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THE KEBABS、キツネツキ、マテリアルクラブ、Cho_Nans…実力派バンドメンバーによる新活動

リアルサウンド

19/1/13(日) 10:00

 結成10年以上20年未満のいわゆる中堅にあたるバンドのメンバーが、母体のバンドとはまた異なる活動をスタートさせるケースがここ1、2年の間で増えてきている。

(関連:キツネツキで菅原と滝が開いた“新たな引き出し” 『こんこん古今東西ツアー』最終公演を見て

 最近では、佐々木亮介(a flood of circle)、新井弘毅(ex.serial TV drama)、田淵智也(UNISON SQUARE GARDEN)、鈴木浩之(ex.ART-SCHOOL)による新バンド、THE KEBABSが話題となった。1月9日に初ライブを開催し、そこでデモCDを販売しているものの、オンライン上で確認できるのは、MVが制作された「THE KEBABSのテーマ」と、公式Twitterで一部公開されているリハーサル時の映像のみだ。現時点では、ストレートなロックンロールバンドという印象。「THE KEBABSのテーマ」は初期のa flood of circleに通ずる泥臭さがあるため、佐々木が書いた曲なのか? と思ったが、<出待ちに関わらない/気安く煽らない>というフレーズには田淵っぽさを感じる。また、リハーサル映像にある「まばゆいpart2」はその曲名自体がserial TV drama「まばゆい」を彷彿とさせるものである。このように、このバンドにはソングライターが複数人いるため、作曲の段階から各人の特色が混ざり合っているよう。全貌はまだ見えないが、かなり興味深いバンドだ。

 今年結成15周年を迎える9mm Parabellum Bulletのメンバーである菅原卓郎と滝善充は、2017年にキツネツキというユニットを結成した。元々は、腕の負傷のためライブ活動を休止していた滝のリハビリとして始まったキツネツキ。そんな経緯があったため、9mmではギターを弾いている滝は、ここでは基本的にドラムを叩いている(そうではないケースもあるが)。隙間なく音をはめるタイプの9mmの音楽とは違って適度な余白のあるアンサンブルも、肩の力の抜けたユーモアを感じさせる歌詞も、ユニット結成の目的を鑑みると合点がいくだろう。1stアルバム『キツネノマド』では中盤に童謡のカバーが3曲連続で収録されていて、そのどれもがとてもよくハマっていたのも面白かった。また、メンバー2名のユニットだからこそ、ライブにおける自由度が高いのもポイント。昨年秋に行ったツアーでは“取り憑かれメンバー”と呼ばれるゲストミュージシャンも参加。公演ごとに参加するミュージシャンの担当楽器が違うため、その日ごとにキツネツキの編成も変わってくる――という偶発性を楽しむような試みとなっていた。

 Base Ball Bearの小出祐介は、2018年9月、マテリアルクラブを始動。福岡晃子(チャットモンチー(済))を制作パートナーに迎え、(ほぼ)はじめてのDTMに挑戦している。Base Ball Bearは、バンドという形態に強い拘りを持ち、メンバー以外の音を入れないことを掟としながら活動を続けてきたが、湯浅将平の脱退を機に挑戦・模索をする過程で打ち込みやシンセサイザーなどを導入するようになった。その集大成的な内容となった2017年夏の日比谷野外音楽堂ワンマン『日比谷ノンフィクションVI~光源~』が、マテリアルクラブ始動のきっかけとなったようだ(参考:「テキスト版 放課後マテリアルクラブ」第1回)。そのため、マテリアルクラブは、バンド活動を通して小出が見出したひとつの可能性を、バンドから切り離したところで体現しているような印象。中学生の頃から日本語ヒップホップを聴き続けていたという小出のラップとリリックが、憧憬の域を完全に超えた、彼ならではの表現になっていることも特筆しておきたい。

 2018年3月にスタートしたメンバー全員が長男のプロジェクト、Cho_Nansも面白い。中心メンバーはamkw(尼川元気/flumpool)、辻村有記(ex.HaKU)、ワカメヒロキ(タナカヒロキ/LEGO BIG MORL)、映像テクニカルディレクターのKNDO、作曲家・編曲家のイト卍ケン、マネージメント兼メンバーのKO_MANTARO。場合に応じて他のクリエイターも参加する。ミュージシャン以外のクリエイターも“メンバー”なのだと公表しているのが画期的な点だ。法田寺(神奈川県川崎市)内で撮影された無観客ライブ映像「Cho_Nans×Houden_Ji」には、彼らの提案する総合芸術としての音楽の在り方が収められている。デジタル要素をふんだんに盛り込んだEDMポップ的なバンドサウンドと、パトランプをはじめとした照明演出が醸すスリルが絶妙に掛け合わさっていて、スタイリッシュな仕上がりだ。MVやアートワーク、アーティスト写真など、アーティストのブランディングにおいて視覚的要素も重要なのだということはもはや自明である。そんな中、Cho_Nansの動きは今後注目を集めていくのではないだろうか。

 以上、4組をピックアップしてみて気づいたことが2つある。まず、THE KEBABS以外の3組は、ゲストを外部から招く形式を採っており、“固定のメンバー”という概念が薄いようだ(THE KEBABSに関しても1月9日のライブではゲストボーカルが登場したようだが)。キツネツキもマテリアルクラブもCho_Nansも、馴染みの深い仲間と長くバンドを続けてきた人が中心人物であるため、バンド外の場所では様々な人と関わり合いながら音楽を作ってみたいという意図があったのかもしれない。その際に、経年のバンド経験で得た交友関係が活かされ、その結果、相互作用・化学反応が多数発生しうる状況が生まれたのだろう。

 そして、この4組の中心人物は、例えばソロ活動・楽曲提供・別ユニットへの参加など、前述の4組とも母体バンドとも異なる活動を行っている人が多い。リスナー側からすると、多作家で、多面的な魅力を持つアーティストにアクセスできるハブが増えたようなイメージであり、これは非常に喜ばしいことだ。

 いずれにせよ、確かな腕と観察眼を持った人たちが、キャリアに甘んじることなく新しいトライに臨んでいる様子を目撃できることは、刺激的であり楽しい。引き続き、この4組の活動に注目していきたいところだ。(蜂須賀ちなみ)

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