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安藤政信が語る、メジャー作品にもインディーズ作品にも出る理由 「振り幅として考えると面白い」

リアルサウンド

18/7/26(木) 6:00

 映画『スティルライフオブメモリーズ』が7月21日より公開された。『三月のライオン』『無伴奏』の矢崎仁司監督が、フランスの画家・写真家アンリ・マッケローニにインスパイアを受け制作した本作は、新進気鋭の写真家・春馬と、春馬に自分の性器を撮るように依頼するミステリアスな女性・怜、そして春馬の恋人・夏生の関係性を描いた作品だ。

参考:安藤政信、映画俳優として再ブレイクの兆しーー40代、肉体を捧げる演技の色気

 今回リアルサウンド映画部では、主人公・春馬役で主演を務めた安藤政信にインタビューを行った。安藤自身が「言葉で説明するのは難しい」と言う本作について、出演の経緯や作品の印象を語ってもらいながら、『劇場版コード・ブルー -ドクターヘリ緊急救命-』(7月27日公開)のような大作と本作のようなインディーズ作品の違いや役者としての意識の変化などについても話を聞いた。

――安藤さんが矢崎監督の作品に出演するのは2006年の『ストロベリーショートケイクス』以来12年ぶりとなりますね。今回はどのような経緯で出演することになったのでしょうか?

安藤政信(以下、安藤):矢崎さんが僕を探し当ててくれたんです。2年前ぐらいに、以前所属していた事務所を辞めてふらふらしていたときに、矢崎さんが僕を探しているというのを風の噂で聞いて。そこから実際に矢崎さんに久々に会って、どんどん話が進んでいってという流れでした。『三月のライオン』の頃からずっと矢崎さんの作品が好きなので、断る理由もないし、是非やりたいですと。

ーー脚本にはどのような感想を抱きましたか?

安藤:こうやって取材を受けていると感じるんですけど、内容が内容なだけに、この作品は本当に説明が難しくて……。どうやって質問したらいいかも分からなくないですか?

ーーまさにその通りです。言葉を選びつつ……(笑)。

安藤:ですよね(笑)。完成した作品を観ても思ったんですよ。これは聞く方も話す方も取材は難しいだろうなって。でも、僕が演じた春馬はカメラマンという設定なので、自分はカメラもやるし写真もすごく好きだから、脚本を読んだときに結構共感はできたんですよね。現実とはちょっと違う、不思議な世界に連れて行かれるような作品だと思います。それがPENTAX67の鋭いシャッター音によってまた現実に引き戻される。そこがものすごく印象的でしたね。

ーー作品の基になったアンリ・マッケローニのことは知っていたんですか?

安藤:この作品をやるとなって初めて知りました。僕は正直、写真として好みではなかったんですよね。でも、彼の写真というより、彼が実際に2年間、愛人の性器を撮り続けていたことに興味を惹かれて。どういうことなんだろうと考えながら、ずっと向かい合っていました。

ーー春馬が怜の性器を撮るシーンは、いわゆる普通のラブシーン以上にエロティシズムに溢れていました。撮影に臨むにあたって、恥じらいやためらいはありませんでしたか?

安藤:それは全くなかったですね。役になってしまえばもう恥じらいもためらいもないし、その期間はずっと性器に向かっていましたから。そのときは何を見ても性器に見えるぐらいまでいってしまっていたぐらいで。ツァイ・ミンリャンの『無無眠』もそうでしたが、自分の全てをさらけ出すことに対して抵抗はないんです。ツァイ・ミンリャンの作品も矢崎さんの作品も、“感じる映画”なので、なかなか言葉では説明しにくいんです。だからもう観てくださいとしか言えないですね。

ーー安藤さんは映画のみに出演している時期や中国で活躍している時期もありましたが、最近は『コード・ブルー -ドクターヘリ緊急救命-』シリーズなどメジャー作品にも出演していますね。何か役者としての意識の変化があったりしたのでしょうか?

