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広瀬すず、初のコギャル役をどう演じた? 『SUNNY』“空白の時間”を埋めた最後の表情

リアルサウンド

18/9/6(木) 6:00

 『モテキ』などでおなじみの大根仁が、原作となった『サニー 永遠の仲間たち』の舞台を日本に移し、90年代の音楽やファッションを散りばめて映画化した『SUNNY 強い気持ち・強い愛』。

参考:日本映画界が患うリメイク病? 同じ原作の実写/アニメや韓国作品リメイクが生まれる理由

 女子高生の仲良しグループ「サニー」。ある出来事をきっかけに疎遠になっていた6人は、末期ガンに侵されたメンバーの「もう一度だけ、みんなに会いたい」という願いを叶えるために再び集まることになる。「サニー」のメンバーを集めるべく奮闘する主人公・奈美(篠原涼子)の女子高生時代を演じるのが広瀬すずである。

 『海街diary』『ちはやふる』『怒り』『三度目の殺人』など、どの映画においても強い印象を残す広瀬だが、今作で演じるのは彼女が一度も経験したことのない役柄と言えよう。90年代を代表する存在「コギャル」だ。広瀬が演じるのは、淡路島から東京に転校してきた少女・奈美。垢抜けない少女だった奈美は、芹香(山本舞香)をはじめ「サニー」のメンバーと出会い、刺激に溢れた毎日を送ることになる。

 転校したばかりでクラスに馴染めていない奈美は、学校では口数も少なくおどおどしている。しかし家に帰ると「みんなが履いてるから」という理由で、ルーズソックスを買うお金を母親にねだる普通の少女だ。その普通さが、当時「コギャル」に憧れていた女子高生たちを体現している。「サニー」のメンバーに対する奈美のキラキラとした目、あの尊敬のまなざしは、当時「コギャル」に憧れていた少女そのものだ。

 奈美は芹香に誘われ「サニー」のメンバーとなる。奈美は彼女たちからメイクやファッションを教えてもらうようになり、徐々に垢抜けていく。だが、広瀬の演技にはしっかりとした軸があった。どんなに見た目が垢抜けていっても、奈美の純朴さはそのままなのだ。「コギャル」として賑やかな毎日を送る中でも、彼女のまっすぐな瞳は少しも変わらない。「サニー」のメンバーの中で最もクールな奈々(池田エライザ)の心を解きほぐすことができたのも、奈美が彼女と「仲良くなりたい」という想いを一心に伝え続けたからだろう。見た目は「コギャル」でも、奈美のもっている芯は少しも揺らがない。純朴で、友達思いな奈美の想いを、広瀬はまっすぐな瞳に込めた。

 また女子高生時代の奈美の役回りも印象的だ。奈美目線で物語は進むものの、奈美が一度も「サニー」の中心に立つことなく、女子高生パートは終わる。一方現代パートでは、末期ガンに冒された芹香(板谷由夏)のために奈美が中心となって行動を起こす。女子高生パートでの奈美は、あくまでも“「サニー」のメンバーの1人”という役回り。賑やかな毎日を送っているとはいえ、どちらかと言うと受け手側に立っている印象だ。しかしその印象は、芹香と再会するまで“何か物足りない日々”を感じていた奈美に通じる。広瀬演じる奈美と篠原演じる奈美の間の時間をわざわざ描かなくとも、空虚な時間を感じさせる、そんな演出だった。

 女子高生パートは、奈々の身に起きる“事故”で幕を閉じるのだが、その時の奈美の愕然とした表情が印象に残る。その事故がきっかけで、彼女たちは20年以上音信不通になった。その空白の時間が映像に映し出されることはないが、広瀬演じる奈美の愕然とした表情だけで、その失われた時間の重さが伝わってくる。青春を謳歌していた彼女たちにとって、何かが欠けてしまった瞬間だったのだろう。

 広瀬が見せる最後の表情は、映画冒頭の“物足りなさ”を感じている篠原の表情につながっている。劇中、広瀬すずと篠原涼子が同一人物に感じる瞬間が何度もあった。過去と現在の姿を別の役者が演じるのは決して珍しい演出ではないが、描かれていない空白の時間を埋めることのできる役者は滅多にいないだろう。

 なお、広瀬のコメディエンヌっぷりにも注目だ。転校したばかりの奈美のおどおどとした態度も面白いのだが、ことあるごとに顎がしゃくれる癖にも思わず笑ってしまう。映画中盤、喧嘩に巻き込まれた芹香を助けようと、目を剥き出し、関西弁でまくしたてる広瀬の姿は衝撃的だ。白目をむき、妙な動きで相手を牽制する姿は非常にコミカルだが、広瀬の振り切り方が清々しいシーンでもある。広瀬の演技の振り幅に、ぜひ驚いていただきたい。(片山香帆)

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