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SABANNAMAN 吉田涼&上田雄が語る、新たな冒険と変化「自分たちの曲をもっと共有したい」

リアルサウンド

18/7/4(水) 19:00

 大学在学中に制作した2015年の1stアルバム『MAGIC MUTANT』で見せた90年代ミクスチャーの要素を全開にしたサウンドとライブが話題を呼び、その後はFUJI ROCK FESTIVALや京都大作戦など様々な大型フェスに出演した4人組バンド、SABANNAMAN。彼らが約3年ぶりとなる2ndフルアルバム『ADVENTURE』を完成させた。

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 Red Hot Chili Peppers(以下、レッチリ)やRage Against The Machine(以下、レイジ)、System Of A Downらを彷彿とさせる、彼ら特有の“ごった煮”のミクスチャーサウンドはそのままに、この2作目ではレゲエからダブ、またハードコアからテクノまで、より幅広いサウンドを導入。そのうえでフロントマン、吉田涼の“歌”をメインに据えた楽曲を増やすことで、彼らが新たな場所へと乗り出していく冒険を詰め込むかのような、新鮮な雰囲気がアルバムを覆っている。この変化はどんな風に起きたものだったのか? 吉田涼(Vo)と上田雄(Gt)に聞いた。(杉山仁)

■「最初に自然に出てきたのが「Wandering」」(上田雄)
――2015年の1stフルアルバム『MAGIC MUTANT』を作っているときは、みなさんはまだ学生だったと思うのですが、あのアルバムはどんな風に制作したものだったんですか?

吉田涼(以下、吉田):あのときは「CD出してくれるんだ? ラッキー!!」という感じで、何も分からずに作ってました(笑)。でも、アルバムを作るのは初めての経験だったし、すごく楽しく過ごしたのを覚えています。

上田雄(以下、上田):あのときはまだ、自分が出した音がCDになることしか考えてなかったですね。

吉田:そうそう。本当に何も分からずにやっていたんですよ(笑)。

――あの時点ではアルバムの構成を考えたりするような感じではなかったのですか?

吉田:何も分かってない状態でした。

上田:でも、今聴くと、あのときのSABANNAMANがやりたかったことは、全部入っているアルバムだったとも思いますね。僕ら自身、すごく気に入ってる作品だし。

吉田:そうだね。「若くて、勢いがあって、最高だね!!」って。

――それからFUJI ROCKや京都大作戦といった大型フェスにも多数出演していくことになりますが、フェスの大会場でライブをしたことで、気づいたことはありましたか?

吉田:それはめっちゃあったと思います。でかいところでライブをする経験って、色んなことを変えると思うんですよ。それが何かと言われると、うまく言えないんですけど。

――たとえば、小さなライブハウスと大きな会場では、一体感の出し方が少し変わってくる部分があるかもしれません。

吉田:ああ、それはすごく感じてました。

上田:でかい会場だと、後ろの方は音量が小さいからごまかせないんですよ。バイブスだけでは何ともならない瞬間があるというか。

吉田:そういうことは、僕らにとってすごく勉強になったと思いますね。それもあって、今回のアルバムでも曲や演奏が変わってきていると思うんで。

上田:今までは「楽しい」「バンドがやれて最高」ということしか考えていなかったんですけど、今回の『ADVENTURE』を作る頃には、よりいいものにしたい、会場で演奏したときに一体感が出るものを作りたい、と思うようになりました。

吉田:やっぱり、色んな人に聴いてもらえた方がいいよな、って。

上田:そうそう、自分たちの曲をもっとみんなで共有したい、と思うようになったんですよ。ライブやフェスの会場で、自分たちの音楽を聴いてくれる人たちの存在を実感したのは本当に大きかったと思います。

吉田:それがなかったら、こんな気持ちにはなってなかったよね。

上田:そうだね。こういうことは、メンバーがそれぞれに何となく感じていたことだとは思うんですけど、それをちゃんと話し合うようになったのが最近の話でした。そういうことを共有した方が、バンドがよくなっていくんじゃないかな、とも思うんで。

――この3年間の間に、普段聴いている音楽にも広がりはありましたか?

吉田:たくさんあり過ぎて説明するのは大変ですけど……。

上田:たとえば、レゲエやダブの要素はそうですね。

――2016年のミニアルバム『Psychedelic Sox Funk』の頃から、みなさんの曲に実際に反映されはじめている要素ですね。

上田:ほかにはエレクトロやハードコアテクノもそうで、今は“最高だな”と思えるものがたくさん増えて、自分たちの音楽の中にも“何でも入れられる”と感じることが多くなっている気がします。レゲエやダブを深く追求した音楽だけではなくて、ロックにそういう要素を取り入れた曲も聴くし、ストリーミングサービスで検索した名前も知らないハードコアテクノを聴いたりもするしーー。あと、ハードコアテクノで言うなら、Atari Teenage Riotもみんなで聴いていました。

吉田:Atari Teenage Riotはバンドメンバーの中ですごく流行りました。「これ、かっこよすぎてヤバいぞ!」って。あと、俺は毎週キャンプや釣りに行ってましたね。

――キャンプはさすがにアルバムには影響を与えていないですよね……(笑)?

