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ぴあ

元キマグレン・ISEKIが語る、“経営者とアーティスト”双方の視点から見た音楽業界の現在

リアルサウンド

18/9/4(火) 18:00

 元キマグレンのISEKIが、音楽活動10周年を迎えたことを記念し、初のソロ名義でのオリジナルアルバム制作プロジェクトをCAMPFIREにてスタートさせ、見事サクセスとなった。

 同プロジェクトは、ISEKIがアーティストとして活動してきた10周年の感謝の気持ちを詰め込んだプレミアムアルバムと、キマグレン時代からの盟友・園田俊郎監督と最新MVを制作する企画だ。リアルサウンドでは、プロジェクトの話を中心に、キマグレン解散後、ISEKIがどのように音楽と向かい合い、ミュージシャンとイベント制作・プロデュース会社社長としての顔を使い分けてきたのか。彼のキャリアが始まった場所・逗子で、じっくりと話を聞いた。(編集部)

「今の音楽業界は、このままの状態で絶対にいられない」

ーーISEKIさんはキマグレンを解散後、ソロシンガーとして約3年間活動を続けていますね。

ISEKI:昨年はAORのカバーアルバムを3枚、<徳間ジャパン>さんから出させてもらいましたね。いまは基本的にマネージメントも含め、全て自分でやっているという状況なんです。まあ、ユニットをやってるときから、基本的にはイベント企画やマネージメントに関して分けてはいたんですけど、自分たちで会社を作って、企画して活動していくというスタイルに関してはデビュー以来ずっと変わってなくて。今はより、プロデューサー的な立ち位置も自分がやるようになったりとか。

ーーユニットのときからそうだった、ということですが、そもそもマネージメントを自分たちでやろうと思った理由とは?

ISEKI:もともと一緒にやってたプロデューサーの意向が大きいですね。先にイベント(『OTODAMA』)を作るところからスタートしたのがキマグレンだったので、そのあたりも面白く見えたんだと思います。「自分たちでイベント企画をベースにしながら活動してるアーティストはあまりいないだろう」と。その頃からアーティスト主導のフェスも各地で増えてきましたよね。他にも色んなところでその動きはあったと思うんですけど、一応先駆けのひとつにはなれたんじゃないかなという自負はあります。

ーーアーティストフェスの先駆けとして『OTODAMA』があったと。

ISEKI:はい。今は自分で『毎日がクリスマス』っていうイベントを主催・企画したり、5年前から『Yamaha Acoustic Mind』というイベントの企画と制作プロデュースに関わっています。ほかにもいろいろ実はやってるんですけど、会社としてはそういうキャスティング・企画を軸に置いた状態で、それら全てをアーティスト活動に還元していく、というのが今の僕のやり方です。

ーー“アーティスト活動に還元していく”という一点においては、お一人になってからのほうがよりストレートに反映されているように見えます。

ISEKI:そうですね。自分自身が会社をやってる、というのも大きいんですけど、キマグレンのときには無かった新しい出会いもあるし、そこにずっと培ってきた縁が絡み合って、点が線になって、チームISEKIとしていいものを作って世に出していくことができる空気感が徐々にできていて、今はそのムードが最高の状態にあるといえます。

ーーそんななかでクラウドファンディングに挑戦することになったきっかけは?

ISEKI:CAMPFIREさんに出会ったことがきっかけですね。昨年、3枚カバーアルバムを出したことで「次は僕に何ができるだろう」と考え始めて。待ってくれてるファンの皆へ「CD出しました、配信しました」という形ではなく、「やっぱISEKIは面白いことをやるな」と感じてもらいたかったんです。正直にお話すると、現状の僕がCDを普通に出して全国流通させることになったとして、ちゃんと展開してもらえるか、という不安もあったりして。ソロとして初のオリジナルアルバムを出すからには、ちゃんとその辺りも考えないと、と思い、いろんな人に会って意見を聞いたりして、数カ月間模索したんです。いろんなレコード会社や、インディーズレーベルの社長にも会いました。そんななか、ある仲間から「こういうのはどう?」って紹介してもらったのがCAMPFIREで、別の仲間からもほとんど同じタイミングでCAMPFIREの名前が出てきたんです。しかも、別々の方向から4人くらい(笑)。みんなが口々に「良いサービスだ」とか「担当の方が優秀で」という話をしてくれるので、アポイントを取らせてもらいました。

ーーでは、実際に会ってからプロジェクトがスタートするまでにもそこまで時間が掛からなかった。

ISEKI:そうですね。実際にお会いしてみたら、人としての部分だけではなく、仕事にかける想いや面白いことをやりたいという前向きな気持ちがすごく伝わってきて。その中で僕らが今やろうとしていることともしっかりリンクしたんです。ものづくりの基本だとは思うんですけど、掛け合わせが合致しないと本当に良いものはできないと思っていて。でも、今回は上手く噛み合ったし、化学変化を起こすことができています。

