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『キンプリ』は日本の映画界に広がる“応援上映”の先駆者的存在? 観客を巻き込むための様々な工夫

リアルサウンド

19/4/7(日) 12:00

 『KING OF PRISM』シリーズの最新作である『KING OF PRISM-Shiny Seven Stars-』が3月2日より全4章で順次公開されている。

参考:『キンプラ』はなぜ「応援上映」が好まれる? ファンが共有する刹那のきらめき

 もともとテレビアニメ化もされたアーケードゲームである『プリティーリズム』の公式スピンオフ作品であったが、女性向けのアイドルアニメとして単体でも大人気となり『キンプリ』の愛称でも知られ、劇場作品も2作品公開されている。

 今作を語る上で外すことのできないのが“応援上映”の存在である。2018年で最大のヒットを記録した『ボヘミアン・ラプソディ』の人気を盛り上げる要因にもなり、現在の映画文化を語る上では絶対に欠かすことのできない上映形態であるが、これを認知させ、定着させたのは本作の大きな功績と言えるだろう。”応援上映”そのものが注目を集め出した当時は、テレビなどの各メディアでも奇異な視線を向けられたが、今では特に音楽映画では応援上映がつきものという状況になってきたようにも感じる。

 しかし、この応援上映という形態は映画館に向いている一方で、作品を選ぶ一面もある。『ボヘミアン・ラプソディ』は応援上映がうまくハマった作品だ。映画内の楽曲はすでに日本でもよく知られたQUEENの既存の楽曲であるため、知名度も高い上に予習がすぐにできる。またQUEENは「We Will Rock You」のように手拍子、足拍子だけで観客をのせる楽曲もあり、一体感を演出することに非常に長けたバンドでもあった。

 最も盛り上がる『LIVE AID』のシーンは当時のQUEENの演奏風景を完璧に再現しており、観客は映画の中の観衆としてフレディ・マーキュリーが煽るように合いの手や歓声をあげれば、たちまち劇場内がライブ会場となり一体化し、独特の高揚感を得ることができる。

 一方で応援上映に向いているとは言いづらい作品もある。同じ2018年を代表する大ヒット音楽映画でも『グレイテスト・ショーマン』はあまりみんなで一緒に歌うには適しているとは言いづらかった。これは当然のことであるが、基本的に『グレイテスト・ショーマン』をはじめとする多くの映画は応援上映のために作られていない。手拍子や掛け声などで参加することはできるが、観客の存在はもともと考慮されていないために、観客を巻き込むような楽曲は決して多いとは言えない。また英語のミュージカル音楽をみんなで一緒に歌うというのは一般的な日本人にはハードルが高いのではないだろうか。

 応援上映を一気に広めた『KING OF PRISM』シリーズは、多くの観客を巻き込むために様々な工夫が凝らされている。ライブシーンでは合いの手や歓声を入れやすいように間を作ったり、あるいは少し過剰なギャグ描写を入れて、観客がそれに突っ込んだりしている。またキャラクターと擬似的に会話ができるように恋愛シュミレーションゲームのように女性のセリフは文字で表現しており、観客はそのセリフを声に出して読み上げると、男性キャラクターがそれに応えてくれるという形になっている。これらの工夫は例えば発声のできない通常の上映や、自宅での鑑賞時には違和感となる可能性もあるが、応援上映で鑑賞すると会場内で一体感が生まれて独特の高揚感が得られる形となっている。

 本作はテレビアニメで放送される同名作品を全4章で劇場上映するものだ。近年では『劇場版 響け!ユーフォニアム~届けたいメロディ~』のようにテレビアニメの総集編であっても再構成の結果、1作の映画としても高い評価を受ける作品も増えているが、今作の場合はテレビアニメをそのまま3話ずつ分割し、上映するという形態を取っている。

 それでは家でテレビアニメとして鑑賞すればいいではないか、という声もあるかもしれない。しかし、上記のような応援上映でなければアイドルとして活躍するライブシーンであるプリズムショーにおいて、観客が振るサイリウムが劇場内でも同じような煌めく光景が広がり、各キャラクターを応援し、劇場内で一体化するライブ感を味わうという今作の最大の魅力を感じることは難しいだろう。

 今作ではそれぞれのキャラクターの過去や、アイドルを目指すことになったきっかけが明かされているが、そちらも世襲制の問題や継承される思いなど、社会的な一面も反映されている。例えば4話においてマダガスカルの現地民が「この自然を残しておけというが、それは発展しないでいいということか? 我々も便利な生活が欲しい」というセリフには観客である私もドキリとさせられた。また5話においては歌が下手であり替え玉を使っているという設定を持つ、コミカルな一面が強調されている敵役の高田馬場ジョージの意外性のある一面が明らかになる。誰でも強い思いと努力を重ねればアイドルを目指せるというメッセージが発揮されていた。

 そしてアイドルとはどのような存在なのか? というキンプリの持つテーマも全体を通して表現されており、それぞれのキャラクターがそれぞれのアイドル像を見つけて精進していく姿に、青少年たちの成長ドラマの魅力も感じさせられる。

 ライブシーンを語る上で欠かせないのが今作のプリズムショー演出を担当する京極尚彦の存在だろう。『ラブライブ』などの大人気アイドルアニメのライブパートシーンや、韓国の人気アイドルグループであるTWICEのMVのアニメパートなどを製作し高く評価されており、3DCGの表現と手書き表現の融合などが大きな快感を呼ぶ演出となっている。時にはケレン味に満ちた、エキセントリックな演出も目立つものの、それが本作の大きな味となっており、アニメでしかできない表現となっている。

 アニメ界ではもともと100%応援上映となっている作品たちがある。『プリキュア』シリーズなどをはじめとする、幼児・児童向けアニメだ。これらの作品は劇場で配られる専用のアイテムを振りながら大きな声をあげてキャラクターを応援する様子は、端から見ていても可愛らしさもあり1つの作品を大勢で鑑賞する映画館ならではの光景である。

 近年は配信限定作品などでも話題作が登場する中、応援上映などの“映画館でしか味わえない体験”にお金を払う時代に少しずつ変化しつつある。その先駆者として多くの挑戦を行う本作の魅力を、ぜひ劇場で体験してほしい。

■井中カエル
ブロガー・ライター。映画・アニメを中心に論じるブログ「物語る亀」を運営中。

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