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私と音楽 第2回 サバンナ高橋茂雄が語るMr.Children

ナタリー

19/1/10(木) 17:04

各界の著名人に“愛してやまないアーティスト”への熱い思いを聞くこの連載。第2回は、お笑いコンビ・サバンナの高橋茂雄が登場。多くのミュージシャンと親交があり大の音楽好きとして知られる高橋が、中でも特にファンだというMr.Childrenについて語った。

「今まで聴いてなくてすいませーん!」

高校生時代、Mr.Childrenがミリオンヒット飛ばしているときは全然聴いていなかったんです。思春期にありがちな“流行っているものを取り入れたくない”っていう思想で洋楽ばっかり聴いていました。20年前に、当時付き合ってた彼女が「ミスチルのライブに行きたい」って言って、「Mr.Children TOUR '99 DISCOVERY」のチケットを取ったんです。初めて買ったミスチルのCDはそのときに出た「DISCOVERY」だったかな。ミスチルだからヒット曲くらいは知っていましたけど。そのライブで「ラヴ・コネクション」聴いて、ロックな感じで「めちゃめちゃカッコええやん」って思って、ライブ中「今まで聴いてなくてすいませーん!」って叫んだんです。それからはツアーがあれば行ったし、アルバムが出たら買ったし。

高校時代はThe BeatlesとかThe Rolling Stones好きで、よく1970年代の曲を聴いていましたね。友達とバンドを組んでギターをやっていましたけど、練習しても、うまくならへんくて。で、うまくもないくせに向上心もないからライブ本番は音消してエアギターですよね。高3のとき、卒業式の直前にバンドメンバーだったヤマギワとやまもっちゃんと、ダブって同じ学年になってた1個上の青木さんの4人で卒業ライブに出ようってなって。「青木さんが怒るからちゃんと練習せなあかん」って一応練習したんですけど、本番当日、原付で会場に向かってるときに運転をミスって、清掃のおっちゃんに少しだけ本当にゆるーく当たってもうたんですよ。それで警察呼んで事故の処理をしている間にライブの時間が終わってしまい……結局できないまま終わりました。

大学に入ってからはロックコミューンっていう立命館大学の軽音サークルに1回だけ行ったんですけど入らず。次の年、そのサークルに入ってきたのがくるりです。岸田(繁)くんは僕の中学校の後輩で当時から「めちゃくちゃギターがうまい子がいる」って有名だったんです。大学4回生のとき、ロックコミューンに在籍している友達から「卒業ライブ、一緒に出ようや」って誘われて、“Charaを弾き語りするけど高すぎて声が出えへん”っていうコントをひとくだりやったんですけど、めちゃくちゃお客さんが入ってて、その頃僕、もう芸人デビューして大阪の番組に出てたし、「俺のこと観に来てんのかな」と思ったら、みんなくるりを観に来てたんです。くるりはデビューする前からすごい人気あってインディーズで1stアルバム(「もしもし」)を出すときに当時サバンナがやってたラジオに出てくれたんですけど、あっという間に売れて。そこから全然交流がなかったんですけどずっと聴き続けていて、僕が東京出て来た頃にSNSでつながって武道館にライブを観に行きました。そこで聴いた「東京」という曲が自分と重なって泣きましたね……あれ、これくるりの話になってるけど大丈夫?(笑)

桜井さん、俺を見て書いたのか

大阪にいる頃、大阪の芸人何人かとよしもと興業の社員の谷川さんでよくカラオケ行って、7時間ミスチルしか歌わない“ミスチル縛り”というのをやってたんです。そんなことができるのってミスチルだけだと思います。ミスチル好きと一緒にカラオケ行くと楽しいですよ、「お、今日はそっちの系統でいくの? ほな僕もこれでいくか」って考えながら曲を入れる。

ミスチルで1番好きな歌を決めるのは難しいですけど、カラオケに行って歌うとなったら「あんまり覚えてないや」を歌います。歌詞がすごく好き。「HOME」っていう家のことをテーマにしたアルバムの最後に入ってる曲なんですけど、1番では「いいなって思ってた子と一夜を共にしたんだけど、朝になったらあんまり覚えてないや」。2番では「奇跡のメロディーが浮かんできたはずなのに、朝になったらあんまり覚えてないや」。3番は「おじいちゃんになったお父さんとおばあちゃんになったお母さん、歩くスピードは遅くなったけど、2人が若かったときのことはちゃんと覚えてるんだ」って歌詞なんです。いろんなことを忘れても、大切な思い出はちゃんと覚えてるんだっていう歌なんです。もう歌詞の“3番回収力”がすごいでしょ。