ーー手応えも実際に感じていると。

ISEKI:まだプロジェクトも始まったばかりで、結果が出ているわけではないんですが、このタイミングで生まれた繋がりは、5年10年経ったときに、僕が音楽を続けていくうえでターニングポイントだったと振り返れる瞬間かもしれないという予感があります。今の音楽業界は、このままの状態で絶対にいられないという局面に差し掛かっていますし、今まで当たり前じゃなかったものが、5年、10年後に「普通だよ、そんなの」という話になるのかもしれません。そのひとつは確実にCAMPFIREでしょうし、メジャーなシーンで当たり前に選ばれる選択肢になると思っています。

ーーISEKIさんがそう感じる要因とは?

ISEKI:実際に、自分がプロジェクトを始めることになって、周りの仲間に話していたら「紹介してくれない?」とインディー・メジャー関係なく相談されたんですよ。敏感な人はちゃんとその仕組みも瞬間的に理解してくれたりして。

ーーちなみにCAMPFIREを紹介してもらったことでクラウドファンディングのプロジェクトをスタートさせた、ということですが、ISEKIさん自身はこれまでクラウドファンディングについて、どういった見方をしていたのでしょうか。

ISEKI:正直にお話しすると「名前だけは知ってた」という状態でしたね。2年前くらいに、元バンドマンだったうちの税理士が「ISEKIさん、クラウドファンディングってご存知ですか?」と提案してくれたんですけど、当時はあまりわからなくてスルーしちゃったんですよね。今思い返して「あそこでスルーしなきゃよかったな」と後悔しています(笑)。あと、ファンの方々のなかにはいろんな考えの方もいらっしゃって、今回のプロジェクトに対して「よくわからない」だったり、疑問に思われる方もいるのかもしれません。でも、僕らが最高のチームで作った音を聴いてもらえば、納得していただけるんじゃないかなと思っています。

「音楽を続けられなくなったアーティストにもチャンスが巡ってきた」

ーーいまのISEKIさんは、いわゆる大手の事務所やレーベルに所属せず、インディペンデントな活動ではあるし、これまで自身で企画・マネジメントをしてきたことで、音楽業界を少し引いた目線から見ることができると思うんですが、どうでしょう?

ISEKI:そうですね。僕はいま、前線にいる方々とは少し違った立ち位置から見させてもらっているのかもしれません。その上でお話すると、「音楽を続けられなくなった、続けられなくなっていたかもしれなかったアーティストにとっては、チャンスが巡ってきている」と思います。メジャーに一度上がっても、そこから離れたり、マネジメントも自分たちや少人数でやるようになっている人たちはどんどん増えてきているのに、それぞれが予算はあまりない状態だったりするわけで。僕の場合は15年もの間、イベンター・企画・制作会社をやってきたので、なんとか音楽を続けることのできる環境は作ることができています。だからこそ、僕みたいな、ある程度売れたことのあるアーティストが、次のチャンスをものにしていくことで、いろんなアーティストに「俺もできるんじゃないか?」「ISEKIができたなら俺にもできる」と思ってほしいですね。

ーー自主的に活動している人たちの希望になりたいと。

ISEKI:はい。企画やイベントをやっていると、否応無くアーティストの浮き沈みを見ることになってしまうんです。でも、仕事をしながら音楽をすることはできるし、それはなにも音楽に限ったことではない。そういう人たちにとって、クラウドファンディングはチャンスを与えてくれる新しい希望だと思うんです。実際にサイトを見てみると、音楽だけではなくて様々なジャンルのプロジェクトがあるじゃないですか。

ーーいろんな事情や環境で、やりたいことを諦めざるを得なかった人たちにとっては、「諦めなくてもよくなる」サービスでもある。

ISEKI:災害支援のような社会貢献にも、地域の町おこしにも役立てることはできるはず。まだまだ色んなものとつながって大きくなるはずですし、小規模な投資としての機能はまだまだこれから発展していくのかなという見方をしています。エンタメ業界においても、もっと芸能の分野、たとえばテレビ業界に入っていくことだってあるかもしれない。すごくワクワクするシステムだなと改めておもいますね。

ーーISEKIさんはここまで、経営者としてはイベントの企画・制作・プロデュースを手掛けてきているわけですが、『OTODAMA』から始まって、それらを自分の会社のメイン事業としてまわしていくことになったのは、どういった経緯があったのでしょうか。

