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BiSHモモコグミカンパニー×渡辺淳之介が語る、エンターテインメントの世界で生きていくこと

リアルサウンド

19/1/11(金) 12:00

 恐ろしい辛さのデスソースをご飯にかけてほしいと列を作る女の子たち、食べた結果胃に変調をきたして苦しむ女の子たち……。

 映画『世界でいちばん悲しいオーディション』は、BiSH、BiS、GANG PARADE、EMPiRE、WAggが所属する事務所WACKの合宿型アイドルオーディションのドキュメンタリー映画だ。監督は、これまでもWACK関連作品の撮影に参加してきた岩淵弘樹。

 アイドルになるために、わざわざ1週間もの休みを確保して長崎県の壱岐島へきた女の子たちは、合宿中は24時間カメラに撮影され続けた。彼女たちは、カメラの前で非常によく自分語りをする。まるで自分探しに来たかのように。

 オーディションの首謀者であるWACK社長の渡辺淳之介と、デスソースをめぐって唯一、渡辺淳之介に批判的な言動をしたBiSHのモモコグミカンパニー。ふたりに話を聞いた。

●モモコ「合宿に参加したのは正解でした」

――この映画は松竹配給ですけど、「パワハラだ!」とか何かとうるさいご時世によく実現しましたね。

渡辺淳之介(以下、渡辺):でも、映画はお金を払わないと見られないので、一部分だけを観て誤解されて炎上したりしないので、いいフォーマットだと思いますね。モモコグミカンパニーからは苦言があるよね、オーディションにめっちゃ怒ってたじゃん?

――デスソースで女の子たちの胃がやられたときに、モモコグミカンパニーさんが「いまさら渡辺さんが後悔したところで、あの子たちの体が元に戻るわけじゃない」と言うシーンは非常に印象的でした。

モモコグミカンパニー(以下、モモコ):変な正義感がすごく強いんですよ。「許せない、かわいそう」みたいな。

渡辺:かわいそうだよねー。

――自分がやっておいて(笑)。

渡辺:いやでも違うの、俺はあの子たちから「デスソースをかけてくれ」って言われたから。

モモコ;そうなんですよ、「自分が受かりたい」っていう気持ちが強い人ほど「デスソースをかけられたい」と言うじゃないですか。でも、その子たちから体を悪くしてくのがいたたまれなくて。

――そもそも今回、オーディションを壱岐島で行ったのはなぜでしょうか?

渡辺:絶対に逃げられない環境にしたかったのと、僕が勝手に「船に乗って帰っていく少女たちを『バイバーイ!』って言いながら見送りたいな」って思って。

モモコ:ロマンチックですね、なんか(笑)。

渡辺:結局、そんな時間はなくてできなかったんですけど。(モモコに)離島の特別感もあったでしょ? 飛行機で福岡空港まで行って、博多港へ行って、船に乗って、乗り継ぎがうまくいっても東京から3、4時間かかるんですよ。

モモコ:遠かったですね。

渡辺:女の子たちも、すごい気持ちで入ってこれるんじゃないかなと思って。

――モモコグミカンパニーさんは、壱岐島に行くBiSHメンバーに自分が選ばれて、どういう気持ちでしたか?

モモコ:最初はアイナ(・ジ・エンド)が行くことになってたんです。完全に油断してました。だからオーディションに行くって聞いてから、心の準備が2日間ぐらいしかできなかったんです。もう飛び込みでした。

渡辺:もうすごかったですよ。飲み会中にモモコが行くことになったんですけど、モモコが俺に噛みついてきたんですよ。「合宿であんなに人をいじめていいわけない」って。

モモコ:ハシヤスメ(・アツコ)とアイナが行った前回のオーディションのときは、ニコニコ生放送で見てたほうだったんですけど、「かわいそうだな」とか「ひどいな」って思っちゃったんで「また合宿やるのか」みたいな。

渡辺:Twitterでもモモコが「誰も得しない」みたいなこと書いてて、だんだん俺もモモコを行かせたくなっちゃって。

――逆に行かせたくなっちゃった(笑)。

渡辺:うん。アイナは結局頑張っちゃうし、「じゃあこれモモコだな」と思ってね。(モモコに)正解だったね!

