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L’Arc~en~Cielはバンドとしての“夢”を魅せてくれる 『LIVE 2018 L’ArChristmas』レポート

リアルサウンド

18/12/30(日) 18:00

 “良い曲を書いてもライブが良くないバンドはダメだと思うので”

 印象的だったこの言葉は、2017年4月8日、9日に東京ドームで開催されたバンド結成25周年を記念した『25th L’Anniversary LIVE』を特集したニュース番組で、リーダーであるtetsuyaが口にしていた言葉だ。

 この言葉を聞いた時、L’Arc〜en〜Cielというバンドが、ライブという空間を何よりも大切なものとして考えていることを改めて知った気がした。

 2018年12月19日、20日。2日間で11万人を動員した、バンドにとって約1年8カ月ぶりとなった今回の公演では、約3時間で22曲が演奏されたのだが、そこに並べられた名曲たちは、hyde、ken、tetsuya、yukihiroの放つ音と歌によって、より立体的にその場に浮かびあがったのだ。

 コンスタントにライブをしているバンドではないだけに、オーディエンスにとっては、“L’Arc〜en〜Cielのライブが観れる”ということだけで幸せだと思うのだが、さらにこの2日間で届けられた曲達の並びは、もはやその並びだけで幸せに導かれたと言っても過言ではないほどに、最高なセットリストであったようだ。

 “その日、そこで聴ける曲”こそが、そのライブの想い出へと変わっていく。それこそが最高の演出であると言っても過言ではない。そんな曲選びの段階から、きっと彼ら4人の“ライブ”は始まっているのだろう。

 「Dearest Love」や「静かの海で」など、ライブで演奏されるのは相当珍しい曲達の選曲も、オーディエンスにとっては、“この日のライブを忘れることのできない瞬間”にしたに違いない。

 そんな平成最後のL’Arc〜en〜Cielのライブは、『LIVE 2018 L’ArChristmas』と題されたクリスマスムードに包まれたコンセプチュアルなライブだった。クリスマスソングもある彼等ゆえ、クリスマスライブが今回初であったということに少し驚きを感じた。こんなにもクリスマスが似合うバンドは他に居ないだろうと感じていたのは、きっと私だけではないはずだ。

 外にそなえられた大きなクリスマスツリーも、メンバー各自がプロデュースしたグッズも、真っ白なトナカイがライブへといざなったオープニングの映像も、メインステージに設置された電飾の巨大なクリスマスツリーも、全てがオーディエンスをL’ArChristmasへと導く素晴らしい演出だった。

 氷漬けにされていたメンバーが、氷が割れる音と共にステージへと現れると、会場は割れんばかりの歓声をメンバー1人1人に向けて贈った。

 SNSなどの普及により、アーティストや演者が手の届く距離になってしまった昨今だが、そんな世の中の流れに属することなく、ここまで確固たるアーティスト性を放つL’Arc〜en〜Cielの絶対的な存在感は本当に素晴らしい。氷漬けの中からの登場に、全く違和感を感じないのは、変わらぬ4人の姿と、その絶対的な存在感を纏ったオーラによるものなのだろう。

 ロックバンドというのは、夢を魅せてくれてこそのもの。

 これは私の持論なのだが、L’Arc〜en〜Cielとはまさしくそんなロックバンドなのである。

 1曲目に置かれていた「winter fall」は、hydeのそっと息を吸い込む体温を感じる歌いだしから始まった。この、ギターでいうところのフィンガーノイズ、ドラムでいうところのゴーストノートのような、その時にしか宿らない体温は奇跡の様なもの。この時もそう。この瞬間にしかない体温が、しっかりとオーディエンスの心を掴んだのが見えた気がした。

