』というテーマの人生舞台を見せてもらっているのかもしれない。(文=佐藤結衣)

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