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宮下遊、初ワンマンライブで見せた模倣不可能な神秘的個性

リアルサウンド

19/4/6(土) 17:00

 声色を使い分けるのに加えて、ハイトーンボイスを極限まで歌い抜くリアルな宮下遊の姿がそこにはあったーー絵を描くことで培われた能力が表現する歌の世界に彩りを与え、ひいては目の前にいる観客を自身の描いた世界へと連れていくことを可能にしているのが目に見えてわかるような、決して画面越しでは見れないライブだった。

 昨年歌い手活動10年の節目を迎え、神秘的な存在感を放ってきた宮下遊が、2ndアルバム『青に歩く』をひっさげた初めてとなるワンマンライブを3月31日に新宿ReNYで開催した。


 会場一帯がペンライトの光で凛とした青に染まり、森の中かと錯覚させるような不穏なBGMが流れていたが、「テレストテレス」のイントロが鳴った瞬間、観客の声が上がる。赤いステージ幕が徐々に上がることで足元から見える形で表れたのは、サポートメンバーのマロン菩薩(Gt)、松ケ谷一樹(Ba)、杉崎尚道(Dr)、そして宮下遊。目に飛び込んできたのは、遊の豪勢な出で立ちだ。王のように風格のある衣装を纏い、メッシュを入れた髪に髪飾りを付けた姿は、自身が描いたメジャー1stアルバム『紡ぎの樹』のジャケットの人物を再現していて、この日のライブがここまでの活動を祝した意味合いが強いことを認識せずにはいられなかった。思えば、BGMでは‟樹”を匂わせ、セットリストには‟歌ってみた”を挟むなど、活動初期からのファンから、最近知った人までもが喜べる演出がそこかしこに盛り込まれていた。


 点滅する鮮やかな照明に囲まれた遊は妖艶なウィスパーボイスを繰り広げていく。「青年よ、疑問を抱け」に続いたのは、ステージを幻想的な空間にした「少女レイ」。夕日を象徴したような照明下で足元に視線を向けていた遊が顔を上げ、観客に拍手を求める。ステージ後方と観客の間を行き交う照明も幻想的な空間を作り出し、遊の潤った美声をより映えさせていく。


 「今日は僕の初のワンマンライブに来てくれてありがとうございます! すでに感無量なんですけどこんなに沢山来てくれて本当嬉しいです」と感謝の意を告げると、会場は赤に染まり煽情的で毒気のある「コウカツ」をはじめとしたロックチューンへ。変幻自在に自らの声を操ることで定評のある遊だが、「アイアルの勘違い」では、溜息の箇所などブレスを意識した繊細な歌声を聴かせる。また、ハイトーンボイスが印象的な大サビを勢いのまま歌い抜いたのが印象的だった。音源の空気感をそのままに、テクニカルな呼吸法が加わった歌声を放つ姿に、彼がリアルに歌っているのを身をもって実感できた観客は多かったはずだ。

 気品があるサウンドの「ONE OFF MIND」では松ケ谷の横に置かれたウッドベースが要となった。『紡ぎの樹』に収録されている同曲は、様々な声の表情が四方八方から立体的に聴ける曲だが、音源さながらに遊び心を混ぜることで聴かせ、続く「Fool Definition」は、抑えのきいた低い声で歌い進めることで観客をさらにディープゾーンへ落とし込む。


 MCでは衣装の感想を聞きたいあまりに一回転したところで観客から「かわいい!」と声が上がる場面もあった。「ライブの準備といえば絵描いた記憶しかないんですよ。今回のライブ沢山絵描いたなーって感じ」と以前語っていた彼にとっては歌うことは絵を描いている感覚に近いようだ。(参考「ナタリー」:絵を描くように歌うボーカリストが向かう先)故に宮下遊の声の表現力は他の歌い手とは異質なものなのかもしれない。彼には模倣不可能な神秘的個性がある。だからこそ強く慕うコアなファンが多いのも事実だろう。

 女性のような甘美な声を出し、きくおの変拍子を取り入れた音楽と相性がいい「愛して愛して愛して」、「舞台性ナニカ」では、マイクスタンドに手を掛けた遊が、ファルセットを使って艶やかな世界観を作り出すことで、観客はみるみる歌に引き込まれる。「一緒に歌って」と声を掛け、お立ち台に足を掛けて力強く歌った「ロキ」、心を溶かすように含みを持たせ歌った「メルティランドナイトメア」、様々な声色が飛び交った「アンノウン・マザーグース」で盛り上がりを見せた後は、「僕が投稿を初めてから10年経ってここまで来れたのは本当に嬉しくて泣いちゃいそう。10年やってると自分よりあっという間に先に行く人が本当にたくさんいて……でも自分ができることって限られてるから自分なりにできることを重ねていったら、ようやくここまで来れたんでね、このままもっと大きいところまでいけたらなって思ってる。今ここにいる人は‟宮下遊の最初のワンマンに行ったんだよ”って言えるんだよ。それを楽しみに今後も僕を応援していってほしいなと思います」と感慨深げに伝えた。

 「炎」からの流れは赤い照明によって遊が炎の中で喚いているように見えた。全面青に染まった「青へ向かう」では、丁寧に手を伸ばす姿が印象的で、その手の先には遊にしか見ることのできない幻想的な世界が描かれているのだろうと想像すると同時に、このライブからが旅の始まりだと言わんばかりのオーラがあった。アンコールにはグッズのTシャツを着たメンバー達が登場。「夜の反芻は空白を待つ」を軽やかに歌い上げ、「ありがとうございました! 追加公演で会いましょう!」と笑顔でいうと、観客に手を振る遊がサポートメンバーを引き連れるようにして、ステージを去った。幻想的な世界を魅せ、潜在力の高さを示した遊は、さらなる地へと羽ばたいていく。

(写真=小松陽祐(ODD JOB))

■小町 碧音
1991年生まれ。歌い手、邦楽ロックを得意とする音楽メインのフリーライター。高校生の頃から気になったアーティストのライブにはよく足を運んでます。『Real Sound』『BASS ON TOP』『UtaTen』などに寄稿。
Twitter

■公演情報
宮下 遊
1stワンマンライブ ・ 追加公演
『青に歩く / 水の狭間』
2019年5月11日(土)
TSUTAYA O-EAST
OPEN16:00/START17:00
出演 : 宮下 遊
Guest : かいりきベア、てにをは
◆チケット券種・料金
スタンディング(整理番号付) 4,000円(税込)
※3歳以上有料
※ドリンク代別途必要
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