モモコ:アイナが行くより絶対良かったとは思います、「私だな」って。

――なぜ自分で正解だったと思います?

モモコ:初期メンバーだけど、そのときけっこうくすぶってた感じが自分の中であったんです。BiSHはレベルが高いと思ってて、「素人からBiSHに入った私はまだ成長できていないな」ってみんなに対して引け目を感じていた部分もあったんです。その部分が、合宿に行って成長できたかなって思います。

渡辺:合宿が終わってからのモモコを見てて、やっぱり成長した感じもあるし、人気もグングン上がってるっていう噂も聞いた。

モモコ:人気が上がったというか、合宿を見てくれた人が私の素の部分を見てくれて、共感してくれる人が増えたって感じかもしれないですね。

●“全員ブートキャンプ”の1週間

――壱岐島に女の子を閉じこめるし、渡辺さんはやっぱりサディスティックなのかと思いますよね。

渡辺:でも、逆に考えてくださいよ。延々と批判が集まるなかで24時間ずっと怒鳴り続けてるって、苦痛じゃないですか(笑)。だからドMだと思うんですよ。合宿に行く前は憂鬱ですね。やっぱり一週間ずっと気を張ってるし、睡眠時間も全然ないんです。女の子たちが泣きながら相談してくることもありますし。

――渡辺さんたちも明らかにしんどいのに、そこまでしてオーディションをするのはなぜでしょうか?

渡辺:詭弁みたいなもんなんですけど、あの子たちぐらいの年代のとき、自分がどうしたらいいかわかんなかったんです。大人を舐めきってたし、斜めに見てたし。自分が正面からぶつかっていったら、応えてくれる大人がいるってわからなかったんです。「この子たちぐらいはわかってもらいたいな」っていう部分あって。モモコともぶつかって、前よりちょっと話しやすいなって思ってるんです。オーディション自体が自分自身のブートキャンプでもあるんですよね。

――全員ブートキャンプ(笑)。

渡辺:そうそう。「言い訳ばっかしてんじゃなくてやればいいじゃないか」って、女の子に言いながら自分にも言ってるんですよ。

モモコ:私から見たら、渡辺さんがのびのび……してるって言ったらダメなんですけど(笑)、壱岐だから日常とはちょっと違うし、オーディションがすべての世界になるわけじゃないですか。そこで選ぶのは渡辺さんで、渡辺さんの国になるんですよ(笑)。

渡辺:独裁国家だよね。

モモコ:でも、ふだんよりめっちゃ怖いとかはあんまり思わなかったです。BiSHを結成したての4人の頃は、けっこうBiSHと渡辺さんがずっと一緒にいて、バチバチしてたときもあって、その頃の感覚にちょっと似てましたね。距離がいつもよりも渡辺さんと近かったなって。

――オーディションに来た若い子たちについてはどう感じましたか?

渡辺:今まで接してきた子たちより圧倒的に若いんですよね。今までで一番言うこと聞かない奴らが揃いましたね。やっぱり勘違いしてる子たちも多かったし。

モモコ:いやー、どんどんWACKってメジャーになってきてるんだなってすごく感じました。本当に何のアクもない普通の可愛い女の子がたくさんいたので、すごくびっくりしましたね。普通のアイドルオーディションにも行ってそうな子たちから落ちていった感じです。

――撮影しているカメラマンには、AVを撮ってきた人もいるじゃないですか。そのカメラマンの前でどんどん女の子たちが自分語りをするし、もしAVだったらもう挿入されてるよと思うぐらいでした。

渡辺:逆に言うと、映りたい子たちだと思うんでやりやすかったですよね。ただ、カメラを向けたらしゃべってくれる状況にはなるんで、ギアが上がりきらなかった。どこまでやっていいのか、どこまで聞いていいのか、曖昧な感じになってる気がしましたね。カメラマンの人たちも、あまり個々人には興味がわかなかったので、今まで撮ってきたオーディション映画よりも非常に客観的な内容で、そういう意味では冷たくなってる気はします。

●渡辺「誰かに用意された道はない」

――モモコグミカンパニーさんは、映画の序盤で「BiSHに新メンバーが入るかもしれませんね」と言われて、「BiSHに入るのはかわいそう」と言います。あの真意は?