ISEKI:それは至ってシンプルな話で。僕、1回音楽を諦めたことがあるんです。でも、そこから何か音楽に携われる仕事はないか模索して、自分たちでイベントを作ろう、というところから『OTODAMA』はスタートしていて。要するに、イベントに出れないなら自分たちでイベントを立ち上げて出ればいいんだ、という発想だったんです。そのスタンスが自分のなかで大きな指針になり続けているんですよ。

ーーあくまで自分たちの出る場を作る、という目的だったんですね。

ISEKI:はい。だって、大きいフェスに出るのって、よほど売れてないとできないですよね? だったら、自分で作って大きくすれば良いと(笑)。まあ、経営となるといろんな収支の問題や別の考え方も必要にはなってくるんですけど、それらは全て、自分たちが音楽を長く続けていくための環境を作りたいという一つの目的を達成するためにやっていることなんです。そんななかで「ISEKI、これ手伝ってくれよ」と、今まで助けてくれた方たちに頼ってもらったりもして、恩返しの機会も生まれたりしています。

ーーとはいえ表舞台に出てらっしゃる方でもあるじゃないですか。そのビジネスマンの顔との使い分けはやはり難しかったり?

ISEKI:確かに、キマグレンをやっていたころはその使い分けにまだ慣れていなくて、苦しんでいた時期もありました。企画に時間を割きすぎて、曲を作る側のテンションに戻れなかったり、曲作りに集中していると、企画のほうに戻れなかったりして。

ーー自分の中に2つ人格があって、それをうまく使い分けられないみたいな?

ISEKI:そんな感じです。でもそれは時間が経つにつれて慣れてきました。環境に適応していくというか、2つの自分がだんだん融合していくんです。それが丸い球体みたいになって。陰陽に分かれて混ざり合って共存しているというか。最近はそれがバチっとハマっている感じで、イベントを作ることと、アーティストとして活動することが、良いサイクルで共存している。最近はそれがカチッてはまってる感じです。イベントを作ってる頭も、「このアーティストとこのアーティストを組み合わせたら面白そう」というはめ方はどこか曲作りに似ているなと思うようになって。閃く回路は同じようなものなのかもしれません。

「新しくて流行っているものには、かならず理由がちゃんとある」 

ーーなるほど。ここからはプロジェクトを通じて制作する初のオリジナルアルバムについても聞かせてください。制作の上でテーマにしたものとは?

ISEKI:今回のアルバムは、これまで制作してたチームとは全然違うチームで、セルフプロデュースをするのも初めてなんですよ。

ーー楽曲制作陣に生本直毅さんや柳野裕孝さんといった、J-POP~アニソンなどの分野で幅広く活動している凄腕ミュージシャン・音楽作家を迎えていますが、彼らとはどういうつながりが?

ISEKI:2人とも同じアーティストのサポートをすることが多いんですけど、僕と2人はそれぞれ違うところで出会って。『OTODAMA』でもアーティストのサポートとして出演していましたが、決定的なきっかけは『Yamaha~』で2人にサポートメンバーとして入ってもらったことですね。コミュニケーションもすごく取りやすくて、少し時間は空いたんですけど仲良くもなって。

ーー実際に彼らと絡むことによって、音作りにはどんな変化が生まれましたか?

ISEKI:やっぱり今までと全然違うんで、だいぶ面白いです。それに、今回からは自分が完全に制作に携わる形なので、意見を言い合いながら細かく作って行きました。2人とも僕より感性も若いし、自分たちの音楽に対してのブランディングをよく考えている。そんな2人と会ったことで、自分の音作りを見直したんんですよ。振り返ってみると、僕ってロックをやって、そこからレゲエのバンドを始めて、キマグレンができて、ソロになってAORのカバーをして、どんどんダンスミュージックの道を辿っている気がしたんです。なので、その延長線上であることを意識しながら、もっとお客さんと一体感を出したり、みんなと遊びながら音楽をやる感覚を掘り起こそうとしたんです。柳野くんは特にダンスミュージックが得意なので、がっつり手伝ってもらいました。

ーー実際にアルバムに収録される楽曲を聴かせていただきましたが、完全にダンスミュージックに振り切るのではなく、ご自身のずっとやってきた音楽に、少しダンスミュージックのエッセンスを入れて踊りやすくした、という印象を受けました。ただ踊るだけではなくて、聴きながらゆったり揺れることのできる気持ちいい作品というか。とくにその鍵になっているのが「Workman」なのかなと。

ISEKI:ありがとうございます。30代後半にさしかかって、次に自分を表現するなら何だろうと考えた結果が「Workman」なんだと思います。

ーーメッセージは強いんですけど、曲が軽やかなのでスッと入ってくるんですよね。

ISEKI:僕は仕事をしながら音楽をやっていて、やり続けないと生きていけない人間なわけです。だったら働きながら好きなことをやろうぜ、一緒に楽しもうぜ、という思いを込めて作りました。

ーーそして、プロジェクトを立ち上げた上でのリターンも個性的で楽しいですが、このあたりはどのようにして考えていったのでしょう。

ISEKI:それはもうCAMPFIREの担当者にいろんな意見をいただいて、そのうえでベーシックな形を作りました。

ーーTwitterでも案を募集されていました。

ISEKI:募集するのも、CAMPFIREの担当者からの提案ですね。そこでまたファンの方とのコミュニケーションも生まれて、面白かったです。

ーーご自身の中で出てこなかったような案も出てきたり?