吉田:(笑)。今回のアルバムも、「そういうときに聴けたらいいよね」という気持ちが少しはあったかもしれないです。あくまで「あったかもしれない」という感じですけど(笑)。今回のアルバムの中で一番最初にできたのは、5カ月くらいかけた「Wandering」でした。そこからほかの曲も作って、バランスを見ながらアルバムに入れる曲を決めていきました。

――「Wandering」はSABANNAMANには珍しいミディアムテンポの曲で、歌詞も日本語詞になっていますね。この曲が最初にできたというのは、今回のアルバムを象徴しているのかもしれません。

吉田:「Wandering」はちょっとワールドミュージックっぽい、オーガニックな雰囲気というか。

上田:「そろそろ曲を作んなきゃね」とメンバーと話をしていく中で、最初に自然に出てきたのが「Wandering」だったんですよ。

吉田:まずはそのリフが「めちゃいいじゃん!」という話になって、曲自体もいいから、この曲は日本語で歌ってみようという話になりました。

上田:それが、さっき言っていた“みんなが共有できるよさ”にも繋がるのかな、と思います。「曲をみんなに届けたい」という気持ちが、曲にも以前より出てきたというか。

■「“不親切さ”ならではのよさがあると思う」(吉田涼)
――思えば『MAGIC MUTANT』の頃は、日本語が入っていても、それはかなりふざけたタイプのものでしたよね。

吉田:今思うと、あの頃は恥ずかしかったのかもしれないです(笑)。ある意味、照れ隠しみたいな感じだったんですよ。でも、今は日本語の曲も普段から聴いていて、そういう曲もやってみたいと思うようになりました。そもそも、『MAGIC MUTANT』の頃は、「SABANNAMANと言えば英詞」と自分たちでも思っていたし、ハードコアファンクっぽい何でもありのミクスチャーこそが自分たちだと思っていて。でも、ミニアルバム『Psychedelic Sox Funk』にも入れた「Light In Dark」(今回の『ADVENTURE』にも収録)ができてから、こういう歌っぽいものもやってもいいな、と思えるようになりました。

上田:自分たちの中でも、間口が広がった感じがしたというか。俺たちも普通に“いい曲”が作れる、ということに気づいたんですよ。

吉田:そしてその流れが、今回のアルバムに繋がってるのかなと思いますね。

上田:でも、「Light In Dark」にしても、激しい曲にしても、ベースになっているものは同じです。「Wandering」もそうで、「別のバンドみたいな曲を作ろう」と思って作ったわけではないんですよ。今のSABANNAMANがやりたいことを出した結果こうなったというか。「Wandering」ができてからは、ノリを大事にしてどんどん作っていったんですけど、僕がフレーズを用意して、その中で吉田が気に入ったものから曲に発展させていく、という感じでした。

吉田:あとは、「このバンドっぽいものを、俺たちがやったらどうなるだろう?」とか。たとえば12曲目の「Get Check Now」は、さっき話していたAtari Teenage Riotっぽい曲を作りはじめたら、最終的にこういう感じになったんです。

――なるほど。ほかの曲でも、たとえば7曲目の「THUNDER」は、『Evil Empire』や『The Battle Of Los Angeles』の頃のレイジのーー。

上田:ーーような曲にしたいと思っていたんですけど、できたものはそれよりAC/DCみたいになってしまって(笑)。それで「THUNDER」というタイトルになりました(笑)。

――今回のアルバムのタイトルにもなっている冒頭のインスト曲「Adventure」はどうですか?

吉田:この曲は最後の方にできた曲ですね。アルバムの中でもSEのような、オープニングのようなものにしようと思っていました。もともと俺はそういうものが好きで、ずっとやりたいと言っていたんですよ。たとえば、歌が入ってる曲ではありますけど、Foo Fightersの『In Your Honor』の1曲目(アルバムのタイトル曲「In Your Honer」)とかもすごく好きなんで。僕らのライブでも1曲目にやれたらいいかな、と思うこともあります。

――「SEのような曲」繋がりでいくと、逆再生を使ったトラックの中で「No.6……No.6」という声がループしている6曲目の「No,6」も印象的でした。これはThe Beatlesの『The Beatles』(通称『ホワイト・アルバム』)の収録曲「Revolution 9」へのオマージュですか?

