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東京・都立西高等学校にて行われた「ちいさな独裁者」特別授業の様子。

「ちいさな独裁者」監督が都立西高で特別授業、ドイツの歴史修正語る

ナタリー

18/11/26(月) 21:26

ドイツ映画「ちいさな独裁者」の監督ロベルト・シュヴェンケが来日。東京・都立西高等学校で特別授業を行った。

第2次世界大戦終戦間近のドイツを舞台とする本作は、若き脱走兵ヴィリー・へロルトが偶然発見した軍服で大尉に成りすまし、その威光によって傲慢な振る舞いをエスカレートさせていく歴史サスペンス。ストーリーの大部分は、同名のドイツ人兵士の実話にもとづいている。「まともな男」のマックス・フバッヒャーがへロルトを演じた。「フライトプラン」「RED/レッド」などで知られるシュヴェンケは、約50人の学生を前に1時間半近くにわたって講義。同高の指導教諭であり、この授業を企画した篠田健一郎氏が司会を務めた。

ある生徒は、へロルトをはじめ本作の登場人物のほとんどが利己的な人間であることを指摘。シュヴェンケは「ギリシャ悲劇のようにこの作品の結末は運命付けられていないのです。虐殺で終わるのは、誰もが自己中心的な理由からそれを阻止しなかったから。個人としてあるはずの勇気を出せなかったせいなのです」と語る。

終戦直前の敗戦が濃厚な時期には、脱走兵が数千人に及んでいたドイツ軍。兵士が1人でいると、脱走兵と見なされ射殺されることもあった。この事実を反映させたキャラクターが、へロルトを最初に大尉と勘違いするフライタークだ。シュヴェンケは「彼は1人で考え行動できる人間ではない。だからへロルトを見つけたときに率先して従属する。それは自分が殺されないためでもあるのです」と説明。さらにへロルトの周囲にいる人物たちについて「全員が彼を信用しているわけではない。彼を偽者と見抜きつつ、それを見過ごし利用する人々もいるんです」と話した。

ドイツでは戦後長らく、親衛隊(SS)のみがホロコーストに関係しており、国防軍は関わっていなかったとする“神話”が信じられていたという。シュヴェンケは「責任を彼らに押し付けたのです。私は学校でも両親からもそのように教わった」とコメント。真実が明るみになったときのことを「大人たちに嘘をつかれていたと思いました。こうして人は歴史を修正するのかと。祖父もれっきとした加害側の人間だった」と振り返る。そして「こういったものに対抗するため、声高に表現しなければならない。観終わったあとに心が落ち着くものではありません。むしろ観た人の顔にパンチを喰らわす思いです」と作品に込めた思いを語った。

続々と手を上げる生徒たち1人ひとりの目を見つめながら疑問に答えたシュヴェンケは、最後に「文化も時代も異なる日本の学生に、どのようにこの映画が響いたのかを知りたい」と逆質問。生徒たちから、日本人の国民性や、第2次世界大戦における被害者意識を絡めた感想や意見が飛ぶ。「現代を生きる私たちが独裁者を支えていないと言い切ることはできないし、同じように私自身が誰かの独裁者でないと言い切ることもできないと思いました」という意見にシュヴェンケは深くうなずき、講義が終了してからも学生たちの質問に耳を傾けていた。

「ちいさな独裁者」は2019年2月8日より、東京・ヒューマントラストシネマ有楽町、新宿武蔵野館、YEBISU GARDEN CINEMAほか全国でロードショー。

(c)2017 - Filmgalerie 451, Alfama Films, Opus Film

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