モモコ:私はあの頃はBiSHにいるほうがつらかったんですよ。BiSHは横浜アリーナが待っていた頃なんで(オーディションは2018年3月、横浜アリーナは5月22日)、BiSHが世間からすごく厳しい目で見られてる部分があって。自分を追い詰めてBiSHにいたから、合宿にいるときのほうが「普通の女の子でいても大丈夫だな」みたいな。あの頃は、すごくたくさん頭を使って「どういう風に自分を見せていくか」とか「皆の中で自分は何が特徴なんだろう」とか常に考えてたんで、普通の自分に戻れたっていうのはあります。

――でも、オーディションを受ける子たちの先生にならなきゃいけませんでしたよね。どういうスタンスでいましたか?

モモコ:私は皆に一番近い存在でありたいって思ってて。BiSHではずっと一番教えられる立場できたんで、できない子の気持ちは一番わかるから「ちゃんと教えよう」って。だから対等に向き合おうという姿勢でした。

――モモコグミカンパニーさんが「歌と踊りができれば受かるってものでもないし」って言うじゃないですか。あそこは重要なことを言っているなと思いました。渡辺さんも「何もしなくても残ってる奴いるんですよね」って言っていて、そういう子たちは何が違ったんですか?

渡辺:やっぱり見られる仕事なので、つい目がいくタイプですね。ただ旧BiSで言えば、3、4年で解散してるわけなんですけど、やっぱりそこからサバイブしていくには何もしなくていいわけではなくて、BiSは再結成したし、結局旧BiSの彼女たちは非常に苦しみながらYouTuberを始めて(笑)、紆余曲折あるわけですよ。やっぱり頑張らなきゃいけない部分はあるので、結局誰かに用意された道っていうのはないんですよね。 何もしなかったけど受かった子たちは、そっからはもう本当に頑張らなきゃいけない。

――モモコグミカンパニーさんは、日が行くにつれて自分のチームのメンバーが減っていったわけですが、先生として責任を感じる部分はありましたか?

モモコ:いやー、責任はまったく感じてないです。歌とダンスが課題として用意されて、それを頑張ればいいわけじゃないんですよね。運動会じゃないんで。渡辺さんが残していった子たちは、私も歌とダンスを抜きにしてもわかりました。自分もやっぱり目が行くし、なんか興味が湧く。歌とダンスはできてるのにあんまり興味を持てない子もいたから、そういう子は落ちていったなっていう印象です。

――不思議な映画ですよね、合格者ほど目立たない映画なんですよ。落ちていく人が描かれている。

渡辺:そうなんですよね、実は。

モモコ:本当にそう。

――落ちた子たちが、ふてくされて「渡辺さんは宗教みたい」と言うじゃないですか。あのシーンを渡辺さん見てどう思いましたか?

渡辺:いやー、女の子って面白いなって思いますよね。

――嬉しそうですね(笑)。

渡辺:いやだってさぁ、あの子たちも落とされる前までは「はい! はい! 頑張ります!」とか言ってたのに、いきなり現実に引き戻されるんですよね。まぁ俺はそういうところも可愛いなって思うし。ただ、狡猾じゃないなと思う部分としては、カメラを回されてるんで、そういうやつだってバレちゃったから、もう次のチャンスはないんですよ。そこまで狡猾に考えないと、やっぱりエンターテインメントの世界で生きていくのは難しいだろうなって思います。

(取材・文=宗像明将/写真=池村隆司)

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