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テレ朝ドラマ、新しさと古さのバランスが絶妙に 独自の作品を生み出す手法

リアルサウンド

18/7/5(木) 6:00

 春ドラマは、意外な作品が面白かった。まず、今期一番のダークホースとなった『おっさんずラブ』(テレビ朝日系)。

 テレビ朝日のドラマというと『相棒』や『ドクターX』のような長期シリーズ化した1話完結の職業モノが人気を席巻しており、ドラマファンからすると保守的な”おっさん向け”ドラマばかり放送されているドラマ枠というイメージが強い。しかし、近年はシルバードラマ枠として『やすらぎの郷』などの昼帯のドラマを復活させたり(現在は休止中で来年再開予定)と、テレビドラマが高齢者向けになっていることに開き直ることで、今までにない独自の作品を生み出している。

【写真】『おっさんずラブ』はるたんと牧と黒澤部長

 『おっさんずラブ』も昨年新たに作られた深夜ドラマ枠で放送された作品だ。この枠は今までに『オトナ高校』、『明日の君がもっと好き』を放送しており、恋愛モノの連続ドラマを放送する枠というイメージだったのだが、3本目に登場した『おっさんずラブ』は男性同士恋愛を中心に扱った異色の恋愛ドラマとして話題になった。

 基本的には誰と誰がくっつくかで関心をひっぱるトレンディドラマ以降の恋愛ドラマの王道なのだが、いわゆるBL(ボーイズラブ)にすることで、題材は新しいがベタで見やすいという新しさと古さのバランスが絶妙な仕上がりとなった。

 また、ネットでの広報展開がうまく、イラスト投稿サイトpixiv(ピクシブ)でイラストを募集したり、劇中の登場人物・黒澤武蔵(吉田鋼太郎)が使っているという設定のInstagramを展開することで、本編を盛り上げた。

 『やすらぎの郷』も、実は物語自体は学園ドラマの構造を用いていて、とても古典的な作りなのドラマだったのだが、主人公を老人にして、舞台を老人ホームとすることで、今までとは違う独自のテイストを生み出していた。

 こういった古さと新しさのバランスはテレ朝ならではのものだろう。いつも同じことをやっているように見えて、実はこっそり変なことをやる、というテレ朝ドラマの独自のバランス感覚が開花したことで、『おっさんずラブ』は成功したのだろう。

 また、テレ朝ドラマとして面白かったのは『警視庁・捜査一課課長』。本作はいわゆる1話完結の刑事モノで、今回でシーズン3となる人気シリーズだ。正直、言うと始まる前は全く期待していなかったのだが、新しく登場する女刑事役を安達祐実が演じると知って俄然興味が湧いた。

 本作の主人公は大岩純一という約400人の部下を指揮する捜査一課長なのだが、演じているのは内藤剛志。安達祐実とは『家なき子』(日本テレビ系)で親子の役を演じていて、その時は娘を苦しめる最低の父親だったのだが、今回は彼女を見守る上司役というのが、胸が熱くなる。

 安達祐実が演じる女刑事・谷中萌奈佳は幼少期から柔道選手として注目されていてオリンピックで金メダルをとることを期待されていたが、本番で力を出せずに敗退し、その後は、警視庁の彼女だけが所属する広報課で、柔道選手時代の知名度を活かしたPR活動をおこなっていたアイドル存在だった。

 そんな彼女が女刑事として捜査に参加することで新たな人生を歩んでいくのがシーズン3の見どころなのだが、谷中の人生が、人気子役としてブレイクした後、紆余曲折の人生を歩んできた安達の姿と重なるため、本編とは別のドラマが裏コードとして走っているかのような面白さが存在する。

 こういう出演俳優の文脈を利用して物語に厚みを持たせる手法はテレビドラマではある種、定番だが、まるで『家なき子』の「後日談」や「ifの世界」を見ているかのようだった。シリーズものの刑事ドラマで、こういうおかしなことを時々やるからテレ朝のドラマは油断できない。

 また、今期はトレンディドラマ以降、連ドラが描いてきた“仕事と恋愛”の見せ方を更新しようとする意欲作が出揃った。前述した『おっさんずラブ』や連続テレビ小説『半分、青い。』(NHK)はその筆頭だが、90年代前半に『モーニング』(講談社)で連載された新井英樹の漫画をドラマ化した『宮本から君へ』(テレビ東京系)もその一つだろう。本作の主人公は、文具メーカーの営業として働く宮本浩(池松壮亮)。物語は前半と後半で別れていて、前半で宮本が駅で見かけた甲田美沙子(華村あすか)との痛々しい恋愛を描き、第5話以降は、新規案件をめぐるライバル会社との入札対決となっていく。本筋は後半なのだが、宮本が仕事に打ち込むきっかけとなった甲田との青臭い恋愛は、痛々しくて生々しい描写となっており、今作が女優デビューとなる華村あすかを鮮烈に印象付けた。

 宮藤官九郎・脚本の『ゆとりですがなにか』(日本テレビ系)のような例外を除くと、20代の男性を主人公にして仕事や恋愛を描くような作品は減少していたので、『宮本から君へ』の登場は素直に嬉しかった。『おっさんずラブ』のようなポップでクレバーな作品も好きだが、『宮本から君へ』のような泥臭い作品も、もっと出てきてほしいと思う。

(成馬零一)

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