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坂口健太郎と藤木直人の強い絆 『イノセンス~冤罪弁護士~』が問いかける弁護士としての“正義”

リアルサウンド

19/3/3(日) 12:00

 秋保(藤木直人)の妹・彩花(伊藤梨沙子)が殺害された事件で、有罪判決を受けた浅間大輔(鈴之助)は黒川拓(坂口健太郎)の幼馴染であったという事実が明らかにされた前回のストーリー。『イノセンス 冤罪弁護士』(日本テレビ系)第7話の冒頭では、拓が浅間の冤罪を信じていたことと、その根拠のない憶測に腹を立てながら、現在も弁護士としての拓をサポートし続けている秋保の複雑な感情が、彼自身によって和倉楓(川口春奈)に語られていく。冤罪であったかどうかが秋保にも「わからない」というのがポイントで、それはすなわち冤罪であった可能性を秘めているということだ。弁護士として「本当のこと」を追い求める拓の根っこにあるそうした事件の記憶。しかし今回のストーリーで拓に問われたのは、弁護士という職務を全うするうえで「本当のこと」を追い求めることの愚かさだった。

参考:鬼気迫る表情の坂口健太郎

 「青梅のカサノバ」と呼ばれる資産家・乗鞍権三郎(団時朗)が練炭による一酸化炭素中毒によって亡くなった事件で、殺害の容疑をかけられた妻の満里奈(川島海荷)。その弁護が、以前テレビで見たことがあるという理由で湯布院(志賀廣太郎)のもとに持ち込まれるも、彼はぎっくり腰になってしまい拓と楓が引き取ることに。満里奈は夫が無理心中を図ったと主張するが、彼女が事前に練炭を買っていたことや同じ部屋にいながら死を免れたことなどを加味して偽装殺人を疑われているという。とは言っても、そのどれもが状況証拠で犯行を裏付けるものではなく、拓と楓は裁判での勝利に確実に近づいていた。

 しかし拓は、満里奈と接し、事件の真相を追うなかで、彼女の「嘘」と殺害の動機たり得る「過去」を知る。いつも通り信念に従って「本当のこと」を追究すると、満里奈の犯行であったということを証明してしまうことになりかねず、弁護士として依頼人の要望に応えられないということに葛藤する拓。それでも、犯行動機である「過去」に直接関わる湯布院に弁護を依頼してきたことや、拓のブレない信念から、決死の大規模実験に挑んでいく。

 そこで明らかになるのは、結局のところ満里奈による偽装殺人であったという事実。拓は情状弁護に切り替えようと提案するも、それは彼女の意思には反しており、弁護を降りることに。しかし、最終弁論の観覧席で拓と楓が目にしたのは、犯行を自首する満里奈の姿だった。

 「本当のことを知りたいという動機で成り立つ弁護活動はない」。これは黒川真(草刈正雄)から拓に向けられた真理をついた発言だ。拓のブレない信念は、嘘か真実かに関わらず、ただ要望に沿って弁護をしてほしいと望む依頼人にとっては余計なお世話であり、弁護士という仕事の職分には反している。それでも、拓たちがこれまでに積み重ねてきた冤罪弁護には“正しさ”が必ず存在していたし、事実が明らかになることでたとえ苦しい現実が待ち受けていても、そうすることで依頼人が救われると拓は信じている。そしてこれは、納得のいく事実が明らかにならず、自殺していった幼馴染を冤罪だと信じ続けた拓の“救われなさ”に起因することでもある。

 過去の事件と現在の弁護が交差するなかで明らかになる秋保と拓の確かなつながり。事件における立場は違いながらも、ふたりは救われない感情を共有している。そうした彼らの関係にはじまり、方向性が見えなくなった拓に道筋を作った楓とのバディらしいやりとりや、湯布院とその相棒であった別府所長の兄との間で固く結ばれていた絆、そして刑事弁護を毛嫌いしていた法務弁護チームが、徐々に拓を温かく見守りだし、事務所内が愛らしい空気で満たされていることなど、登場人物たちの“連帯感”が『イノセンス』という物語の軸になってきている。彼らの強い絆が、救われなかった依頼者の心に寄り添うことになり、やがて彼ら自身の苦しみにも寄り添うことになってくれるのだろうと、そう願わずにはいられない。 (文=原航平)

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