みんなが知らなそうで僕が好きな曲を挙げると、まずは「1999年、夏、沖縄」っていう曲。これは沖縄に行ったときのことを歌った歌で。要約すると「現実は思い描いていたことと違くて、時に険しく、些細なことで泣いたり笑ったりするけど、出会ったり別れたりしながら旅路は続いて行く。口にしたさよならは数知れず、でもまたここで歌いたい」っていう歌なんです。僕19歳で芸人になって、デビュー当時にやりたかったことと現実は微妙に変わってきてるけど、「道のりは続いて行くし、いろんな舞台に立っていかなあかん」と言われてるような。ちょうど営業で地方回っているときだったから「桜井(和寿)さん、俺を見て書いたのか?」って。

2曲目は「ひびき」。これはシンプルなラブソングなんですけど、テンポがよくてアコースティックな感じでいいんですよ。2006年にリリースされた「しるし」のB面で、桜井さんが自転車に乗ってるときにできた曲だそうです。ラブソングを歌うとき、ミュージシャンの皆さんはいろんな比喩や表現で愛を語るんですけど、結局言いたいことは「好き」っていうことだったりするでしょ。それをストレートに言った曲が「君が好き」じゃないですか。あれをセンターワードで1曲作った桜井さんはすごいと思うんですけど、「君が好き」ってもうあの曲で言っちゃたから今後は使わないであろう封印ワードだったと思うんですよ。でも使った。たぶんその言葉が降りてきて桜井さんの中で「封印してたけど、もう使ってええやろ」って思えたんじゃないでしょうか。まだこの曲はライブで歌ってるところを観たことないんですね。

2006年にミスチルが「ベストアーティスト」(日本テレビ)のライブで「しるし」を歌ったんですけど、僕はその頃日本テレビの「エンタの神様」で犬井ヒロシをやっていて、僕も犬井ヒロシで「ベストアーティスト」のライブに出たんですよ。横浜アリーナのステージでギター持ってネタやって袖に帰ってきたら、ミスチルがすぐそこでスタンバイしてて。桜井さんを真近くで見ました。桜井さんが出る直前にめっちゃでっかい声で声の調整してはって「カッコいい」って思いましたね。

理想とは違っても可能性がある限りがんばらなきゃ

最近は「Mr.Children Tour 2018-19 重力と呼吸」を観にさいたまスーパーアリーナに行きました。テレビ朝日「アメトーーク!」の「Mr.Children芸人」に出させてもらったこともあって、関係者の方にご招待いただいたたんですよ。ライブを楽しんで帰ろうと思ったら、元阪神タイガースの桧山進次郎さんが「今から楽屋挨拶に行くから一緒に行こうや」って声を掛けてくれて。桧山さんがナカケー(B / 中川敬輔)さんJEN(Dr / 鈴木英哉)さんと仲がよくて、会わせてくれたんです。「『アメトーーク!』ありがとうね」って言ってくれて一緒に写真も撮ってもらいました。めちゃくちゃ緊張して「めちゃくちゃカッコよかったです」しか言えなかったです。桜井さんはいなかったんですよ。会ってみたいですけど、もし会えたら言葉出なそうですね。握手して写真撮ってもらって十分かな。

最近ハマってる曲は「海にて、心は裸になりたがる」と「Your Song」。あと僕はアルバムを1曲目から聴いていくのが好きなんですけど、特に「SUPERMARKET FANTASY」というアルバムの7曲目「口がすべって」から「水上バス」「東京」の流れが好きです。この3曲がすごい名曲で、「東京」っていう曲がやっぱり自分も大阪から東京に出て来てるから共感できるところがいっぱいあるんですよ。新幹線で大阪から東京に帰ってくるときにはこれを聴いて気持ちを仕上げています。この曲も「理想とは違っても可能性がある限りがんばらなきゃ」っていう気持ちを歌ってるんですよね。