ISEKI:そうなんです。自分の中で抱え込んで、全部決めているようなやり方ではでてこないようなものはいくつもありました。例えば、僕はコーヒーがすごく好きで、プロから淹れ方を習ったりしていたくらいなんですけど、それを知ってくれているファンの方が「ISEKIの淹れたドリップコーヒーが飲みたい」と。それはおもしろいなと思ったし、曲を聴いてもらうのと一緒だなと。僕が自分が気に入った豆で淹れたコーヒーを飲んでもらいながら、気に入ったお菓子と、自分の作ったアルバムを楽しんでもらう。聴覚、味覚、視覚で楽しんでもらえるイベントというのは、やってみたいなと強く思いました。

ーーそれはやっぱり普段から活動を見届けていて、趣味趣向も把握しているからこそ提案できる案ですね。

ISEKI:そう。僕のことが客観的に見えてるんでしょうね。ある意味お客さんがプロデューサーでもある。それがCAMPFIRE、クラウドファンディングというシステムの面白さでもあるのかもしれません。ファンクラブよりもオープンなのに、距離感は近くて濃いじゃないですか。

ーー楽曲のMV制作もプロジェクトの中に入っていますが、この監督はキマグレン時代にMVの監督をしていた園田俊郎さんが撮る予定なんですね。

ISEKI:そうですね。皆さんのお力を借りながら実現に向けて動いています。新しいことをやりながらも、今までの培った縁だったり、ファンの方が「それはちょっと見てみたいな」と思うものを作りたいんです。新しい方と組むのもいいなと思ったんですけど、僕の中では園田さんともう1回一緒にやりたかった。彼とはキマグレン時代にすごく充実した時間を一緒に過ごしたので、その時間をまた共有して、新しいものを一緒に作りたいなと。

ーー長らく応援してきたファンにとっては堪らないと思います。

ISEKI:昔から見てるファンの方も、同じコラボなのに全然違う、と思ってもらえるものにしたいですね。

ーー気になったんですけど、リターンには「MVのダンスレクチャー」という項目もあるんですよね。

ISEKI:MVは制作・企画段階なんですが、ここらで踊ろうかなと思って(笑)。「Workman」が踊り出しそうな曲なので、振付師さんにもお願いして、僕自身もダンスを習っているんです。なので、リターンでは僕がMVのダンスをレクチャーします。ビシバシと、スパルタ教育スタイルで(笑)。その動画をTikTokにアップしても面白いかもしれないですね。

ーーTikTokのお話もそうですけど、ISEKIさんは新しいサービスやシステムを抵抗なく使うタイプなんですか?

ISEKI:いえ、保守的なところはあるんですけど、最近は「それじゃ駄目だ、新しいものにどんどん挑戦していかないと」とモードが変わっていて。新しくて流行っているものには、かならず理由がちゃんとあるわけですし、そこから目をそらしてはいけないなと。だからCAMPFIREさんにも出会えて、こうしてプロジェクトを立ち上げることができたので。

(取材・文=中村拓海/撮影=稲垣謙一)

■プロジェクト情報
「【ISEKI 10 周年プロジェクト】プレミアムアルバムと最新MVを制作したい!」
受付期間:2018年8月1日(水)22:00〜10月17日(水)23:59まで
受付はこちら

■ツアー情報
『TOUR 18’〜CROSS HEART〜』(弾き語り編成)
2018年10月20日(土)仙台 SENDAI COFFEE(OPEN18:15/START19:00)
2018年10月27日(土)福岡 LIV LABO(OPEN18:15/START19:00)
2018年10月28日(日)広島 ヲルガン座(OPEN18:15/START19:00)
2018年11月3日(土)埼玉 音楽喫茶 Mojo(OPEN17:30/START18:30)
2018年11月4日(日)北海道 mushicahallcafe(OPEN18:15/START19:00)
2018年11月24日(土)宮崎ポトリージョ(OPEN18:15/START19:00)(バンド編成)
2018年11月11日(日)心斎橋 JANUS(OPEN11:15/START12:00)
2018年11月17日(土)名古屋 BL café(OPEN16:45/START17:30)

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