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RIRI×KEIJU×小袋成彬「Summertime」が示す、新たなJ-POPのあり方 3つのポイントから解説

リアルサウンド

19/4/17(水) 12:00

 日本のポップミュージックに新しい風が吹いている。新しいスタイルが、今までとは違うルールが、J-POPのあり方をアップデートしようとしている。RIRI、KEIJU、小袋成彬による資生堂「アネッサ」CMソング「Summertime」を聴いて、まず感じたのがそういうことだった。

アネッサ2019年SS「サンシャインタワー」篇 30秒|資生堂

 ポップミュージックが面白いのは、わかりやすく、親しみやすいものだけが、すなわち大衆性とイコールではない、というところ。先鋭的なサウンド、まだ誰も聴いたことのない音楽が、新しい共感の輪を広げていく。その現象が、結果として時代を形作っていく。この曲が、そういう象徴になる予感がした。

 では、この曲の何が“新しい”のか。そういう観点からこの曲の魅力をいくつかのポイントにわけて解説していきたい。

 まず1つ目は、「トラックメイカー×シンガー×ラッパー」のコラボレーションという制作スタイルと、サウンド自体の革新性だ。プロデュースを手掛けたのは小袋成彬。「アネッサ」CMのクリエイティブディレクターからオファーを受けた彼のアイデアでこのコラボが実現した。

 星野源、サカナクション、ぼくのりりっくのぼうよみ、Nulbarichなど、これまで数々のアーティストを起用しヒット曲を生んできた「アネッサ」CMだが、こうした形でスペシャルユニットが結成されるのは初めてのことだ。当初は小袋自身が歌うことを打診されていたが「華がある二人が歌ったほうがより作品が素晴らしいものになる」とRIRIとKEIJUに声をかけ、プロジェクトが進んでいった。

「とにかく、みなさんが聴いたことがないようなものを作りたい、というのが最初の発想の始まりでした」

 オフィシャルインタビューで、小袋はこう語っている。

 もちろん、コラボやフィーチャリングという方法論自体はJ-POPのシーンにおいても珍しいものではない。ただ、この曲のポイントは「作品ありき」という点にある。RIRIもKEIJUも、関係性ではなく、あくまで曲のイメージのために起用された。

 だからこそ、弱冠19歳にしてワールドワイドに支持を広げるRIRIの類まれなる歌唱力、そして今の東京のヒップホップシーンを象徴するクルーであるKANDYTOWNのラッパー・KEIJUの存在感が必要だったのだろう。

 ボーカルチョップの手法を取り入れサビの部分で大胆に声をエディットするスタイルもCMソングとしてはかなり挑戦的だが、二人の声が持つポップ性のおかげで、一度聴けばすぐに馴染むものになっている。

 「思った以上に上手くハマったなと思いました」と、小袋は語っている。

RIRI, KEIJU, 小袋成彬 『Summertime』Photo Session Behind the Scene

 2つ目は、こうして生まれた楽曲に、とても多角的なストーリーが描かれていること。場面は夏の砂浜。キラキラと眩しい波が思い浮かぶような太陽の光の下、出会った男女の、時にぎこちなく、しかし互いに惹かれ合い、求め合うストーリーが描かれる。

 印象的なのは、RIRIの歌うサビのパートはキラキラとした爽やかな高揚感が、そしてKEIJUが歌う冒頭のヴァースはどことなく気怠いムードが漂っていること。その二面性が曲のキーになっている。

 そして、よく聴くと気付くのが曲の前半と後半でのプロダクションの違いだ。前半ではそれぞれの声の響きを対照的に聴かせているのに対し、後半ではRIRIとKEIJUの声がボーカルチョップの手法でカットアップされ混じり合い、そしてラストのサビでは二人が掛け合いのように歌う。

 つまり、サウンドプロダクションと曲の展開自体が“徐々に距離を縮め心を通わせていく二人の関係性”の表現になっているのだ。ここは小袋成彬の作家性として、本当に見事なところだと思う。

 そこで繰り返されるサビのフレーズが〈I wish summertime would last forever〉というのも、すごくグッとくる。これはつまり「この夏が永遠に続けばいいのに」という意味。でも、同時にその願いが叶わないということもどこかでわかっている。そういう、喜びと切なさが表裏一体になったような夏の一瞬の感情を切り取った曲になっている。

 オフィシャルインタビューにて「今まで私が歌ってきた曲とも違う、新しい感じで、新鮮な気持ちで歌わせて頂きました」とRIRIはコメントしている。そして、KEIJUは「リリックをスタジオで小袋くんと一緒に手伝ってもらいながら書いたというのがすごく大きかった。ちょっと新しい自分になったかなと思います」と語る。

 きっと、二人にとっても新たな表現を開拓するきっかけになったはずだ。

 そして3つ目は、この曲のあり方が“クリエイティブが国境を超える新たなJ-POPのあり方”の可能性の端緒になるのではないか、ということ。

 小袋成彬は今年2月、ロンドンに移住したことを発表した。メジャーレーベルに所属し、国内でのプロデュースワークも進めつつ、並行して自身の率いるTokyo Recordingsが設立した新レーベル<ASEVER>から第一弾アーティストとしてインドネシア出身のトラックメイカー・pxzvcの音源をリリースすることを発表している。アーティストとして、プロデューサーとして、きっと現地の音楽シーンに大きな刺激を受けていることだろう。

 また、RIRIは「海外にも自分の曲を届けたい」という夢を持ち、16歳からLAにて海外の第一線のプロデューサーとの楽曲制作を続けてきたキャリアの持ち主。グローバルなポップミュージックの潮流を肌身で感じていることが、彼女のシンガーとしての大きなポテンシャルになっている。

 さらに言えば、資生堂も、日本だけでなくグローバルにブランドを展開し、特にアジア市場に大きな存在感を持つ化粧品メーカーだ。昨年11月にはプロテニスプレーヤーの大坂なおみ選手と「アネッサ」グローバルブランドアンバサダーの契約を結んでいる。たとえば「Summertime」という曲が日本国外でもCMソングとして用いられたりしたら、すごく面白いことになるんじゃないか、とも思う。

 ここにあるのは、当たり前に、日本がアジアを経由してグローバルにつながっているという感覚だ。

 日本人による、日本の音楽市場のための“J-POP”が成立し、成熟していったのが平成という時代だった。そして、今、次の時代が訪れつつある予感がしている。

■柴 那典
1976年神奈川県生まれ。ライター、編集者。音楽ジャーナリスト。出版社ロッキング・オンを経て独立。ブログ「日々の音色とことば:」Twitter

■リリース情報
配信限定シングル
「Summertime」(資生堂「アネッサ」CMソング2019)
RIRI, KEIJU, 小袋成彬
4月17日(水)に主要サブスクリプションサービス含め配信リリース

RIRI 『Summertime EP』
5月22日発売
¥1,700(税込)
<収録曲> 
1. Summertime / RIRI, KEIJU, 小袋成彬  
2. Better Days   
3. luv luv feat. Junoflo
4. HONEY (BUNNY Remix)   
5. Dilemma (Produced by DJ CHARI & DJ TATSUKI) / JP THE WAVY & RIRI

■関連リンク
RIRI Official Site
KEIJU Official Site
小袋成彬Official Site