安藤:断るのも面倒くさいからやってみようかなと思っただけで(笑)。これまで、役者仲間から直接「こういう企画があるんだけど、どう?」と言われたりすることもあったんです。20代とか30代の頃は、人付き合いもあまりしたくないし1人でいたいから、本当にやりたいことだけをやっていた時期もありました。でも、30代後半ぐらいからガラッと気持ちを変えて、自分を必要としてくれていることに対してもっと寛容的になって、何でも受け入れてやってみたいなと思うようになったんです。

ーー実際にいろいろやるようになって、得るものも増えてきたと。

安藤:もちろん全ての作品が10割なんてことはあり得ないですけどね。自分がやった作品で本当に良かったなと思えるものもあれば、そうでないものもある。でも、やる前に断って経験できないよりは、どういう結果になろうと実際にやった方が確実に感情的には豊かになると思うんですよね。

ーー映画やドラマ、メジャーやインディーズなども関係なく?

安藤:そうですね。でも、大きい作品の方が面白い感じはしますよ。例えば、『劇場版コード・ブルー』を観る人たちの中に、矢崎さんやツァイ・ミンリャンの作品を観る人がいるかといったら、ほとんどいないわけじゃないですか。逆に、矢崎さんやツァイ・ミンリャンの作品を観る人たちが『劇場版コード・ブルー』を観たら、「え?」と思うかもしれない。そういうことも含めて、振り幅として考えると面白いなって。今までは本当に1年に1本ツァイ・ミンリャンの作品だけに出たり、真面目に考えすぎて立ち止まったりしたこともありましたけど、最近はもう、無責任に楽しんじゃえばいいのかなって。『劇場版コード・ブルー』も『スティルライフオブメモリーズ』も、同じ映画で、同じ映画人で、同じ業界なのに、実際は全く違う、別次元なわけですよ。そのどちらにもハマれる自分は単純に面白いなって最近本当に思うんですよね。

ーーそう思うようになったのには、何かきっかけがあったんでしょうか?

安藤:最近、竹中直人さんと同じ事務所に入ったんですけど、その影響は大きいですね。竹中さんは本当に仕事を選ばずに、来た仕事をちゃんとやる。それがプロフェッショナルでカッコいいなと思ったんです。インディーズ映画だって選ばれた人にしかできないわけですけど、テレビに出たりメジャー映画に出たりするのは、それ以上に選ばれた人にしかできないわけで。大衆的な作品の方が責任感は強いんです。テレビドラマにしたって、“わかりやすい芝居”が求められるわけですけど、それって実はものすごく難しいことなんです。だから誰に何と言われようと、自分はどっちも大事にしていきたいなと、今はそう思ってやっています。

ーー安藤さんがメジャーとインディーズの架け橋的な存在になるかもしれませんね。

安藤:そうなるといいですよね。わかりやすく提供するのがドラマやメジャー映画だとしたら、今回の『スティルライフオブメモリーズ』は本当にどう話したらいいのかわからないような作品で。観た後に「あれどうだった?」と誰かと話し合えるのが映画だなと思うんですけど、僕はこの作品を観て、本当に「映画っぽいな」と思ったんですよね。脚本を事前に読んでいる自分も展開が読めなくて、まるで北野武監督の『3-4X10月』を観ているような感覚でした。自分たちが90年代にやってきた映画って、こういう作品が多かったなって。

ーー確かに90年代的な懐かしさは感じました。

安藤:分かりやすい映画に慣れている人がこの作品を観たら、もしかしたら意味が分からなかったり、すごく退屈だと思ったりするかもしれません。それでも、風景と時間と空気を楽しむ、“感じる映画”になっていると僕は思うんです。例えば、京都に行って借景を見て感動するのと同じような感覚かもしれません。庭は何も説明してくれないけど、そこで風が吹いたり、池の波紋が広がったりすると、表情が変わった印象になる。その瞬間瞬間を、まさに写真のように切り取って、107分に繋げた映画だと思います。(取材・文・写真=宮川翔)

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