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ぴあ

アメコミ・ヒーロー映画に訪れた“多様化”の背景 イスラム教徒や韓国系のヒーローが仲間入り

リアルサウンド

18/7/22(日) 10:00

 もうすぐ『アントマン&ワスプ』が公開されますが、2008年の『アイアンマン』から
始まる、いわゆるアベンジャーズ系の映画=マーベル・シネマティック・ユニバース(MCU)の中で、女性キャラの名前が連名とはいえ、タイトルにうたわれた作品はこれが初めてであり、MCU初の女性ヒーロー映画と言っていいのではないかと思います。

 考えてみれば今年10周年を迎えたMCUは『ブラックパンサー』『アベンジャーズ/インフィニティ・ウォー』を成功させています。すなわち“黒人ヒーロー”、”悪のヒーロー(インフィニティ・ウォーの事実上の主役はサノスであり、彼なりの正義で動いていたわけですよね)”、そしてワスプの”女性ヒーロー”と多様な視点をMCUに持ち込んでいることがわかります。

 アメコミ・ヒーロー=たくましい白人男性というイメージがあります。実際初期のMCUはアイアンマン、マイティ・ソー、キャプテン・アメリカが牽引していたし、ワンダーウーマンが登場するまではDCの顔はスーパーマンとバットマンでした。しかし、ダイバーシティ(多様性)の波は、アメコミ・ヒーロー映画界にも確実に訪れています。

 ”女性ヒーロー”ものは昨年の映画『ワンダーウーマン』の大成功がきっかけになっていますが、この先も『キャプテン・マーベル』『ワンダーウーマン1984(原題)』(ワンダーウーマン続編)が製作中で、ブラック・ウィドウのソロ映画も進んでいます。マーベルは女性ヒーローだけを集めた、まさに”女アベンジャーズ”みたいな作品も企画中らしい(ヒーロー版『オーシャンズ8』ですね)。

 そう言えば今年公開された『デッドプール2』では、2人の女性ミュータントが恋人同士というLGBTな設定を盛り込んでいました。LGBTの要素は、この先のアメコミ映画にも積極的に取り入れていくらしいです。この『デッドプール2』の中でぽっちゃりした男の子が出てきて「太ったヒーローはいない、差別だよ」と言うシーンがあるのですが、実はいまハリウッドで、プラスサイズ(いわゆるぽっちゃり系)の女性超人が活躍する”フェイス”というアメコミの映画化がすすんでいます。

 『ブラックパンサー』の成功は黒人ヒーロー映画を台頭させそうですが、黒人という枠を超えて様々な人種のヒーローもスクリーンに登場予定。「シルク」という女スパイダーマンみたいなキャラの映画化も進んでいますが、彼女は韓国系アメリカ人。

 また「ミズ・マーベル」という、イスラム教徒のパキスタン系の少女が活躍する作品も映画化が検討されているそうです。アメコミ・ヒーロー映画が、こうしたダイバーシティを意識するのはもちろん『ブラックパンサー』は黒人観客の動員につながったし、『ワンダーウーマン』も女性映画として評価され、幅広い観客を集めた、というビジネス的な要素もあります。

 しかし、アメコミというのはかなり以前から、コミックの方ではダイバーシティなことを意識して盛り込んできたのです。スパイダーマンは今でこそアメコミ・ヒーロー界を代表するキャラですが、当時大人の男のヒーローが主流だったアメコミ界においてティーンの視点を持ち込みました。X-MENは人類に差別されるミュータントという設定を用いて人種問題・マイノリティ問題を取り上げました。

 女性超人を”スーパーヒロイン”といわず”スーパーヒーローウーマン”という言い方をすることもあり、女性が男性と同等に強い存在であることをアピールしていました。そもそもアメコミのスーパーヒーローの第1号であるスーパーマンは、アメリカ人ではなく宇宙からの移民です。マーベル・コミックの立役者であり、多くのヒーローを生み出したスタン・リー氏が「どんな奴がいたっていい、どんな奴だって輝き・活躍出来るチャンスがあるのだ。世界はそのくらい広い。だから一つの価値観で、自分とは違うものを弾圧・排除しようとするのが一番よくないんだ」という趣旨の発言をしていました。

 僕はこの”誰にでも活躍できる場所がある”というのが、アメコミ・ヒーロー物の一番素敵なところで、だからこそ長年にわたって人の心を惹きつけてきたんだと思います。その精神がようやく映画の方にも浸透してきたのではないでしょうか?(杉山すぴ豊)

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