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『この世界の片隅に』『グッド・ドクター』『ハゲタカ』 夏ドラマは傑作が勢揃い?

リアルサウンド

18/7/17(火) 6:00

 新しいドラマが続々と始まっている。今回は、既に放送されたドラマ、これから放送のドラマの注目作品を5本ピックアップする。

参考:ドラマ『この世界の片隅に』は作り手の本気度が伝わる圧巻の出来栄え アニメ映画版と明確な違いも

○『この世界の片隅に』(TBS系)
 まず、夏ドラマの大本命『この世界の片隅に』である。もちろん、傑作アニメ映画『この世界の片隅に』(2016)と比較される運命にはあるだろうが、脚本が『ひよっこ』(NHK総合)の岡田惠和、音楽が久石譲、演出が『逃げるは恥だが役に立つ』(TBS系)、『カルテット』(TBS系)の土井裕泰、プロデュースが『カルテット』の佐野亜裕美という完璧な布陣には期待しかない。

 初回放送ではそれぞれの配役がピタリとはまり、収まるべきところに収まったかのような安心感だったが、特に北條家の隣家の娘・幸子役の伊藤沙莉は強烈だった。すずと登場人物たちは、祖母の家でのスイカと着物、哲(村上虹郎)との鉛筆と絵、家族との似顔絵と柘の櫛、そして周作とのキャラメル、傘と干し柿といった様々なものを、時に時間を隔てながらも、相互に与え合う行為を繰り返している。この優しい贈与の繰り返しが、ドラマの鍵になっていくのかもしれない。

○『グッド・ドクター』(フジテレビ系)
 こちらは第1話を見て涙が止まらなかったドラマ。韓国ドラマ『グッド・ドクター』(KBS)が元であり、『刑事ゆがみ』(フジテレビ系)、『海月姫』(フジテレビ系)の徳永友一が脚本を担当している。

 『トドメの接吻』(日本テレビ系)とは正反対の純粋無垢な演技が素晴らしい山崎賢人がサヴァン症候群の小児外科医を演じる。第1話だけでも上野樹里や柄本明、浜野謙太の温かい優しさと、上司である藤木直人の正しさ、出世第一の戸次重幸の憎めない格好悪さなど、全ての登場人物が活きていた。自閉症スペクトラム障害という対人間のコミュニケーション能力に大きな障害を抱えた主人公がどう患者たちと向き合っていくか、周囲がどう共存していくかということが大きな主題となるだろうが、彼が小児科医として働く上でぶつかっていく「伝えたいけれど伝わらない」もどかしさとその昇華に共感して涙したのは、私だけではないはずだ。医療ものという高視聴率必須ジャンルで、昨今のテーマである多様性を受け入れることを描くと共に、多くの人が悩んでいるコミュニケーションや信頼の問題について考えさせるドラマである。圧倒的に純粋な優しさが、頑なな心を溶かし、人の命も救う。優しいドラマが愛される昨今、これほど強いドラマはないだろう。

○『ハゲタカ』(テレビ朝日系)
 こちらはどうしても11年前のNHKドラマ版(2007)のことを考えずにはいられない。当時テレビでの知名度はそう高くはなかった大森南朋が主演、柴田恭平や松田龍平が好演し、当時NHKにいた大友啓史(『るろうに剣心』,2012)が演出を務めた傑作ドラマである。村上ファンド事件、ホリエモンのライブドア事件などが世間を賑わしていた2006年の翌年に放送されたこのドラマは、2004年に刊行された真山仁の経済小説『ハゲタカ』が原作であるが、当時の状況を多く反映していた。そして11年後、平成最後の2018年、経済事情も大きく変わった現代、再度リメイクされる新生『ハゲタカ』は新しく何を描き出すのだろうか。演出は『相棒』の和泉聖治、主演綾野剛に、小林薫、渡部篤郎はじめ安心のキャストが周りを固める。確実にいいドラマになると期待している。

 そして、忘れてはならないのが深夜ドラマである。

 今回こちらで取り上げるのは、2つの深夜ドラマだが、滝藤賢一と広瀬アリス、水野美紀が出演の『探偵が早すぎる』(読売テレビ・日本テレビ系)も面白そうだ。脚本は『99.9-刑事専門弁護士-』(TBS系)の宇田学、演出は『こえ恋』(テレビ東京系)の湯浅弘章。滝藤、広瀬、水野と、コメディに強い、優れた演技功者が揃っている。

○『dele』(テレビ朝日系)
 山田孝之と菅田将暉、さらには麻生久美子が深夜ドラマで共演というだけで、期待せずにはいられない。原案・脚本は『ストレイヤーズ・クロニクル』(集英社)の本多孝好であり、1話完結型、脚本はそれぞれ金城一紀はじめ多くの脚本家が担当する。ゲスト出演も豪華だ。石橋静河、江口のりこ、余貴美子といった魅力的な女優たちに加え、高橋源一郎、野田洋次郎、コムアイ、Mummy-D、渡辺大知といった多彩な出演陣も魅力である。

○『GIVER』(テレビ東京系)
 対するこちらは吉沢亮、森川葵と、魅力的な若手揃い。初回放送は40分があっと言う間に感じるほど衝撃的な展開に目を奪われた。監督は昨年の過激な話題作、間宮祥太郎主演『全員死刑』(2017)の小林勇貴。さらには『ケンとカズ』(2016)の小路紘史、『虎影』(2015)の西村喜廣という、日本映画ファンは必見と言える布陣であろう。

 冷徹で美しい吉沢亮と、初回ゲストのクレイジーな吉村界人との攻防も息を呑むものがあったが、怯える人質たちの奇妙な視線の流れ、女の子のパンチラの鮮やかなエロと毒、異例の連続予告における巨大な魚とプールの少女の艶かしさは、惹かれずにいられない。

 こちら5本のドラマをピックアップしたが、他にも、魅力的なドラマは多い。特筆すべきは2本のホームドラマだ。1本目は、伝記として面白い上に、赤塚不二夫の父親としての不器用さにホロリとさせられる『バカボンのパパよりバカなパパ』(NHK)である。そしてもう1本は、『おんな城主 直虎』(NHK)の森下佳子脚本、綾瀬はるか演じる義母の奮闘を描く『義母と娘のブルース』(TBS系)。1つの会社として家庭を描く斬新な手法はこれからの新しい家庭像を描き出すのかもしれない。井浦新や田中圭の出演が楽しみな吉岡里帆主演『健康で文化的な最低限度の生活』(カンテレ・フジテレビ系)も期待の1本である。

※山崎賢人の「崎」は「たつさき」が正式表記

(藤原奈緒)

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