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宇多田ヒカル「Too Proud」新リミックスでグローバルなコラボ 参加アジアンラッパー3名の実力

リアルサウンド

18/11/18(日) 10:00

 宇多田ヒカルが11月6日に「Too Proud featuring XZT, Suboi, EK (L1 Remix)」をサプライズリリースした。

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 このトラックは今年6月に発売された7枚目のオリジナルアルバム『初恋』に収録された「Too Proud featuring Jevon」のリミックスで、『Hikaru Utada Laughter in the Dark Tour 2018』のスタートを記念してリリースされたものである。オリジナルバージョンにはUKの新鋭ラッパー・Jevonをフィーチャリングしたが、今回のリミックスには韓国からEK、ベトナムからSuboi、中国からXZTとアジア各国から3名のラッパーが参加している。タイトル表記にある「L1 Remix」とはLanguage1 Remixという意味で、宇多田ヒカルおよび参加ラッパーの全員がそれぞれの母国語(Language1)で歌っていることから名付けられたという。宇多田ヒカルが選んだのは、いったいどんなラッパーなのか? 本記事ではこの3名のアジアンラッパーに迫っていきたい。

 まずは中国から参加したXZT。彼は最近中国で注目を集めている3人組ヒップホップグループ・Straight Fire Gang(以下SFG)のメンバーだ。アメリカの大学に在学中、同じく中国人留学生だったZigga、Feezyと出会ってSFGを結成した。彼らは当時「自分たちのリアルな生活を語ろう」というモットーを掲げて大学生活をテーマにした楽曲を作り、留学先だったLAとシカゴの留学生コミュニティをベースに活動していた。卒業後に帰国したXZTは、中国最大のメッセージアプリである「WeChat」の制作担当者として会社員生活をしながら音楽活動を続けた。しかしライブで熱狂するオーディエンスの声援に感動した彼は、本格的にSFGのアルバム制作に取り組むことに。

 そして今年ついにリリースされた彼らの1stアルバム『These Kids Climbing Wall』は大好評を受け、2度にわたって開催された全国ツアーでは合計18都市のすべてがソールドアウト。早くも今月にはEP『Lightning!!!』までリリースしている。彼らは最近のヒップホップに対し、多くのラッパーがリスナーとは隔たりのある話題をラップするため一般のリスナーには響かないと指摘。一方で彼らは障壁の前でもがく一般的な若者の視点でリリックを書き、それが共感を呼んでいる。例えば「First Rick」ではトレンドにこだわりすぎた奇抜なファッションを批判し、「Wall Facer」と「Wall Breaker」ではタイトルからも分かるように障壁に向き合った若者の苦悩を代弁している。本場アメリカから持ち帰った洗練されたサウンドもそうだが、若者の共感を呼ぶリリックこそ彼らが現在ブレイクしている理由と言えるだろう。

 ベトナムから参加したSuboiは“ベトナム・ヒップホップ界の女王”と呼ばれる存在だ。ホーチミンで育った彼女は、14歳の時にアメリカのヒップホップに影響を受けてラップを始めた。音楽を通して自然と覚えたという英語力を生かし、ベトナム語と英語の両方でラップをする。2009年にベトナムのポップスターであるホー・ゴック・ハーのシングルに客演したことをきっかけにブレイクした彼女は、2010年にソロデビューを果たし、2014年には自主レーベル<Suboi Entertainment>を設立。以降、インディペンデントアーティストとして活発に活動している。2015年にはアメリカの巨大フェス『SXSW』にベトナム人として初めて出演し、グローバルにスポットライトを浴びるようになった。

 さらに翌年、オバマ元米大統領がホーチミンで開催した若者とのQ&Aセッションに参加した彼女は、流暢な英語で言葉を交わしただけでなくベトナム語のラップまで披露し、世界中の音楽ファンの間で話題の的に。その後もアジアンカルチャーを扱うメディア「88rising」で紹介されるなど、国内外問わず注目度は上がり続けている。経験豊富なキャリアに加え、幅広いスタイルの音楽を取り入れる柔軟な感性を持っており、実に多様なスタイルのトラックをやりこなすところが彼女の最大の魅力だ。例えば去年リリースした「Người Ta Hiểu」ではメロウなジャズトラックで生き方について語り、最近リリースした「N-SAO?」では攻撃的なフロウで裏表のある人々を批判するなど、曲ごとに様々な顔を見せている。

 そしてEKは、現在韓国で旋風を巻き起こしている期待の新鋭ラッパーだ。ヒップホップグループ・Most Badass Asian(以下MBA)のメンバーとして2015年から活動を開始し、2017年にMBAとソロ名義でそれぞれ初のEPを出したばかり。インディペンデントの新人であるにもかかわらず、群を抜いた実力の高さで瞬く間に頭角を現し、韓国ヒップホップシーンの名だたるラッパーたちから引っ張りだこになった。特にベテランラッパーのHuckleberry PおよびスーパールーキーだったJUSTHISとコラボしたトラック「One of Them」では、韓国ヒップホップシーンでトップクラスのスキルを持つ2人に負けない派手なフロウで強烈な印象を残した。

 さらに韓国最大のヒップホップウェブマガジン2社が共同開催した『Korean Hiphop Awards 2018』では、有望な新人をピックアップする「KHA NEXT」に抜擢。このようにヒップホップシーンの中では定評があった彼だが、最近出演したラップサバイバル番組『SHOW ME THE MONEY 777』で見せた活躍によって大衆的にも爆発的に知名度を上げた。彼はレベルの高いスキルと一歩も退かないタフな姿勢で番組の参加者と視聴者を魅了。同番組内で制作されたトラック「GOD GOD GOD」も話題をさらった。優勝こそ果たせなかったものの、その場の誰もが熱狂するような素晴らしいパフォーマンスを披露し、1万3000人にも上る応募者の中から最終的にベスト12にまで残るという好成績を収めた。韓国内にはEKのネクストステップを待つ人々が大勢いる。

 以上のように、それぞれの国で活躍中のアジアンラッパーを集めた「Too Proud (L1 Remix)」は、複数言語によるフロウによって新鮮な魅力を見せた。なによりそのラインナップを組み立てた宇多田ヒカルに改めて感心する。とりわけXZTとEKについては母国でも今年ようやくブレイクしたという段階であることを考えると、他国のトレンドまで読み取る宇多田ヒカルの鋭い感覚と情報力に驚かされる。そして自身と並ぶ“クイーン”の位置づけにいるSuboiを起用し、J-POPでは滅多に見られない東南アジアのアーティストとのコラボレーションを見せたこと、新鋭とベテランのバランス、さらに性別のバランスまで絶妙に組み合わせた点などもさすがとしか言いようがない。宇多田ヒカルが日本以外のアジアのアーティストと初めてコラボした本トラックをきっかけに、今後もこのようにグローバルで新鮮なコラボが続くことを期待したい。(soulitude、鳥居咲子)

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