上田:そうです。ちょうど制作中に、メンバーで『ホワイト・アルバム』をめちゃくちゃ聴いてたんですよ。それで、「サウンドコラージュをやりたいね」という話になりました。

吉田:もともと、俺がThe Beatlesの中で、なぜか『ホワイト・アルバム』だけ持っていて。「Cry Baby Cry」がめちゃくちゃ好きで聴いていたんですよ。

上田:吉田から薦められて聴いてみたら、サウンドプロダクションの実験をするような感覚がレッチリの『Blood Sugar Sex Magik』にかなり近いと思いました。その最たるものが「Revolution 9」なんで、オマージュで作ってみよう、となって。自分たちがファーストを出す前の自主制作盤の1曲目に入っていたデモのSEを持ってきて、そこに「No.6……No.6……」というセリフを入れていきました。俺たちが面白いと思えることなら、何でも入れちゃえ! と思ったし、こういうのもあるぞ、ということを聴いてほしかったんで。

吉田:その結果、ちょっと怖い雰囲気の曲になりました(笑)。でも、そういう曲ならではのよさって、あると思うんですよね。The Beatlesにしても「『Revolution 9』って、何で入れたん……?」みたいな話じゃないですか(笑)。そういうことって、日本の人はあまりやらないイメージがありますけど、「何でこの曲が入ってるんだろう?」って。最初は自分たちのジャムをベースにやれたらいいなと思っていたんですけど、意外とレコーディングする時間がなくなってしまって、自分たちの過去の曲を使うことになりました。意味は分からないと思うんですけど、そういう“不親切さ”ならではのよさがあると思うんですよね。

――リード曲の「The Way」はどうですか? この曲はSABANNAMANらしいミクスチャーでありつつ、同時に歌モノとしての魅力も感じられる曲になっていると思いました。レッチリのアンセムになるような曲にも近い雰囲気を感じますね。

吉田:元気なレッチリの新曲というか(笑)。この曲はもともと、ミニアルバムのときに作っていた元ネタがあって、でもそのときは曲として完成しなかったんですよ。

上田:すごくいいBメロができたんですけど、そのほかの部分がなかなかできなくて。

吉田:そのときのフレーズを基に、今回作っていった曲です。結構時間がかかったよね?

上田:そうそう。俺が「こういうリフがかっこいいな」と思っている曲と、吉田が「こういう曲にした」と思っていたことが違っていて、そこをすりあわせるのが大変でした。色んなリフを作って、「これは違うな」ということを繰り返して。

吉田:俺も、頭の中にあるものを上手く説明できなかったんで、ひたすらやるしかなかった(笑)。サビにもメロディを付けたいと思っていましたね。僕らのお気に入りの曲です。

――ほかにみなさんの中で思い入れのある曲というと?

吉田:それは全部になっちゃいますけど(笑)、でも「Wandering」はすごく思い出に残っているしーー。

上田:もちろん、「The Way」もそうだしーー。最後の「Get Check Now」も、改めて聴くと自分たちでは「よくできたなぁ」と思います。ハードコアテクノやデジタルハードコアを生バンドでやるという発想自体もなかなかないと思いますし、できて単純に嬉しかったですね。結果として、ハードコアテクノでも何でもない、“何か”になったというか。

吉田:「あの曲いいよね」「超やべえよな」って言って作りはじめたものが、それでもない“何か”になっていった(笑)。でも、それがいいと思うんですよ。「こんな感じの曲を作りたい」と思って作りはじめても、結局はそうならないし、なりたくてもなれないというか。

上田:それで出来上がった曲を聴いて、結局「これ、俺らだよなぁ……」って。

吉田:同じものになってしまったら、意味はないですからね。

■「“かっこいい”の種類が増えてきている」(上田雄)
――今回のレコーディング中、メンバーとのやりとりで印象に残っていることは?

上田:俺はギターソロは基本的に何も考えずに臨むことが多いんですけど、今回、1時間ぐらい弾いてもしっくりこなくて、何も分からないような感じになってしまって。そのときにたまたま聴いてた吉田が「これで全然いいと思う」と言ってくれて、あとから聴いたら確かにと思ったんです。そのジャッジが信頼できる部分はありました。

吉田:SABANNAMANってほぼ全曲にギターソロがあるバンドで、それを毎回ぶっつけ本番で弾くんですよ。いつもいいテイクなんで、見ていてすげえなって思いますね。今回の3曲目「Epic Code」のギターソロとか、最高ですよ。あれは最っ高。笑っちゃいました。

――あの曲は、曲のフックになっているのがほぼ上田さんのギターという……。

上田:“メタルバンドがへちょへちょになったら、結果、最高のパンクロックになった”みたいな曲ですよね(笑)。

吉田:ドラムの感じはすごくメタルっぽい。それをファンクのノリでやってみた曲ですね。

上田:ベースの糸数(航平)は、あいつにしか出せない音過ぎて、困ることもある反面、逆に「最高だな」と思うこともあって、その扱いを俺たちが勉強するという感じですね(笑)。

