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木ノ下歌舞伎「糸井版 摂州合邦辻」稽古の様子。

木ノ下歌舞伎「摂州合邦辻」、「みんなで舟を漕いでいるよう」に稽古中

ナタリー

19/1/20(日) 18:12

2月から3月にかけて上演される木ノ下歌舞伎「糸井版 摂州合邦辻」が、本日20日に横浜での稽古を終え、最初の上演地である京都に稽古の拠点を移す。ステージナタリーでは、横浜最終稽古の4日前に稽古場を訪れた。

「糸井版 摂州合邦辻」は、木ノ下歌舞伎とロームシアター京都による共同制作企画「レパートリーの創造」の第2弾。第1弾「心中天の網島ー2017リクリエーション版ー」に続き、FUKAIPRODUCE羽衣の糸井幸之介が上演台本・演出・音楽を務め、監修・補綴・上演台本を木ノ下裕一が担当する。

1月中旬に、木ノ下歌舞伎ではおなじみの、歌舞伎の映像を観ながら歌舞伎俳優のセリフや動きをすべてコピーする“完コピ稽古”を終えたカンパニーは、和やかな空気の中、糸井の上演台本・演出・音楽を前に稽古を行っていた。

仮道具であるビーチボールが用意された稽古場に、俳優たちは車座になって座り、糸井はギターを抱え、木ノ下は扇子を手に台本と向き合っている。「歌わなくていいから、もっと絶叫してみて」と糸井が声をかけたのは、俊徳丸役の田川隼嗣だ。夕日に極楽浄土を願う“日想観”のシーンで、田川は、病気のために目が見えなくなった俊徳丸が、海に沈む夕日に感情を吐露する様を歌声で表現する。

初めは床に座ったまま歌っていた田川だが、「もっともっと!」と糸井に求められると、「立ってみます!」とその場で立ち上がる。すると周りのキャストも「盛り上げよう!」と立ち上がり、笑いが起きる。その“盛り上げ”の効果か、田川の声はぐんと大きくハリのあるものになり、「いい声ー!」と稽古場にいる全員から声が上がった。

糸井の歌詞には、大坂の地名と共に天体や宇宙を感じさせる言葉が並んでおり、それらが音に乗ることで、さらに壮大な画を描き出す。糸井はギターを弾きつつ、キャストの歌声を聴き、その場で少しずつキーやテンポを変えていった。

続けて、現代の街中を思わせるオープニングの稽古へ。道端のホームレス、コンビニで買い物するサラリーマン、デパートのトイレにいるOLなど、ごく日常的な光景が、のんびりした調子の歌に乗せて描かれる。すると突然、内田慈演じる玉手が土居志央梨演じる浅香姫を打擲するシーンが挟み込まれ……。

糸井はそのシーンをセリフ付きでやったり、セリフなしでやったり、スローモーションでやったりと、さまざまな方法で試す。さらに糸井が「この前、(振付の)北尾(亘)くんがやっていた動きをこのシーンでやってみてもらえますか」と言うと、キャストは先ほどと同じ歌を歌いながら、床を這ったり、身体をぶつけ合ったり、脚を高く上げたり、動物的な動きを繰り広げる。曲は同じなのに、先ほどとはまったく異なるシーンが立ち上がり、糸井と木ノ下はその様を、時折言葉を交わしながら見つめていた。

その日は、糸井の台本と音楽、動きを一部用いつつも、楽器のチューニングをしているような状況で、俳優たちもそれを心得た様子で糸井のオーダーに即座に応えていた。稽古はこの後、“糸井版”をさらに追究すべく、京都で稽古を深化させていく。上演に向け、木ノ下は「まだ誰も見ぬ作品、それぞれの想像の中にしかないイメージを擦り合わせたり、継ぎ合せたりしながら、1つひとつ地道に具現化していく作業は、莫大なエネルギーがかかるものです」と語りつつ、「みんなで舟を漕いでいるような感覚です」「もう少し、待っててね!と舟の上から叫びたい、今はそんな気持ちです」と心境を述べている。木ノ下歌舞伎「糸井版 摂州合邦辻」は、2月10日に京都・ロームシアター京都 サウスホールにて開幕する。

なおステージナタリーでは、木ノ下歌舞伎「糸井版 摂州合邦辻」の特集を展開中。木ノ下と糸井が、「摂州合邦辻」へのアプローチについてさまざまに語っている。

木ノ下裕一コメント

木ノ下歌舞伎約2年ぶりの新作です。
目下、座組一丸となって、ごった返しながらの創作真っ最中ですが、まだ誰も見ぬ作品、それぞれの想像の中にしかないイメージを擦り合わせたり、継ぎ合せたりしながら、1つひとつ地道に具現化していく作業は、莫大なエネルギーがかかるものです。当然、重圧もかかります。しかし、こんなにスリリングで幸福な時間もなかなかありません。
そんな中、日々、糸井さんから、新しい台本や楽曲が届きます。それがまた、どれも素晴らしいのです。ああ、こんな「摂州合邦辻」が観たかったのだ、と思わせてくれるものばかりです。
役者さんも手練ればかり。糸井さんからの球を受けて、すぐさま形にしてくれます。
そうですねえ、みんなで舟を漕いでいるような感覚です。時に櫓(ろ)は重く、進みが悪い日もある。それでも櫓を手放さず漕いでいると、どこからか強い風が吹き帆を膨らませてくれる日もある。向こう岸には、まだ見ぬ「合邦」の世界が広がっている。そこには会いたかった玉手や俊徳丸もいる。お客さんも待っている。「もう少し、待っててね!」と舟の上から叫びたい、今はそんな気持ちです。

木ノ下歌舞伎「糸井版 摂州合邦辻」

2019年2月10日(日)・11日(月・祝)
京都府 ロームシアター京都 サウスホール

2019年2月15日(金)・16日(土)
愛知県 穂の国とよはし芸術劇場PLAT 主ホール

2019年3月14日(木)~17日(日)
神奈川県 KAAT神奈川芸術劇場 大スタジオ

作:菅専助、若竹笛躬
監修・補綴・上演台本:木ノ下裕一
上演台本・演出・音楽:糸井幸之介
音楽監修:manzo
振付:北尾亘
出演:内田慈、田川隼嗣、土居志央梨、大石将弘、金子岳憲、伊東沙保、西田夏奈子、武谷公雄、石田迪子、飛田大輔、山森大輔

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