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ぴあ

欅坂46、2年目の『欅共和国』で見せた圧倒的な進化 荻原梓がスケールアップした演出を徹底解説

リアルサウンド

18/8/4(土) 12:00

 昨年の初開催以来、欅坂46にとって夏の定番行事となりそうな予感のある『欅共和国』。富士急ハイランド・コニファーフォレストで行われるこのイベントは、野外ならではの演出を駆使した年に一度のお祭りだ。今年は3日間の開催となり、設備の規模も増強。よりパワーアップした欅共和国が”開国”された。

参考:けやき坂46、今年はかけがえのない“熱い夏”になる? 『TIF』単独出演に寄せて

 3日間を通して最高気温は30度超えながらも、日差しが傾くと過ごしやすい気候に落ち着く高原地帯。日射は強いが頬を撫でる風が心地よい。針葉樹で囲まれた会場付近からは蝉の声が聞こえ、たまにトンボが風に乗って横切っていく。まさに大自然の中でのライブだ。

■ステージの表情が七変化する”やりたい事てんこ盛り”なライブ

 17時過ぎに開演することでまだ明るい「日中」から「夕暮れ時」、そして「夜」という三段階のシチュエーションがあり、その中で「欅坂46(漢字欅)」→「けやき坂46」→「欅坂46(漢字欅)」というグループ間のバトンタッチによる三部構成がある。その上でざっくりと、

(1)放水や泡で盛り上げてスタートダッシュする「序盤」

(2)トロッコや風船を使ってアイドルらしく振る舞う「前半」

(3)バトンを受け取ったけやき坂46が会場を湧かす「中盤」

(4)スタイリッシュな黒スーツでクールに決める「後半」

(5)暗闇の中で光を巧みに用いながら魅せる「終盤(アンコール)」

 という流れを見せる。さらに、”集団行動”のパフォーマンスで欅坂46とダンサーたちが対決するような冒頭と、その2組が和解するような本編ラストでイベントそのものをビシッと締める。

 ……といったようにステージの表情が七変化する。この”やりたいことてんこ盛り”なライブを、「よくぞここまでまとめた!」というのがまず第一の印象だ。

 そもそも、事前に我々には「びしょびしょ・ぐちゃぐちゃになる!」というテーマがひとつだけ伝えられていた。実際、世界最大級のウォーターショットを何発も発射させ、会場は序盤からずぶ濡れに。特に初日は油断していたファンも多く「もう笑うしかない」といった観客の反応が印象的であった。

 しかし、”やりたいこと”が本当にそれだけならば、昼公演にして最初から最後まで好き放題放水してしまえばよいのだ。”ウォーターフェスティバル”なんて言葉も聞こえてきたが、実際はそうしたテーマの他にもやはり手広く挑戦しているのである。となると、これだけの”やりたいこと”を実現させる材料と、本人たちの意思、それを実現させるための入念な打ち合わせ、そして大勢のスタッフの協力があったのだと予想される。今年の『欅共和国 2018』は明らかに昨年の規模をあらゆる面で上回っていた。

■放水や泡で盛り上げてスタートダッシュする「序盤」

 黒い衣装に身を包んだダンサーたちが行進しながら登場。逆側から白い衣装の平手友梨奈が指を差しながらステージイン。少し遅れて他のメンバーが続く。ダンサーから代表一人と平手が腕をクロスさせると、全体で整列したり、フォーメーションを変えたり、回転したり、対決するような演技を見せる。重厚感のある音楽とともに力強く厳かな雰囲気のあるスタートだ。昨年はメンバーたちによるフラッグの演出であった。今年は”集団行動”である。昨年は不参加となってしまった米谷奈々未もここでは真剣な眼差しで観客を魅了する。全員の意識を一つにすることが必要とされるこのパフォーマンスは、舞台から強い意気込みが伝わってくるものであった。そして「OVERTURE」へ。

 「OVERTURE」を終えると、「世界には愛しかない」の衣装で「危なっかしい計画」を披露。小林由依が「欅共和国、ぶち上がれー!」と叫ぶと観客からは大歓声が起きる。ここで巨大ウォーターショットの出番だ。初日のMCで守屋茜から「この規模でやるのが日本初」だと明かされた通り、最大18,000人収容可能の巨大な会場は”びしょびしょ・ぐちゃぐちゃ”に。可動式のスプリンクラーも四方に4本設置されているため、濡れない者はほぼいない。ラストでも大噴射され、曲が終わっても雨のように水が落下する中、「サイレントマジョリティー」のイントロがかかる。続く「世界には愛しかない」では、今回欠席となってしまった今泉佑唯が担当するパートを小林が務め上げ、また同じくポエトリーリーディングの〈夕立も予測できない未来も嫌いじゃない〉の部分をキャプテン菅井友香が目一杯の笑顔で読み上げると、オーディエンスは大歓声で応える。ラストのサビの直前で、〈僕らの上空に虹が架かった〉と歌った瞬間には、ウォーターショットによって本物の”虹”が架かった。特に2日目の虹は綺麗に現れたので、それによってまた歓声が湧き起こる。花道近くに設置されたバブルマシン、メンバーが持つ巨大ホースなど、とにかくアクセル全開で突き進んだ序盤だった。

