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ぴあ

いま、最高の一本に出会える

安藤サクラから朝ドラのバトンを受け取った柄本佑 『なつぞら』に活気を与える存在に

リアルサウンド

19/4/25(木) 6:00

 朝ドラ『なつぞら』(NHK)に、ヒロイン・なつ(広瀬すず)の通う農業高校の教師役として姿を見せる柄本佑。大好評であった前クールの朝ドラ『まんぷく』のヒロインは、彼の実の妻・安藤サクラであり、今回バトンを受け取るかたちでの出演となった。

【写真】柄本佑と安藤サクラが夫婦で表紙を飾る

 そんな柄本が演じているのは、演劇部の熱い顧問の先生・倉田隆一だ。本作は、戦災孤児の少女・なつが十勝の大地にやってきて、酪農の世界で奮闘し、やがて彼女がアニメーションの世界に挑戦していく物語であるが、演劇への情熱を燃やす人物というものは、一見してあまり関係ないように思える。しかし彼が、十勝の酪農家たちの間に横たわる問題に立ち向かうなつを、“演劇”によって導こうとしているのだ。

 妙に理屈っぽく、終始気難しい表情を浮かべる倉田先生。この『なつぞら』が“高校生パート”に入ってからというもの、ある種の“活気”が生まれ、作品の感触が変わってきた。これを生み出しているものの一端が、なつの幼馴染み的な存在の雪次郎(山田裕貴)ら演劇部の連中であり、彼らを束ねているのが倉田先生なのだ。つまり彼は、ドラマとしての一つの展開を支えている存在とも言えるのである。

 本作のように、脇役ではあるものの、重要な役どころを担うことが多い柄本。これまでを振り返ってみれば、『空気人形』(2009)や『人間失格』(2010)、近年であれば『GONINサーガ』(2015)に『追憶』(2017)などの作品が浮かぶ。そして彼は、多くの映画ファンを魅了しているように、主役としての器の大きさも多岐にわたる作品で発揮している。昨年公開された『素敵なダイナマイトスキャンダル』『きみの鳥はうたえる』の二作での、“映画の顔”となっていた姿も記憶に新しい。とくに後者では、「第73回毎日映画コンクール」と「第92回キネマ旬報ベスト・テン」で、妻の安藤とともに主演賞を受賞。押しも押されぬ演技派カップルとして、まず名の挙がる存在の二人だろう。

 また柄本は、今年は朝ドラだけでなく、大河ドラマ『いだてん~東京オリムピック噺~』(NHK)にも顔を見せる。単発ドラマへの出演はたびたびあるものの、どちらかといえば彼は“映画俳優”としての印象が強い。だが、同じように映画女優としての印象の方が強かった安藤も、朝ドラでお茶の間の人気者にもなったばかりだ。ここに関しても、バトンがうまく受け渡されることとなれば愉快である。

 そして、“柄本佑と演劇”という関係性で面白いのが、やはり彼が演技者の家系で生まれ育ったということだ。柄本明、故・角替和枝という演劇人を両親に持ち、弟の時生とは、兄弟で演劇ユニット「ET×2」を結成。映像作品で忙しく立ち回る傍ら、たびたび舞台にも立っているのだ。つい先頃、2017年に父・明を演出に迎え、サミュエル・ベケットの『ゴドーを待ちながら』に親子で挑んだ過程が収められたドキュメンタリー『柄本家のゴドー』が封切られたばかりだが、この公開タイミングもまた非常に愉快なものである。本作ではもちろん柄本は指導者ではなく、父に“シゴかれる”立場であり、『なつぞら』でなつを“シゴく”彼の姿とあわせて観ると、実に感慨深いものがあるだろう。

 情熱的で、口にする言葉はいちいち小難しく、だけれども魅力的な倉田先生を演じる柄本佑。まだ“高校生パート”とあって、今後も彼がなつのアドバイザーとなることも多いのではないだろうか。ひょっとすると、やがてなつが進むアニメーションの世界の“物語のいろは”を、倉田先生から密かに学んでいるのかもしれない。そんなことに思いを馳せてみるのも、また一興ではないだろうか。

(折田侑駿)