吉田:そういえば今回、レコーディング中もずっと一緒に生活していたんですよ。レコーディングスタジオの上がアパートみたいになっていて、そこで10日間ぐらい泊まり込んで。最高の環境でした。自分たちで飯も作ってましたよ。カレーとかを作ったんですけど、みんなそれに途中で飽きちゃって。あとは毎日……大富豪をしてました(笑)。

――メンバーで長く制作をともにできる環境だと、思いついたアイデアをすぐに試せる部分があったかもしれませんね。

吉田:そうですね。歌詞もその場で書いたりしてました。あと、歌はめちゃくちゃ変わりました。レコーディングを重ねていく中でかたまっていったんで。

上田:それがバンド音楽のいいところだと思うんですよね。人間味があるというか、悪く言えば適当というか。レッチリやレイジの話を読んでいても、みんなそんな感じじゃないですか(笑)?

吉田:レイジのザック(・デ・ラ・ロッチャ)とか、スタジオの壁に穴を開けて「こっちの方が音がいいぜ」って言ったりとか。やばくないですか(笑)。レッチリは城を借りていたし。とにかく、今回は時間をかけて、ゆっくり作業を進めることができました。

上田:みんなが納得のいくテイクをひとつずつ録っていったし、音作りにも時間をかけました。特にギターは色んな音を使っていて、結構壮大なものになってるかな、と思いますね。

吉田:ドラムの(與那城)直記も、パーカッションとか、色んな音を入れていたよね。今回のアルバムは直記のパーカッションがほぼ全曲で活躍していて。

上田:直記は吹奏楽部出身で、ロック以外の音楽の素養を持っているんですよ。だから、パーカッションで音をどんな風に広げたらいいかもよく分かっているんです。

――SABANNAMANはもともとごった煮のミクスチャーが得意なバンドだったと思いますが、それにしても今回の『ADVENTURE』では、さらに音楽性が広がっていますね。

上田:7~8年一緒にやってきて、やっとお互いが好きな音楽を共有できるようになってきた部分があると思うんですよ。

吉田:それに、より色んな音楽をリスペクトできるようになってきたとも思います。いつも対バンしているバンドや先輩の音楽もすごくかっこいいなと思うし、ヒットしている日本のバンドも、かっこいいなと思います。

上田:言葉にするなら、“かっこいい”の種類が増えてきているというか。

――みなさんの中に色んな音楽のよさを理解するスイッチがより増えていった、と。

吉田:だから、「みんな最高!!」っていう(笑)。やっていくうちに、そうなってきた感覚がありますね。

――今回の『ADVENTURE』(=冒険)というタイトルの由来は?

吉田:やっぱり、今回新しいことをたくさんやったというのは大きいと思います。

上田:それに、俺たちは「ずっとワクワクしてたい」という気持ちや、「ずっと遊んでたい」という気持ちが強いので。

吉田:そういう意味でも、『ADVENTURE』というのは、すごく楽しそうなタイトルだと思ったんですよ。『ADVENTURE』っていう言葉のガキっぽさもいいと思ったし。

上田:「アドベンチャー」って、『デジモンアドベンチャー』ぐらいでしか見たことがない(笑)。でも、逆に新鮮でいい言葉だと思いました。ほかの案も色々出したんですけど、最終的には「やっぱりこれだな」って。

吉田:もう、ほかの候補を覚えてないですからね(笑)。

――今回のアルバムは、みなさんにとってどんな作品になったと思っていますか?

上田:前の作品ももちろん気に入っていますけど、今回のアルバムは単純に楽器が上手くなっているし、改めて聴いたときに、色んなことができるようになっているのを感じました。

吉田:メロディもいい曲が増えていると思いますし。そうだ、それはアルバムを作るときに最初から決めていたことですね。“歌”としてもいいものを作ろう、と。

上田:でも、結果聴き返してみたら、「全部SABANNAMANっぽい」ものになったというか。自分たちの音楽をわかりやすくするために、妥協したり質を落としたりせずアルバムを作れたことが、何よりもよかったと思います。

吉田:やっとそういうアルバムができた感じがします。今回の『ADVENTURE』は、SABANNAMANが今できること、やりたいことを全部詰め込んだアルバムですね。だから、逆に言うと、次は全然違うかもしれない(笑)。

上田:(笑)。もちろん、自分たちが楽しむことがまずは絶対でーー。

吉田:今の俺らは、その上で“たくさんの人に聴いてもらいたい”と思っているんですよ。

(取材・文=杉山仁)

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