 ここで一旦、MCへ。今回、MCを極力排除したことでこの時間はファンにとって貴重な瞬間となる。”曲で魅せる”欅坂46らしい采配だが、3日目において、このイベントで終始研ぎ澄まされた表情を貫いていた平手友梨奈がメンバーからイジられて口を開き自然な笑顔を見せた場面は、確実に後のパフォーマンスや観客の心持ちにも良い影響を与えていたことを記しておきたい。

■トロッコや風船を使ってアイドルらしく振る舞う「前半」

 ここからユニット曲が続く。序盤で水浸し&泡まみれになった会場で、〈初めて来た都会は人と人を 洗濯機のようにかき混ぜている〉と歌い出す「青空が違う」、〈バスタブの泡のその中で〉から始まりトロッコで周遊する「バスルームトラベル」、〈キャップが外れ吹き出した泡は止められない〉というフレーズのある「僕たちの戦争」、三輪車に乗りながら〈水しぶきの空に虹が出て 世の中って面白いなって〉と歌う長濱ねるソロ曲「100年待てば」など、曲選びにもしっかりと意図がある。「制服と太陽」では〈窓の外を鳥が横切ってく〉で会場上空に実際に鳥が飛んだ(これは演出ではなく初日に奇跡的に起きた)。

 ここまでくると、逆に「あの曲もできたのでは?」などの声が当然上がる。これだけバブルマシンを多用するのであれば「割れないシャボン玉」は絶好の機会だったのでは? など贅沢な不満を抱いてしまうのは、ある意味、想像力を掻き立ててくれるライブとも言えるだろう。それだけ野外という環境が今の彼女たちにフィットしている証拠なのだ。

 それにしても、後に披露した「二人セゾン」は「サイレントマジョリティー」の半袖衣装で踊ったのに、わざわざ本来通りの「二人セゾン」衣装で披露した「制服と太陽」は、この曲が進路相談の歌であることから、学業専念のために休業中の原田葵へのエールなのだと受け取れる。その一方、今まで追加メンバーを極力入れずに過ごしてきた彼女たちのある種のモラトリアム性――変化を強いられるもどうしても踏ん切りの付かない心情を歌ったものだと解釈したとき、坂道合同オーディションが差し迫る今、この曲を歌ったことで初めて彼女たちは”理想の欅坂46”に別れを告げる準備をし始めたかのように思えて、〈理想なんて 甘い幻想〉と歌う彼女たちからどこか特別な思いを感じずにはいられなかった。いや、そういう深読みをしたくなるほど今回の「制服と太陽」は情感に溢れた素晴らしいものだった。

■バトンを受け取ったけやき坂46が会場を湧かす「中盤」

 続く全員参加曲「太陽は見上げる人を選ばない」で欅坂46に続いて入場してきたけやき坂46に、会場から温かい拍手が送られる。けやき坂46の2期生を迎えて初の披露となるこの曲は、両グループの人数差が縮まったことで改めて意味のある楽曲となった。横に広いステージを余すことなく使い、欅坂46とけやき坂46の全参加者37人が交互に整列するという圧巻の光景を見せた。なかなか両グループ合同でライブをすることがない今、この景色は壮観だ。『欅共和国 2018』の中核を担う最も重要な演出の一つであっただろう。

 そこからけやき坂46が舞台を引き継ぎ、落ちついたトークを展開。3日目には加藤史帆が正座しながら「怖いな~、怖いな~」と交えながら怖い話に挑戦し、1万人超えの客席から笑いを掻っさらう。ツアーを終えたばかりの彼女たちは、ライブで一段と盛り上がる楽曲3つをここに引っ提げてやってきた。「期待していない自分」「誰よりも高く跳べ!」「NO WAR in the future」、たった3曲ではあるが大きな爆発力を持ったこれらの楽曲は、僅かなチャンスをモノにするには充分過ぎる選曲であった。

 昨年の『欅共和国 2017』では彼女たちのMCやパフォーマンス中に席を立ったり座ってしまう者が散見されたが、今年はそういったこともなく、ファンから率先して彼女たちを応援しようというような熱い空気があった。こうした変化は彼女たちがこれまで積み重ねてきた努力の賜物だろう。

