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片桐仁の アートっかかり!

民藝がヤバイのか、ディレクションがヤバいのか!? 『民藝 MINGEI -Another Kind of Art展』

毎月連載

第5回

19/1/10(木)

今回片桐さんが訪れたのは、東京ミッドタウン内にある「21_21 DESIGN SIGHT(トゥーワン・トゥーワン・デザインサイト)」。コンクリート打ち放しのモダンな展示施設で開催中の『民藝 MINGEI -Another Kind of Art展』を、同館広報の岡田祥太朗さんにご案内いただきながら鑑賞しました。

民藝が持つ自由で純粋な魅力

片桐 それにしてもオシャレな施設ですよね。

岡田 建物は安藤忠雄さんの設計によるもので、日常の物事をデザインの視点で発信・提案する場として2007年にオープンした施設なんです。

片桐 「日常の物事をデザインの視点で提案」・・・それは僕と相性がいいですね!
(*片桐さんは日用品に粘土を盛った作品を20年来制作)

岡田 そうですね。『民藝展』はプロダクトデザイナーで日本民藝館館長を務める深澤直人さんが、民藝に触れたときの感動を共有したいという思いから企画した展覧会です。

片桐 「民藝」っていうと柳宗理さんのイメージがあります。バタフライスツールとか鍋とか持っていますけど、昔ながらの道具だけど洗練されたデザインがいいですよね。

岡田 「民藝」という言葉は、日本民藝館の初代館長である柳宗悦(やなぎ・むねよし)さんが、無名の職人たちによる民衆的工芸に対して1925年に初めて名付けた言葉なんです。

片桐 高級品とかではなくて、日常で実際に使われているものに美を見出したんですね。

岡田 展覧会のサブタイトル「Another Kind of Art」というのは、96歳の現在でも意欲的に活動を続けている柚木沙弥太郎(ゆのき・さみたろう)さんという染色家の言葉です。「僕が求めるのは、染色家という肩書きや民藝というカテゴリーじゃない。『Another Kind of Art』なんだ」と語っているのを深澤直人さんが聞いてハッとした。形式や様式に捉われない態度や、一定の仕上がりを求めない自由さがあり、そのただ純粋な魅力に「これはヤバイ」と。

こちらはイントロダクションのスペースで、日本民藝館のエッセンスが感じ取れるように、柳宗悦さん意匠の茶卓や、柳宗理さんがデザインしたテーブルなどを展示しています。

「直観」が大切!

岡田 展示の初めと終わりに、「心偈(こころうた)」と呼ばれる柳宗悦さんが晩年に手がけた短い句を紹介しています。

片桐 「打テヤ モロテヲ」。

岡田 ハッと心が動いた瞬間、誰でも手を打つことがある。柳宗悦さんはそうした「直観」を大切にされていて、人間本来が持っている感受する本能的な力であり、知識や先入観にとらわれず、自由な心でものを見ていこうということです。

片桐 なるほど。「純粋に見る」ということが試されるんですね。
これは難しいですよ~!

ひたすら純粋に物に対峙する

岡田 こちらのエリアでは、深澤直人さんが、日本民藝館の館長になる前から蒐集していた私蔵品を紹介しています。アジア諸国を巡り、深澤さんがいいと思ったものが展示されています。展示品のキャプションは特に付いておらず、純粋に物に対峙していただければという次第です。

片桐 本当だ。何年のものか、どこの国のものかも書かれていませんね。自宅で使っているようなお皿もありますけど?

岡田 実際に深澤さんが日常で使われていたものもあるとお聞きしています。深澤さんが、普段から物にどのように向き合っているかというのを感じていただければ。

片桐 アートの踏み絵ですね!「これが分からない奴は才能がないぞ」みたいな。

岡田 そんなことないですよ(笑)。

片桐 本当ですかあ!? 文庫本が飾ってありますよ?

岡田 これは中国で作られた革製のノートなんですよ。

片桐 壮大な大喜利みたいになってきましたね!

岡田 実のところ大胆なことをやっていますね。

深澤直人さんの審美眼で選ばれた逸品

岡田 メインの展示では、日本民藝館が所有している約1万7千点の中から深澤さんが選出した146点を展示しています。カテゴライズがゆるくされているんですけど、深澤さんが物の形、素材などに着目し、その率直なコメントを紹介しています。

片桐 この台に描かれているのが深澤さんのコメントですね。
「この二つの火鉢を見たとき、「民藝はヤバイ」とおもった。こんな形は思いつけない。・・・・ラディカルだ」。

岡田 こちらのテーブルでは、深澤さんが意図的に見出された美とは違う大胆さに自分は敵わないと感じた作品が集められています。

片桐 形に注目しているということなんでしょうかね。ちょっとゆがんでいるとか、ヒビが入っているとか。

岡田 そうですね、この黒い火鉢は漁師が船上で使用していたものなんですが、「自分ではこんな形は思いつかない」と。

火鉢 出雲(島根) 昭和時代 1940年代〈日本民藝館蔵〉

片桐 船の上だから水や風が入ってこないように周りが囲われていたり、持ち運べるように取っ手がついている。実用から来たデザインなんですね。

岡田 この大きなハサミは朝鮮のもので飴切り用のハサミです。

片桐 随分でかくないですか!?

岡田 飴を切る用途のほか、行商が音を鳴らすための道具でもあったようです。

片桐 真ん中が湾曲して飴がくっつかないようになっていたりと、これも実用先行なんでしょうけど、それにしてもでかいなあ。こっちの瓶は伊勢丹で売ってそう。おしゃれですよね。

白磁瓶[薩摩 平佐(鹿児島)/江戸時代/19世紀]、飴切鋏[朝鮮半島/19世紀末〜20世紀初期]ほか 撮影:吉村昌也
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