キラーチューンだらけ

桜井さんを一番近くで観たのはナゴヤドームのライブです。9列目でした。僕がよく行ってた居酒屋に来ていたお姉ちゃんが「ミスチル観に行こうよ」ってチケット用意してくれて。その子のこと全然好きじゃなかったんですけど、“ミスチルを9列目で観られる”っていうのに釣られて名古屋まで付いて行ったんですよ。もちろんめちゃくちゃカッコよかったです。帰りは雪が降っていて、タクシーが捕まらんくて足元がグシャグシャになって。でも僕は「ミスチルの曲聴いていっぱい楽しかったなあ」ってタクシーを拾っていることすら楽しいと思っていたんですよ。そしたらその子「ね、早くタクシー止めてよ!」って言ったんです。そのとき、「この子は桜井さんから何を学んだんや」って思いましたね(笑)。

普通のバンドだったら「innocent world」「Tomorrow never knows」「名もなき詩」ってヒット曲を最初にやってしまったら「このあとどうすんねん」ってなるじゃないですか。でもミスチルはキラーチューンだらけで膨大な武器を持っているので、まだまだある。新しいアルバムのツアーにはアルバムを聴いて行くんですが、有名な昔の曲もやってくれるし、マニアが唸るような曲もやってくれるし、どこのターゲットでも初めての人でも楽しめるのがミスチルのライブだと思います。ライブ中、どちらかというと僕は一緒に歌いたいタイプなんで、誰かと一緒に行っても1人の世界に入って歌っています。ほかの観客に見付かっても大丈夫。ライブってみんなステージを一番観たいから、もし芸能人がいても全然なんともないんです。

たまに関係者として呼んでもらうこともあるんですけど、関係者席で上着着て余裕な感じで観てる方とかちょっと違うと思ってて。チケット買えへんかったファンの方もいるし、そういうときは誰よりも楽しまな失礼にあたると思うんですよ。だからライブでは絶対その日に買ったツアーTを着て観ます。あと最近、iTunesでミスチルの曲も配信されるようになったじゃないですか。あれはめちゃくちゃうれしかったですね。もちろんCDも買いますけど、僕的に前からiTunes って、CD買って聴く人たちに優しくないと思ってて。CD読み込ませて同期させたりとか、その手間はどうにかならんのかって思ってたから、配信してくれて、簡単にiPhoneで聴けるようになって本当によかったです。

家族のようなチームワークがすごく素敵

桜井さんの魅力は歌声かな。あんだけの運動量であんだけ歌って、ずっとカッコいいって。アコギ弾きながら歌ってるときもめちゃめちゃカッコいいです。独特のステップとか。僕、カッコいいボーカリストって神に選ばれてると思うんですよ。普通にカラオケとかで立って歌ってる自分の姿を鏡で見るとゲー吐きそうになりますもん、ダサすぎて(笑)。ダサい奴は左手の置き場がない。足の動かし方もなんか変。でも桜井さんは何もしなくても左手は様になってるし、考えずにステップ踏めるし、もう天才。カッコ悪い桜井さんは見たことないです。

バンドとしての魅力は、絆、団結力だと思います。あんだけ大きいバンドが活動休止もせずにやり続けるってすごいことだと思うんです。新しいアルバム「重力と呼吸」はプロデューサーを立てずにセルフでやってるし、家族のようなチームワークがすごく素敵。「ap bank fes」では桜井さんがずっとステージに出ていろんなアーティストとコラボするんです。それだけ長い時間桜井さんを観てたら観客としては「お腹いっぱいで最後のミスチルもう食べられへん」って思うじゃないですか。でも一番盛り上がるんですよ、ミスチルが。「やっぱりすごいぞ、Mr.Children」てなりますよね。みんなバンドといえば、ギターとドラムとベースとボーカルの4人組という形が思い描きやすいじゃないですか。まさにミスチルなんですよ。ミスチルはみんなが思うカッコいいバンドのお手本だと思いますね。

高橋茂雄(サバンナ)

1976年生まれ。京都府出身のお笑い芸人。1994年にサバンナ結成。「第18回 ABCお笑い新人グランプリ」優秀新人賞、「第4回 BGO上方笑演芸大賞」2008年度大賞を受賞している。現在「今ちゃんの『実は…』」(朝日放送テレビ)、「よ~いドン!」(関西テレビ)、「ヒルナンデス!」(日本テレビ)など数々の番組にレギュラー出演中。

取材・文・構成 / 中村佳子(音楽ナタリー編集部) 撮影 / タマイシンゴ