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the GazettEはファンを良い意味で裏切り続ける ライブハウスツアー最終日に見たバンドの本質

リアルサウンド

19/4/7(日) 8:00

 the GazettEが、今年2月からスタートさせた『LIVE TOUR18-19 THE NINTH PHASE#03 激情は獰猛』は前代未聞のライブハウスツアーである。2019年の今年、結成17年を迎えようとする彼らが選んだのは目黒鹿鳴館や高田馬場AREA……といった、原点に還るかのような会場だった。誰もが予想していなかったことをやってみせる、そんな良い意味での裏切りは彼らしいところでもある。

参考:the GazettEが表現する、研ぎ澄まされた狂気 さらなる深化を遂げた『NINTH』ツアー“第2層”レポ

 そして、3月10日に結成17年を迎えたばかりの20日、渋谷TSUTAYA O-EASTにてツアーファイナルを迎えた。

 SE「99.999」が不穏に鳴り響く中、それぞれの持ち場に向かうメンバーの足取りはいつになくゆっくりでリラックスしているように見えた。張り詰めた緊張感が支配するこれまでのオープニングとは少し違う雰囲気にも思えた。最後にステージに現れたRUKI(Vo)が右手を大きく旋回させると、けたたましい重低音が轟く。不意を突くような「Falling」でライブは幕を開けた。

 ツアータイトルの『PHASE#03』とは“第3層目”という意味だ。アルバム『NINTH』自体が“第0層目”である、リリース時にそう語っていたRUKIの言葉から、「重なっていくもの」だと勝手に思い込んでいた。しかし、蓋を開けてみれば違っていた。昨年7月からのホールツアー『PHASE #01-PHENOMENON-』、11月からのスタンディングツアー『PHASE #02-ENHANCEMENT-』、そして今回のライブハウスツアー『PHASE #03 激情は獰猛』と、気がついてみればだんだん深層へと導かれていた。the GazettEは“魅せる”ことについて徹底的な美学を持っているバンドである。演奏やサウンドはもちろんのこと、演出や照明においても一切の妥協を許さない。そうした意味で、前回観た『PHASE #02-ENHANCEMENT-』のCLUB CITTA’川崎公演は完成度ともに圧巻だった。そんな彼らが、本ツアーでは何を魅せてくるのだろう。

 始まると、オープニングの空気感がそのまま投影されていくようなライブ運びだった。余裕とでもいうべきだろうか。「NINTH ODD SMELL」も「GUSH」も、幾度なく聴いてきたナンバーはロックバンドとしての真髄が垣間見えるような出来栄えとなっている。彼らの武器とする重厚なサウンドを軸に、屈強なアンサンブルには貫禄が漂う。獣のように咆哮するRUKIもどこか確かな手応えを感じているようだった。ツアーで重ねてきた経験……演奏自体は元より、ファンとともに作り上げてきたものを確かめ合う、そんな風にも思えた。いつもより距離の近い空間と、必要最小限になった舞台演出と照明がそれを強調させる。しかし、油断をしていると大怪我をしてしまう。それがthe GazettEというバンドだ。迫り来る鳴動も激情も獰猛なのだ。

 「VORTEX」「GABRIEL ON THE GALLOWS」 、無機質に反復するシーケンスに抗うように乱れ打つ戒(Dr)が扇動し、悠々と舞うような佇まいで重厚なリフを掻き鳴らす葵(Gt)と、華麗に、ときに突飛にフレーズをはじき出していく麗(Gt)。エッジィでソリッドなサウンドが猛り狂い、フロアのオーディエンスは高く挙げた腕と頭を振り乱して応える。

 馬の蹄が大地を抉るようにフロアタムが打ち鳴らされる。大きく脚を広げ、低く身構えたREITA(Ba)が右手中指を舐めた。凶暴なパンキッシュナンバー「裏切る舌」だ。そこから、蠢くグルーヴが地を這いずり回っていく「BABYLON’S TABOO」へ。艶っぽく歌いきったRUKIの左胸を一筋の赤い光が撃ち抜く。その光はやがて染まっていく血のように……いや、侵食していく生命体であるかのごとくRUKIの身体を蝕んでいくと、葵が淡々と印象的なアルペジオを爪弾き、「痴情」へと流れていった。