 ライブはkenの鮮やかなギターフレーズのイントロから始まる「Caress of Venus」へと繋がれ、一気に加速していった。雪が舞うビジョンをバックに「snow drop」が届けられていくと、フロアはオーディエンスが放つL’edバンド(LEDリストバンド)の青い光に包まれた。yukihiroの流れるようなタム使いとkenのトーキングモジュレーターを使ったサウンド作りがとても印象的に曲を彩り、tetsuyaの奏でる独特かつメロディアスなベースフレーズにhydeは少し弾ませ気味に歌を乗せていった。それは、それぞれの個性が素晴らしく混じりあった瞬間だった。

 ここでhydeが平成最後にL’Arc〜en〜Cielとして4人揃ってステージに立てたことをMCで言葉にし、「BLESS」へと繋げた。

 2010年に開催されたバンクーバーオリンピックとパラリンピックのNHK放送テーマソングに起用された冬の匂いの強いこの曲は、当時の景色へと記憶を遡らせた。

 柔らかなyukihiroのドラミングとtetsuyaのベースフレーズと、煙草を燻らしながらそっと爪弾かれるkenのアコギで作り出す美しいメロディの上に、たおやかな歌声を乗せていくhyde。一気にタイムトリップさせられる感覚に導かれ、想い出の中に浸ることができる、時を経ても変らぬ美しさを魅せてくれる流石の楽曲だが、ときおり差し込まれるtetsuyaのコーラスが当時よりもボーカル力を増したことと、アコースティックギターからエレキギターに持ち変えて届けられる、kenのゲイリー・ムーアを彷彿させる泣きのギターソロにギタリストとしての年輪を重ねたことで宿った深みが加わったことで、成長を感じさせる奥行きを感じ取れたのがとても印象的だった。

 ライブの景色をガラっと変えたのは、「BLESS」の次に届けられた「接吻」だった。

 サングラスをかけ、一瞬にして印象をハードなイメージに変えたhydeは、「BLESS」の余韻を残すことなく声を歪ませた。kenもまた、彼の個性でもある透明に響く美しいギター音からダークに歪ませた音色へと変化させ、その曲を奏でた。彼等がルーツとする洋楽の往年のハードロックを思わすそのヘヴィさは、ロックバンドであるL’Arc〜en〜Cielの振り幅の広さを証明した時間でもあった様に思う。この後に繋げられたtetsuyaの重厚なベースフレーズが曲を引っ張った「fate」もまさに、ロックバンドとしてのキャッチーさとダークさが絡み合う絶妙な塩梅のL’Arc〜en〜Cielという個性と言えるだろう。

 そして。hydeが伸びやかに声を伸ばし、難易度の高い高音キーでのtetsuyaがコーラスを加えた「Dearest Love」を挟み、中盤では、ライブでは恒例となっているkenのギターソロから繋げられた「MY HEART DRAWS A DREAM」でオーディエンス全員が声を重ねて大合唱した後、「Hurry Xmas」へと流れていった。

 hydeは「Hurry Xmas」が始まるとtetsuyaの元へと足を運び、tetsuyaの左肩に右の肘をかけて歌った。さらにhydeは右手をtetsuyaの右肩へとまわして肩を抱くと、tetsuyaは自分の右肩に乗せたその hydeの手を、右手で軽くポンポンッと触りコンタクトを取ったのだった。

 そんな2人の姿に客席からは大きな歓声が上がったのは言うまでもない。

 何よりも望んだL’Arc〜en〜Cielのライブで、何よりも望んだ光景だったのではないだろうか。この2人の出逢いがなければ、今、この世にL’Arc〜en〜Cielというバンドの存在はない。こんなにも多くの人達を幸せへと導けるバンドの始まりが、この2人の出逢いだったかと想うと、改めてここに計り知れない出逢いの奇跡の大きさを感じる。

 こうして今、hyde、ken、tetsuya、yukihiroという4人のL’Arc〜en〜Cielでステージに立ち、多くの人をさらに幸せへと導いている景色をとても素晴らしく、そんな幸せに包まれた場所を共に共有できたことを嬉しく思った。

