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Fischer’s、歩乃華、みやかわくん、スカイピース……YouTuberの歌手デビュー、なぜ相次ぐ?

リアルサウンド

18/8/25(土) 10:00

 昨年から今年にかけて、YouTuberが相次いでCDデビューやメジャーデビューを果たしている。

 以前から、音楽活動以外で先にブレイクを果たしたタレントがその後CDをリリースする流れは特段珍しいことではない。近年では、俳優の菅田将暉がGReeeeNの自伝的映画『キセキ ーあの日のソビトー』の劇中歌を歌唱したことをきっかけにCDデビューし、同年6月にはソロ歌手としての楽曲「見たこともない景色」を発表。また、お笑いコンビ・オリエンタルラジオを中心に結成されたRADIO FISHは、2014年の結成以来TVやオリラジの単独ライブなどに出演し、翌年に配信限定シングル『STAR』をリリース。2016年には『第67回NHK紅白歌合戦』(NHK総合)への初出場も果たした。

 しかし、上記のようにタレントが音楽業界へ参入することと、YouTuberたちがメジャーデビューすることは根本的な構造が異なっている。その違いと時代性のマッチングがこの度のデビューラッシュのヒントだと考え、今人気の音楽系YouTuberをいくつかピックアップしつつ、この現象について考察していきたい。

(関連:YouTuberユニット・スカイピースが明かす、結成のきっかけとメジャーデビューへの思い

(1)Fischer’s(フィッシャーズ)

 友人同士で「楽しい」を動画にすることから始まった7人組の思い出系ネットパフォーマー軍団。バラエティ系の動画が多いが、メンバーの中で作詞作曲が出来るンダホと、歌い手としても活動しているぺけたんを中心に制作した楽曲も投稿されている。昨年8月にメンバーとの出会いを描いた楽曲「虹」を発表すると大きな反響があり、『ミュージックステーション』(テレビ朝日系)にも出演。歌唱は主にンダホとぺけたんの2人だが、その他メンバーもラップ、MV編集、ダンスなどそれぞれの得意分野を音楽活動に生かしており、8月15日には1stアルバム『僕らの色 みんなの色』をリリースした。

(2)歩乃華

 メイクアップや美容系の動画を多くアップしている女性YouTuber。幼い頃から歌手になる目標を持ち、今年7月に「いらないものはいらないんだ」で念願のアーティストデビューを果たした。普段のサバサバした話し声と歌声のギャップに、ファンからは「いい意味で期待裏切られた!」「予想より歌上手いし輝いてる!」といった絶賛コメントが寄せられ、デビュー曲のMV再生回数は現時点で100万回を超えている。先日、大阪・ヤンマースタジアム長居にて開催された『a-nation 2018』でパフォーマンスを披露したが、同イベントにYouTuberが出演するのは彼女が初ということで、今後の音楽活動の展開に注目が集まっている。

(3)みやかわくん

 「仲間と楽しいことをやる」という姿勢で、学生時代から趣味や特技の披露を中心とした配信を行っていたみやかわくん。「歌ってみた」動画で一気に認知度を上げ、昨年、アーティスト・焚吐とコラボしたことを皮切りに音楽活動が本格化していき、今年の6月にミニアルバム『STAR LAND』でユニバーサルシグマよりメジャーデビュー。同作のリード楽曲「スターランド」は、みやかわくんが初めて作詞・作曲を手掛けたもので、その他にも動画配信やライブのコンセプトなどを全て自身でプロデュースしており、チャンネル登録者数は現時点で54万人を超えている。

(4)スカイピース

 テオくんと☆イニ☆(じん)による2人組YouTuber。エンタメ系コンテンツを投稿する中で、フリースタイルラップや有名楽曲のアレンジカバーも披露している。もともと☆イニ☆は、ニコニコ動画に自身のラップを投稿する「ニコラッパー」として人気を集めていたが、2人組になったことで「音楽」と「企画もの」を組み合わせて発信するようになある。2016年7月のYouTubeチャンネル開設後、約1カ月で登録者数10万人を突破。そして活動スタートからわすか1年というスピードでシングル『スタートダッシュ』、今年2月にはメジャーデビューアルバム『にゅ~べいび~』を発表し、先日にはミニアルバムのリリースもアナウンスされた。

■YouTubeと音楽業界、現在の相関関係

 上記4組はどれも「音楽」に特化した動画投稿ではなく、自分の身近にある面白さを発信することから、YouTuberとしてのキャリアをスタートさせている。個人的に楽しいと感じたことを誰かに共有したい気持ちと行動力が彼らを発信者側に立たせたわけだが、もちろん気持ちだけでは大勢の心はつかめない。それに加え、投稿を重ねていく中で企画内容や動画編集の工夫といった部分も磨きつつ、さらに音楽を見せ方の一手段として取り入れたことが、今の膨大なチャンネル登録者数に繋がっている。

 世の中で流行する作品には「共感」性がつきものだ。音楽やYouTuberが発信する作品はその比重が大きく、特にYouTuberは共感性を生みやすい発信者の立場にいると感じる。というのも、今やYouTuberは「子供が将来なりたいランキング」で上位にランクインするほど若い世代にとって憧れの職業だ。タレントなら容姿が優れていたり、アーティストなら元から歌の才能があったりと、何か人よりも優れた能力が必要だという前提にとらわれることなく、動画投稿の技術さえ学べば誰もがYouTuberとしてのキャリアをスタートさせることができる。「自分にもできるかも」「やってみたい」というのもまた一種の共感の種なのだ。

 そして彼らの主戦場であるYouTubeは、今の音楽業界にとって大切な宣伝の場となっている。音楽を知る主要手段がラジオや音楽番組、雑誌だった時代を経て、インターネットや配信サイトが中心となっている現在、レコード会社はYouTubeの公式チャンネルを持ち、アーティストが作品をリリースする際にはYouTubeにMVがアップされる。楽曲が話題になれば再生回数が増えるし、再生回数が増えれば楽曲も話題になるというYouTubeと音楽業界の相関関係が成り立っている中、すでに高い共感性を獲得している、言い換えれば多くの視聴者やチャンネル登録者を抱えている音楽系YouTuberに、レコード会社からデビューの話が行くのは時代的に必然の流れである。

 そう考えると、多くの共感性を生むプロデュース力や企画力を備えたYouTuberがメジャーデビューすることには、CDが売れないと言われているこの音楽不況時代に新しいアプローチ方法で風を吹かせる可能性と期待が込められているのかもしれない。(渡邉満理奈)

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