「なんかさ、今日は叫び声がイカついっすなぁ」

 熱気冷めやらぬ声援が溢れ出すフロアを見渡しながら、RUKIが満足気にそう口にすると、起爆ナンバー「HEADACHE MAN」で後半戦をスタートさせる。そのまま「TWO OF A KIND」「UGLY」、と極悪ヘヴィチューンを叩き込み、「その様子だと、まだまだやれるだろう?」「もっと、もっと、やれるだろ! トーキョー!!」などと、容赦ない煽りとともに会場は混沌の坩堝と化し、ラストの「UNFINISHED」まで怒涛の勢いで一気に駆け抜けた。

 「かかってこい!!」戒のオフマイクの叫びで始まったアンコール。楽器隊4人だけによる「GO TO HELL」だ。センターマイクで挑発的にシャウトするREITAに、全力の掛け声で応戦するオーディエンス。またその声を全身で受け止めながら、緩急を付けたアンサンブルで魅了していく4人…… そんな絶妙な関係性がせめぎ合っていく空間は、先ほどまでのカオスティックな様相とは打って変わってピースフルである。

 ちょっと奇妙で妖気なダンスチューン「SWALLOWTAIL ON THE DEATH VALLEY」のあと、「この曲を平成最後のライブに送るぜー!」と紹介されたのは、“大日本異端芸者”時代のナンバー「[DIS]」。〈「平成」時代事態変えろ 〉の“犯行声明文”が何度も何度も会場にこだました。

「まだまだ暴れ足りねぇんじゃねぇのかよ!! ラストォーー!! 関東ォォォォーーッ!! ……土下座ァ(小声)」

 今日はツアーファイナルだ、これがないと終われないと言わんばかりに予定外のダブルアンコール「関東土下座組合」。これでもかというほど振り乱れるヘドバンの嵐と人波を泳ぐダイバーで埋め尽くされたフロアを前に、ステージのメンバーも負けじと頭を振る。轟音と狂乱にまみれながらボルテージは最高潮に達し、ライブは終演へ……と思ったとき、RUKIが再び口開く。

「ラスト、春雪の、」

 タイトルを言い終える前に、悲鳴のように湧き上がった歓声。インディーズ時代のアルバム未収録曲であり、まさに隠れざる名曲「春雪の頃」だ。狂喜乱舞するオーディエンスを見ながら、したり顔で演奏するメンバーたちが印象的だった。こうして『LIVE TOUR18-19 THE NINTH PHASE#03 激情は獰猛』は終幕した。次なる“第4層目”は、アメリカ、ヨーロッパ、ロシア、アジアを回る海外ツアー『WORLD TOUR 19 THE NINTH PHASE #04 -99.999-』だ。「何倍もデカくなって帰ってくるんで」……RUKIはMCでそう言っていた。今度、彼らを観られるのはいつになるのだろう? 会場に居る誰もがそう思っていた時、突如降りてきたスクリーンにて、とある告知がされた。

 『LIVE TOUR18-19 THE NINTH TOUR FINAL「第九」』2019年9月23日、横浜アリーナ――。

 ベートーヴェンの『交響曲第9番』=“第九”が響く中、長きに渡るアルバム『NINTH』のツアーファイナルの発表だった。会場がまさに歓喜の歌に包まれた光景。思い返せば今から約11年前の2008年11月15日、新宿ステーションスクエアにてシークレットのゲリラライブを行ったときも『第九』が鳴り響いていた。その荘厳な響きはthe GazettEに似合う。

 『NINTH』はこれまでのthe GazettEの集大成ともいうべきアルバムだ。その世界観を体現するようにツアーを重ねてきた。今回の『PHASE#03』は、この日のRUKIの言葉を借りれば「自分たちが成長してきた姿、歩んできた道を見せていきたい」という想いで、バンドを始めた頃の会場を選んだという。「ホールでもライブハウスでも、どちらも似合うバンドでありたい――」口にすることは容易であるが、それをきちんと証明したツアーであった。アリーナであっても、海外であっても……、この先どこに行ってもバンドの本質は変わらない、そう確信した。

「まずは俺たちとお前らが、この時間を共有できていることに感謝」

 いつもライブで発せられるRUKIのこの言葉は、ただの決まり文句ではないのだ。(冬将軍)

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