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なぜジャニーズがバーチャルアイドルに? 芳賀ゆい、初音ミクなどの歴史から相性の良さを考える

リアルサウンド

19/3/3(日) 8:00

 先月2月19日、ジャニーズ事務所が動画生配信サービスで知られるSHOWROOMと組んで「バーチャルジャニーズプロジェクト」をスタートさせることを発表した。その第1弾としてバーチャルアイドルの海堂飛鳥と苺屋星空が活動を開始。CV(キャラクターボイス)を関西ジャニーズJr.のユニット・なにわ男子の藤原丈一郎と大橋和也がそれぞれ務める。早速生配信も始まった。

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 なぜ、いまジャニーズがバーチャルアイドルなのか? そう思うひともおそらく少なくないだろう。以下では、その理由を私なりに考えてみたい。

 まずバーチャルアイドルの歴史をざっとおさらいしておこう。

 さかのぼれば、バーチャルアイドルの発端は、1989年に伊集院光のラジオ番組で彼がリスナーとともにアイデアを出し合うところから生まれた芳賀ゆいあたりになるだろう。彼女は架空の存在だが、ラジオ出演、歌手、写真集、握手会などその時々で違う女性たちが役割を務め、あたかも「芳賀ゆい」というアイドルが実在するかのように見せていた。

 ここで重要なポイントは、「ファン=プロデューサー」になったということである。平たく言えば、ファンが望むようなことを素直にやってくれるところにバーチャルアイドルの魅力がある。この後、恋愛シミュレーションゲーム『ときめきメモリアル』のキャラクター・藤崎詩織や大手芸能プロダクションがデビューさせた伊達杏子などのバーチャルなアイドルが登場するが、それらはすでに出来上がった既製品として提供された。その点、「ファン=プロデューサー」の願望を十分に満たしてくれるものではなかった。

 そう考えると、2007年に音声合成ソフトから生まれた初音ミクが、ファンにとっていかに画期的なアイドルだったかがわかる。提供される素材をもとにユーザーが自分の好みでバーチャルアイドルを作り出せる。しかもインターネットの動画共有サイトで独自にファンを獲得することもできる。一般のファンが、プロデューサーの域を超えて造物主に近い感覚すら味わえるようになったのである。

 一方、こうしたバーチャルアイドルが人気になった背景には、応援するファン側の安心感を得たいという心理が働いているだろう。

 平成における生身のアイドルは、AKB48などのようにドキュメンタリー性が重視され、波乱万丈の物語を生きるようになった。そしてそのなかで努力し、頑張る姿にファンは共感する。だがそのおかげでファンは感動を味わえる一方、スキャンダルや卒業・引退など不測の事態に備え、いつも不安な気持ちでいなければならない。だが生身ではないバーチャルアイドルは、その点安心して応援できる。

 そうした安心感は、ジャニーズがショービジネスの世界でこれまでずっと提供してきたものでもある。歴史をたどれば明らかなように、ジャニーズの原点にはミュージカルを中心にした舞台がある。それは、現実の世界から離れて安心して楽しめるエンターテインメントの世界である。まずその点で、ジャニーズとバーチャルアイドルは相性が良い。

 加えて近年のジャニーズは、本格的にネットの世界へと活動の場を広げ始めている。その意味では、ジャニーズがバーチャルアイドルというアイデアにたどり着くのは必然だったとも言える。

 現在ジャニーズのネット進出を担っているのは、ジャニーズJr.だ。昨年2018年3月に正式スタートしたYouTubeの『ジャニーズJr.チャンネル』では、5つのグループが思い思いのオリジナル動画を連日アップしている。また、コンサートの生配信などを行う『ISLAND TV』がこの3月からスタートすることも先日発表された。予定のラインナップには、SixTONES、Snow Man、Travis JapanとここにもジャニーズJr.のグループ名が並ぶ。

 その背景には、2020年の東京五輪・パラリンピック開催を控えて世界から日本への注目が高まっていることがある。ジャニーズJr.によるユニット・2020の構想もあるように、自らの築き上げたエンターテインメントをこの機会に世界に発信したいという思いがジャニー喜多川には当然あるだろう。そこにジャニーズJr.に対する思い入れも人一倍強い滝沢秀明が新たにスタッフに加わって、いま述べたようなネット進出が加速していると推察できる。

 そしてその流れのなかで、ジャニーズ版バーチャルアイドルは誕生した。すでに始まっている配信は、SHOWROOMならではの視聴者とのコミュニケーションを交えたトーク中心の内容だ。その意味では、最近ブーム的な人気を博しているバーチャルYouTuber(VTuber)を思い出す。

 だが、独自の部分もある。それは、声の主があらかじめ誰であるかわかっていることである。最初に書いたように、キャラクターの声を演じるのは関西ジャニーズJr.の2人だ。彼らは彼らでコンサートや舞台、テレビなどに出演する。またファンならばしゃべっている姿もすぐに想像できる。そこが基本的には声の主を明かすことのないVTuberとは違う。

 VTuberの面白いところは、声の主を公表しないことによってキャラクターに比較的自由に個性を持たせられることだ。たとえば、猫耳のいかにも可愛らしいルックスのキャラクターが毒舌や過激な言葉を吐く。そんなギャップが人びとを惹きつける理由のひとつだろう。

 その点、ジャニーズ版バーチャルアイドルはキャラクターと声の主であるジャニーズJr.との距離感のとりかたに注意が必要になる部分もありそうだ。しかしそこは考え方ひとつでもある。声の主が最初からわかっていることを逆手にとって、他のVTuberにはないリアルとバーチャルの「一人二役」の面白さをより積極的に打ち出してもいいはずだ。

 つまり、今後盛り上がる展開を生むためには、「中の人」がわかっているという特徴を長所にしていく工夫が大切なのではなかろうか。それはもちろん演者であるジャニーズJr.の側だけに求められるものではない。バーチャルアイドルの元祖的存在である芳賀ゆいがそうだったように、ファン側がこの状況をいかに遊べるかにかかっているだろう。いずれにしても、ジャニーズの歴史のなかでこれまでなかったような可能性を持つ試みであることは間違いない。(太田省一)

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