■スタイリッシュな黒スーツでクールに決める「後半」

 「東京タワーはどこから見える?」で再び欅坂46のターンに戻る。タイトな黒スーツでスタイルの良さが際立つ土生瑞穂や、髪を染めたことでより一層目立っていた鈴本美愉、しなやかな佐藤詩織のソロダンスなど、見どころは書き切れない。「エキセントリック」「AM1:27」「語るなら未来を…」とクールなダンスナンバーを畳み掛けることで観客の目線はステージに引き込まれていく。そして「風に吹かれても」の間奏明け〈風に吹かれても何も始まらない ただどこか運ばれるだけ〉で大量の紙吹雪が風に舞うと、会場のテンションは最高潮に。休みなくラストスパート5曲を踊り切り、締めの”集団行動”のパフォーマンスを経て本編が終了。夏の野外、日の暮れかけた会場は興奮と熱気で渦巻いていた。

 さて、今の欅坂46を語る上で触れないわけにはいかないのが平手友梨奈についてだ。年始に右腕の負傷が発表されて以降、グループ活動から距離を置いていた彼女が、このイベントで半年ぶりにファンの前で完全復帰した。正直に書くなら、3日間を通して彼女はベストのパフォーマンスを見せなかった。見せなかった、見せられなかった、どちらなのかは本人に聞かなければ分からない。しかし、彼女の状態は日を追うごとに改善され、最終日には非の打ち所のないものとなっていた。

 彼女が踊ると途端に会場はひとつになる。熱狂的にコールに励んでいたファンも、徐々に食い入るように動きを止めて、やがて釘付けになっている。彼女の表情がスクリーンに映し出されると、現場にうねりが起きる。彼女の表情ひとつひとつの変化に、我々は目が離せなくなっている。

■暗闇の中で光を巧みに用いながら魅せる「終盤(アンコール)」

 アンコール。「二人セゾン」から「キミガイナイ」「もう森へ帰ろうか?」と欅坂46の楽曲の中でもピアノが美しく鳴り響く3曲が披露される。辺り一面が真っ暗闇の中、天然リバーブの施された透明感のあるサウンドと青白い照明は、夜冷えした森林に溶け込み幻想的な空間を作り出していた。彼女たちはそこで、過去最高のパフォーマンスを見せる。スカートがひらりと宙に浮くシルエットすらも美しく、音とステージと彼女たちのダンスとが完全にリンクし、夜風に花びらが舞っているかのようだった。その後に平手がひとりで踊る時間がある(実際には映像だけが流される)。約2分間。ピアノとストリングスが鳴り響く中で見せた平手の柔らかな舞に、会場全体が息を呑んだ。反抗やロックなアイドルとして語られることの多い欅坂46のもうひとつの一面。すなわち、今にも消えてしまいそうなほど脆く儚い蝋燭の火のような表情を覗かせる彼女たちの姿だ。そんな欅坂46が、このアンコールの間は、存在した。月の光を受けて彼女たちは、やさしく輝いていた。

 一転して、「ガラスを割れ!」ではロックな一面を見せる。平手不在の期間中にグループを支えたメンバーたちと、キレッキレなダンスを踊る平手。最後の力を振り絞っている様子が画面越しに伝わる。会場はもう一度ここで最高潮を迎え、曲を終えるとメンバーたちは颯爽と舞台から捌けていき、ライブ終了。最終日にはサプライズで8月15日に発売予定の7thシングル『アンビバレント』をお披露目し、『欅共和国 2017』のDVD/Blu-ray化も発表された。”出国”していくファンたちの満足感たっぷりな表情がとても印象的であった。

 野外ならではの演出の数々、意図を持った楽曲選び、両グループの共演、様々に表情を変化させるステージング……。実に多くのことに挑戦した『欅共和国 2018』は、その場に居合わせたファンにとって忘れられない思い出になったに違いない。

■課題点はある

 ただし、課題がないわけではない。例えば、3日目の「エキセントリック」で長濱ねるが呟く決めゼリフ〈もう、そういうの勘弁してよ〉でハウリングが起きてしまった。観客の意識が一点に集中する箇所なだけに非常に惜しいミスであったが、おそらく彼女の声の小ささを見越してPAがマイクの音量を必要以上に上げてしまったために起きたのだと考えれば、(あくまでメンバーの個性やライブでの表現を重視した上で)”声量”や”音響面”は今後の課題と言えるだろう。

 また、”初日の完成度”も課題と言えそうだ。1日目は映像の乱れ、衣装トラブル、体力面などが目に付いた。徐々に改善されていったポイントなだけに、初日に足を運んだファンには公平さの欠ける出来であった。

 もう一つ。今回、けやき坂46の出番の少なさについて残念がっていたファンも少なくない。両グループが揃う『欅共和国』というイベントそのものの意義について考えたとき、1年間で大きく成長を見せた彼女たちが昨年とほぼ同等の扱いであったことには、少し物足りなさも感じてしまった。

 8月には全国アリーナツアーが控えている彼女たち。そして来年も『欅共和国』を”開国”するのであれば、こうした課題点を修正しながら、今まで見せなかった新たな一面を見せてもらいたい。(荻原 梓)

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