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いま、最高の一本に出会える

『グレイテスト・ショーマン』の世界はさらに広がる 豪華アーティスト参加カバーアルバムの魅力

リアルサウンド

19/1/26(土) 16:00

 アメリカでは2017年12月に公開され(日本では昨年2月)、世界中で大ヒットを記録したヒュー・ジャックマン主演のミュージカル映画『グレイテスト・ショーマン』。そのサウンドトラックを豪華アーティストがカバーしたアルバム『グレイテスト・ショーマン:リイマジンド』が大きな話題となっている。

 19世紀に活躍した興行師、P・T・バーナムの成功を描く、このミュージカル映画の魅力は、なんといってもその音楽だ。作品の中で、サーカス団の「髭女」役を演じた、当時ほとんど無名だったミュージカル女優キアラ・セトルが歌う「This Is Me」は、第75回ゴールデングローブ賞主題歌賞を受賞、第90回アカデミー賞主題歌賞にもノミネートされた。サントラそのものも、全米ビルボードのトップ10に31週にわたってランクインされ(5週連続ナンバーワンにも)、日本でもiTunes週間アルバムランキングで8週連続1位をキープしたほか、各チャートで軒並み1位を記録。全世界の総合アルバムセールスでは400万枚を突破するなど、大きな快挙を成し遂げている。

 本作の作詞作曲を担当しているのは、パセク&ポールことベンジ・パセックとジャスティン・ポール。共に1985年生まれという若さでありながら、トニー賞のミュージカル部門作品賞にノミネートされた『クリスマス・ストーリー』や、リバー・フェニックスの主演映画を舞台化した『ドッグファイト』の楽曲を手がけるなど、すでにブロードウェイでは大きな活躍をしているコンポーザーチームである。日本でもその名が知られるようになったきっかけは、やはり映画『ラ・ラ・ランド』だろう。さらに、公開が控えているディズニーアニメの実写版『アラジン』でも、2曲を提供するなどまさに飛ぶ鳥を落とす勢いの2人だ。

 さて、今回のカバーアルバム『グレイテスト・ショーマン:リイマジンド』が作られた背景には、アメリカのセレブたちがこぞってこの映画を話題にしたというエピソードがあった。例えばセレーナ・ゴメスが自身のSNSで「This Is Me」を“歌ってみた”り、Panic!At The Discoがラジオ番組で、「The Greatest Show」を歌い出したり、P!nkもSNSでサントラについて投稿するなど、とりわけ音楽の魅力について惜しみない賛辞を送っていたのだ。映画の中ではヒュー・ジャックマンをはじめ、ザック・エフロンやミシェル・ウィリアムズ、ゼンデイヤらが歌うパセク&ポールの楽曲は、スーパースター級のミュージシャンでさえ思わず自分たちでも歌いたくなってしまう魅力に溢れていたということだろう。

 本作『グレイテスト・ショーマン:リイマジンド』には、上述のアーティストが多数参加している。アルバムの冒頭を飾る「The Greatest Show」を歌うのは、もちろんPanic! At The Disc(同曲は、音楽アプリYouTube MusicのCMソングとして使用されている)。また幼い頃、『アニー』や『レ・ミゼラブル』、『オペラ座の怪人』などミュージカル映画のサントラを聴いて育ったというP!nkは、愛娘ウィロー・セージ・ハートと共に参加し「A Million Dreams」「A Million Dreams(Reprise)」をそれぞれ歌っている。 「アルバムを作るとき、単に有名セレブや売れそうなミュージシャンをかき集めるようなことはしたくなかった」と、制作エピソードについてジャスティン・ポールは語る。「例えばSNSに投稿してくれるような、映画やその音楽に“繋がり”を感じてくれる人が良かったんだ。おかげで、まるで一つの家族のようなアルバムを作ることができたよ」

 本作に収録されたほとんどの楽曲は、オリジナルにほぼ忠実なアレンジを施している。それだけに、本作に参加した各シンガーの個性が際立ち、オリジナルとはまた別の魅力を楽曲の中から引き出すことに成功しているのだ。「Never Enough」(オリジナルはミシェル・ウィリアムズ)を歌ったケリー・クラークソンは、レコーディング時のエピソードを以下のように振り返っている。

「最初のテイクでは、“こんな風に歌ってほしいんだろうな”と思うスタイルで歌ってみたの。でもそのあと、“ちょっと違うことも試していい?”って聞いて、一つ大きなハイノートにチャレンジした。そうしたら“すごくいい! それでいこう!”って。ベンジもジャスティンも、私がこの曲に対する解釈について、最大限リスペクトしてくれたことをとても感謝しているわ」

 そんな中、もっとも冒険的なアレンジだったのは、ジェス・グリンとイヤーズ&イヤーズによる「Come Alive」(オリジナルはヒュー・ジャックマン、キアラ・セトル、ゼンデイヤ他)と、キアラのオリジナルボーカルにケシャのボーカルとミッシー・エリオットのラップを加えた「This Is Me」の“The Reimagined Remix”だ。「Come Alive」は、トライバルでドラマティックな元曲を、イヤーズ&イヤーズお得意のエレクトロ・ファンク調に料理。一方「This Is Me」は、キアラとケシャのパワフルなデュエットと、ミッシーのクールなラップの応酬というスリリングかつ感動的な仕上がりとなっている。

 「僕たちが、新たにこのカバーアルバムを作りたいと思ったのは、楽曲のメッセージをより多くの人々に届けたかったからだ」とベンジ。「すでに僕たちは、キアラの歌う『This Is Me』がどれほど多くの人々に“声を上げる勇気”を与えてきたかを知っている。それは作曲家として最大の名誉だよ」

 音楽は、作者やシンガーの手を離れた時に、初めて“オーディエンスのもの”となり、人々の心の中で育っていく。インターネットやSNSの発達により、楽曲が拡散するスピードはぐんと加速した。これほどまでに豪華なアーティストが参加する「サウンドトラックのカバーアルバム」が、こんなに早く実現したのも今の時代ならではだ。

 〈I’m not scared to be seen I make no apologies, This is me〉(見られたって怖くない、私は何も弁解しない、私は私だ)と歌う「This Is Me」をはじめ、パセク&ポールによる楽曲のメッセージは本作『グレイテスト・ショーマン:リイマジンド』によって、より多くの人に広がっていくことだろう。(黒田隆憲)