 10人のサンタクロースが現れ、会場にクリスマスプレゼントのカラーボールを投げたり、フロアにウエーブを起こしたりと盛り上げた後、4人はメインステージの中央からまっすぐに伸びた花道の先端に設けられたセンターステージに身を移し、クリスマスバージョンにアレンジされた「未来世界」で声を重ね、「静かの海で」へと繋げていった。初期曲でもある「静かの海で」が届けられることを想像したオーディエンスはどれくらいいただろう? 割れんばかりの大歓声がその驚きの大きさを示していた。フロアでは、その曲が聴けたことに泣き崩れるオーディエンスもいたほどだった。

 このブロックでは、メンバーそれぞれがギターを持ち、リードボーカルを交代で務める「trick」も届けられた。

 それぞれの個性を感じるモデルのギターを持っていたのもとても印象的。ランディ ローズを思わす黒地に白い水玉のフライングVを持ったtetsuyaの姿にも、そこへの憧れとルーツを感じ、改めて彼らL’Arc〜en〜Cielの音の中にあるロックのルーツを噛み締めた。デジタル色の強い「trick」や、この流れで届けられた妖艶なヘヴィロック「X X X」やグルーヴィな「Wings Flap」は、彼らが吸収してきたであろう音楽ルーツを、見事にL’Arc〜en〜Cielという個性にしていると感じることができた。その瞬間は、少し違う角度からL’Arc〜en〜Cielを楽しめた瞬間でもあった。

 4人はメインステージへと戻り、hydeが今回の公演のセットリストについて話した。今回のセットリストは、2017年4月に開催したライブに向けてリクエストを受けつつも、披露できなかった上位の曲の中から、冬の曲を中心にセレクトしたのだという。この流れから、インディーズの頃からやっている曲だという曲紹介を挟んで「White Feathers」へと繋げた。光のないフロアは、キャッチーさの少ないこの曲を真っ直ぐに受け止め、彼らの音に耳を傾けた。後半フロアに光が灯り真っ白な羽根が舞い散った景色は、言葉にできないほどとても美しい世界だった。

「こっちがプレゼントを貰ったような気分。クリスマスのおかげで今日僕たち会えたわけでしょ? 今日は本当にありがとうございました。導いてくれたこの日に感謝します」

 “こっちがプレゼントを貰ったような気分”と言ったhydeの想いに、心が暖かくなるのを感じた。

 そしてラスト。この日、彼らが最後の曲として選んでいたのは「雪の足跡」。パイプオルガンの音とフィドルの音に包まれる中、ken、tetsuya、yukihiroはゆっくりと音を重ね、hydeはそこにそっと歌を乗せた。「きよしこの夜」のフレーズで締めくくられたスペシャルな「雪の足跡」は、オーディエンスの生涯忘れることのない想い出となったことだろう。

 この日ステージから届けられた22曲の1曲1曲も、吹き上げた真っ白な紙吹雪も、客席の上を転がった虹色の風船達も、オーディエンスが腕に付けていたプログラミングされたL’edバンドでフロアに描き出された光のL’ArChristmasの文字も、会場の外の装飾や景色やグッズも、そこにあった景色の全てが、それを目にした人達の人生に大きく刻まれていくことになるのだと思うと、彼ら4人が、そしてL’Arc〜en〜Cielというバンドが、今、ここに存在する意味の必然を感じる。

 こんなにも多くの人達を幸せに導くことができるL’Arc〜en〜Cielというロックバンドが、この時代に、そして日本に存在してくれることを誇りに思う。

 素晴らしい曲達をありがとう。素晴らしいライブをありがとう。

 hyde、ken、tetsuya、yukihiro、そして、この日のライブを彼らと一緒に作ったオーディエンス1人1人に感謝を。

 そして。この先も共に歴史を重ねていってくれることと、また、ここで会えることを願って。

(文=武市尚子/写真=今元秀明、岡田貴之、緒車寿一、加藤千絵、田中和子)

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