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ぴあ

『はたらく細胞』『ゴクドルズ』『すのはら荘』…今期アニソンは“作品を引き立てる歌詞”にも注目

リアルサウンド

18/9/10(月) 13:00

 毎クール様々なアニメが放送され、それと同時に誕生するアニメソング。しかしサウンド主眼のレコメンドは数あれど、アニメソングならではの“歌詞”を中心に注目・紹介したレビューは数少ないのではないだろうか。そこで本稿では、特に歌詞を中心にフォーカスを当てて今期のアニソンをレコメンド。作品の世界観をさらに引き立てる、言葉の力がキラリと光る楽曲をご紹介していこう。

「ミッション!健・康・第・イチ」(『はたらく細胞』)

 作品の基本情報をもとに書かれた、いわゆる“王道オープニングソング”は当然のことながら数多く登場。そのなかでも今期の代表格であり、キャラクターソングとしての役割も兼ね備えているのがこの曲ではないだろうか。王道であるがゆえにアプローチとしては非常にオーソドックスなものであり、通常はそこまでインパクトの残るものにはならないことが多いのだが、ことこの曲に限ってはAメロ中盤の〈細胞 さぁいこう〉がメロディラインを含めた響きも合わせて、非常にクリティカルなパンチラインとして機能。アニメファンを作品世界に引きずり込む役割を果たす。そう。このフレーズが発明された瞬間、この曲は“勝ち”だったのだ。

 加えて〈酸素酸素〉と〈迷子迷子〉のように韻を踏んでの軽妙な言葉遊びも、コミカルなサウンド感とうまくハマってリスナーに楽しさを与えてくれている。ちなみにこの曲を手がけたゆうまおは、久方ぶりに30分モノのアニメ主題歌を担当。前述のような言葉遊びを楽曲の主線から脱線させずにうまく織り込んでくるのは昔からの作風なので、興味を持たれた方は過去の秀作にも手を伸ばしてみてはいかがだろうか。

「ゴクドルミュージック」(『Back Street Girls-ゴクドルズ-』)

 のっけから「そのブラス聴いたことあるよ! そこちゃんと“仁義”切ったの!?」と突っ込んでしまったこの曲。しかしそれは、ただの出オチでは終わらない伏線でもあった。音だけで聴けばベッタベタなアイドルソングにとらえられるナンバーであり、〈盃〉や〈契り交わして〉、〈永遠の誓い〉といった言葉からはウェディングの光景を連想することだろう。が、そこに〈心臓(ハート)を撃ち抜きたいの〉〈犯人(ホシ)たちが騒ぎ出す〉などと文字情報が提示されたらどうだろうか。そのうえで“あの”ブラスに「仁義切らせていただきます!」とのセリフが入ってきたら、どう感じるだろうか。そう、不穏さしかないのである。

 このダブルミーニング性をキャッチーなメロディとうまく組み合わせ、歌詞を読めば一発で腑に落ちるようなバランスで提示した大石昌良の、言葉の匙加減の素晴らしさに改めて拍手を送りたい。それにしても、オーラスの〈パーリラパリラパリラ ハイハイ!〉のフレーズ、とんでもなく攻め込んでるように感じてしまうのは、筆者だけ?

「Bitter Sweet Harmony」/「そんなの僕じゃない。」
(『すのはら荘の管理人さん』)

 キャラソンではなく純粋な主題歌として、作品の主軸となるキャラクターの視点を表す楽曲もまた味わい深いもの。今期その中で、オープニング/エンディングでうまく対となっているのが、『すのはら荘の管理人さん』だ。まずゴージャスさのあるサウンドのオープニング曲「Bitter Sweet Harmony」は、“ビターになりたい君=亜樹”をかわいがりつつ見守っていくという管理人さん(彩花)視点のナンバー。その歌詞と中島愛の歌声との相性も抜群で、彼女のかわいげある歌声があるからこそ、単に年上としてそっと見守るだけでない、ときにはちょっぴりいたずらっぽさも出る管理人さんらしい言葉が生きているのだ。

 また、歌声が歌詞をさらに生かしているのは、エンディング曲「そんなの僕じゃない。」も同様。下地紫野のまっすぐでひたむきな歌声は亜樹と重なるし、冒頭のため息も葛藤で眠れぬ夜を表しているようだ。そういった要素もあってか、使われている言葉はオープニングよりも少々硬め。その一方で中核となるサビにはストレートかつシンプルな言葉が紡がれており、亜樹の背伸び感と心の真ん中との両方を感じられる、非常にまとまりのよい仕上がりになっているのである。

「色違いの翼」(『ヤマノススメサードシーズン』)

 キャラクター視点といえばこの曲も忘れてはいけない。エンディングで流れているバージョン単体でもふたりのバディ感を十分味わうことができるが、さらにその良さを感じたいのであれば、ソロバージョンまでしっかり聴かないテはない。これまでの主題歌は単に同じ歌詞をソロで1曲丸々歌唱するだけだったが、今作ではカギカッコでくくられたメロラップ部分がソロならではのバージョンのものに。

 1・2コーラス目ではそれぞれのキャラクター性が強く出ただけのものになっているが、特に注目したいのは大サビ。あおいの成長に伴うふたりの微妙なすれ違いが中盤以降の展開の軸になっていく今シーズンのエンディングの最後に、ふたりが互いを想って心の内に秘めている言葉がこぼれている。しかもそれが、〈Best friend〉の言葉に続くから余計に胸に来る。だって、これまでの主題歌ではふたりは、〈my friend〉だったのだから。ラスト数十秒で、あおいとひなたという翼が羽ばたいて飛んでいく、そんな光景を想像してしまう。そしてその先に待っているのは、ふたり揃っての富士山頂?

「ワンルームシュガーライフ」(『ハッピーシュガーライフ』)

 本作がデビューシングルであり“アニソンシンガー”ではないものの、作品世界に寄り添って見事なオープニングを生み出したのがナナヲアカリ。疾走、というより爆走しているかのようなロックチューンに乗せて、綺麗事の範疇ではとどまらない、単純な愛という言葉では表し切ることのできない主人公・松坂さとうの内面世界を見事に描いている。

 そこで十二分に表現されているのは、特にストーリー序盤の頃に強く見られた盲目的にただただ神戸しおに尽くし捧げる愛情と、そのしおを中心にしたきらめく世界。メロラップ部分に言葉を詰め込み次々と畳み掛けてくる想いの洪水は、まさに狂気含みで暴走を続けるさとうの“愛”そのものである。ボーカルもそれを決してお行儀良くは歌わず、歌詞に乗せたざらついた感情を前面に出して表現。こうしてどこか危うささえ感じるような、エッジの利いたナンバーが誕生した。

 どうしてもサウンドに注目しがちだが、このように言葉一つひとつを噛みしめ深掘りしていくと、より濃く味わえるのがアニメソングの魅力のひとつ。今回ご紹介の楽曲はもちろん、その他の主題歌も改めて歌詞に注目して、深く深く味わっていただければ幸いだ。

■須永兼次(すなが・けんじ)
アニメソング・声優アーティスト関係を中心に活動するフリーライター。大学の卒論でアニソンの歌詞をテーマにするほど、昔からのアニソン好き。現在は『リスアニ!』『月刊ニュータイプ』や『TV Bros.』等に寄稿。

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