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挑戦的な「よるドラ」枠、次は“腐女子”をどう描く? 青春ドラマ『腐女子、うっかりゲイに告(コク)る。』に注目

リアルサウンド

19/4/20(土) 8:00

 土曜夜11時30分から、新作ドラマ『腐女子うっかり、ゲイに告(コク)る。』が放送される。筆者は先日、試写で第一話を拝見したのだが、みずみずしい青春ドラマに仕上がっていると感じた。

 主人公はゲイであることを隠している高校生・安藤純(金子大地)。ある日、純は本屋のレジで同級生の三浦紗枝(藤野涼子)が、男性同士の恋愛を描いたBL(ボーイズラブ)マンガを買っている姿を目撃してしまう。「腐女子バレ」を恐れた三浦は、誰にも言わないでと、純に頼む。

【参考】『ゾンビが来たから人生見つめ直した件』 櫻井智也の“劇作家”としての脚本作り

 物語は純の視点で進んでいく。純にはマコト(谷原章介)というゲイのパートナーがいるが、マコトは妻子も子供もいてゲイであることを隠して日常生活を送っている。同級生の高岡亮平(小越勇輝)とは幼なじみだが、ゲイであることは隠している。

 三浦とはBLグッズの買い物に付き合ったことをきっかけに仲が良くなるが、彼女はファンタジーとしてのBLは楽しんでも、同じクラスにゲイの男の子がいるということは想像できない。そんな三浦と純のすれ違いながら近づいていく感情が、第一話では描かれた。

 原作は小説投稿サイト・カクヨムに掲載されたものを2018年に書籍化した浅原ナオトの小説『彼女が好きなものはホモであって僕ではない』(KADOKAWA)。脚本は劇団ロロの三浦直之。昨年は『デートまで』、『それでも告白するみどりちゃん』といったインスタグラムのストーリー機能にて配信された縦長の画角を活かしたドラマ(現在はYouTubeで公開されている)や、伊藤万理華が主演を務めた単発ドラマ『ガールはフレンド』(TOKYO MX)等を手がけている。どの作品も短編ながら、見応えのある若い作品だった。

 『腐女子~』をみて感心したのも、若者の繊細な感情を、実に丁寧に描いていたことだ。同時に感じたのは、台詞とモノローグの繋がり方がとても心地良いということ。劇中では純がいつも聴いているクイーンの曲がかかるのだが、台詞、モノローグ、劇伴がシームレスにつながっていて、言葉がダイレクトに届く作りとなっていた。

■挑戦的なドラマ枠「よるドラ」

 本作が放送される「よるドラ」は、今年リニューアルされたNHKの深夜ドラマ枠。冬クール(1~3月)は、ゾンビが発生した地方都市を舞台に地方で暮らす女性の鬱屈した内面を描いた、異色のドラマ『ゾンビが来たから人生見つめ直した件』(以下、『ゾンみつ』)が放送された。前回がゾンビモノ、今回が同性愛と腐女子を題材にした青春ドラマという攻めた企画が続いており、NHKのドラマ10と並ぶ挑戦的なドラマ枠だ。

 新鋭クリエイターによる若者向けの作品が続いており、『ゾンみつ』では劇団MCRの櫻井智也、『腐女子~』では劇団ロロの三浦直之が脚本を担当。高齢化著しいテレビドラマの世界において、独自の存在感を見せはじめている。

 前作の『ゾンみつ』もそうだが、キャッチーなキーワードを並べた長くて説明的なタイトルに、SNS受けを狙ったあざとさを感じないわけでもない。正直言うと、見る前は流行りのテーマに便乗しただけの作品ではないかと警戒していたのだが、一話を見る限り、全てのシーンは作り手が必要だと判断して配置したものだと感じた。

 例えば、金子大地と谷原章介のラブシーンは生身の俳優が演じているだけあって、実写ならではの衝撃がある。だがこのシーンはファンタジーとしてBLを楽しんでいる腐女子の三浦の現実と、肉体を持ったゲイの純の現実の違いを示す上で、絶対に必要なものだ。映画『ボヘミアン・ラプソディ』がヒットした後だと、むずかゆく感じてしまうクイーンの楽曲も原作小説の時点で重要なアイテムとして登場しており、純の内面を代弁する音楽として、重要な役割を果たしている。

■“腐女子”の描き方

 何より気になるのが“腐女子”を、本作がどう描いているかだろう。

 ゲイのカップルをファンタジーの住人として消費してしまう構造を内包したBLを楽しんでいる腐女子の三浦を、ゲイの純の視点から観察するように描く本作は、ある種のBL批評、腐女子批評だとも言える。その描き方に対して、筆者は哲学的な優しさを感じたのだが、当事者である腐女子の方々がどう感じるかは、自分にはわからない。

 そういったテーマ面での評価は話数が進んでから改めて考えたいのだが、現時点で本作を応援したいと感じたのは、純から見た他者はもちろんのこと、純の中にある複雑で多面的な部分がちゃんと描かれていたからだ。この人間観は信用できると思った。

 試写終了後、記者会見に出演者の金子、小越、藤野、谷原、製作総指揮の清水拓哉が登壇した。印象的だったのは、自分が出演していない場面の純の姿を見た時にそれぞれ(小越、藤野、谷原)が(自分が見たことのない顔で別の人と話している純を見て)「ジェラシーを感じた」と語っていたこと。これは小越の発言に後の二人が被せて面白くしていた面もあるのだが、一人の人間の中にある多面性を描いた本作の本質を突いた見事な回答だったと思う。 

(成馬零一)

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