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テレビドラマが映し出す“アイドルのあり方”の変化 『KBOYS』『マジすか学園』などから考察

リアルサウンド

18/10/31(水) 13:00

 ABC朝日放送テレビで放送されると同時にGYAO!でも各話とチェインストーリー(各話をつなぐショートエピソード)が配信されているドラマ『KBOYS』は、K-POPに憧れる高校生たちがK-POPアイドルを目指すという物語だ。

(関連:欅坂46の近況やAKB48ドキュメンタリーなどから考える、アイドルの“疲弊”を物語化する危うさ

 現在、第3話まで放送中だが、見ていて面白いのは、バラバラの個性を持った少年たちが集まり、一つの目標に向かって突き進んでいくという青春ドラマの王道となっていること。同時にドラマを見ることでK-POPの知識を学べる入門書的な作りとなっている。

 例えば、第3話では、新しいメンバーとして矢崎拓実(久保田康祐)が加入する。コミュニケーションのとり方が独特な拓実はマンネ担当と言われる。マンネとは韓国語で「末っ子」という意味でメンバー最年少のメンバーのことだ。日本でいうと末っ子愛されキャラとでも言うべきか。上下関係を重んじる韓国においては日常的にマンネという立ち位置が認知されている。K-POPにおいて、マンネはグループのムードメーカー的存在で、マンネ次第でグループのあり方が大きく変わることが説明される。

 他にもラップやダンスの重要性が描かれていてK-POPの入門書として楽しんでいる。

 同時に感じるのは、ストーリーから見える現在のアイドルのあり方だ。今は女性アイドルよりも男性アイドルの方が健全な物語を描きやすいのかもしれない。

 2010年代はAKB48に端を発した女性アイドルグループが席巻した。

 その形態は様々で、テレビに出るようなトップアイドルから、インディーズで活動する地下アイドル、地方で活動するローカルアイドルと玉石混交で、なんでもありの裾野の広さはアイドル戦国時代とも呼ばれた。

 ネットや現場等でおこなわれる握手会等のファンとの交流イベント、プロデュースを通して発揮されるユニークな音楽、現場を拠点にした独自の流通システムなど、アイドルを取り巻く状況は面白く、ネタの宝庫だ。しかし、ドラマや映画といったフィクションの形でうまく落とし込めた作品は、ほとんどない。それは、アイドルをめぐる現実があまりにも複雑かつスピードが早いため、すぐに状況が変わってしまうからだ。

 そんな混沌とした現実を正面から受け止めて、強度のあるフィクションに落とし込めたのは、おそらく連続テレビ小説(以下、朝ドラ)『あまちゃん』(NHK総合)だけだろう。

 それは宮藤官九郎の脚本と細かいディテールを積み重ねてきた井上剛たち演出陣の力あってこそ可能なものだった。だが、それでも、自分も含めた当時のアイドルファンは、『あまちゃん』をドラマとして面白いと言いながらも、自分たちが通っている現場との差異の方が気になって、現実との答え合わせにばかり、夢中になっていたように思う。

 この現実との差異ばかり語られるのはアイドルに限らず、今のドラマ全般の傾向だ。

 同時に何をやってもアイドルを目指す少女たちのドキュメンタリーになってしまうというのがアイドルドラマの本質だと言えるのかもしれない。例えばAKB48のメンバーが総出演したドラマ『マジすか学園』(テレビ東京系)は、不良ばかりの高校で頂点を目指して女子高生がケンカしているという荒唐無稽な物語だが、登場人物の役柄と本人の個性を一致させたため、一種のドキュメンタリーにもなっていた。

 AKBは『DOCUMENTARY of AKB48』というドキュメンタリー映画を制作しており、そこでは実際に起きたスキャンダルや東日本大震災で慰問する姿やライブで過呼吸になる生々しい姿が映されていた。この二作が、AKBを中心とする2010年代のアイドルの本質にもっとも迫れた作品であることは間違いない。

 今の女性アイドルは、激しい競争の中で女の子たちがすり減っていく様を残酷ショー的に見せる一方で、そんな状況で健気に頑張る姿を感動的なドラマとして描くというマッチポンプ的な側面がある。

 その残酷ショーの中には恋愛スキャンダルも組み込まれている。刑事ドラマなどにアイドルが登場する時はだいたい恋愛やゴシップのエピソードだ。

 そのため、本来、女性アイドルが担っていたはずの、夢に向かって仲間と突き進むようなピュアでストレートな物語が仮託できなくなっている。

 そんな中、イケメン宇宙人が本気でトップアイドルを目指すというユニークな設定の『ドルメンX』(日本テレビ系)や『KBOYS』といった男性アイドルを題材にしたドラマを見ていると、今は男性アイドルの方がピュアな想いを仮託できるのだと感じる。

 女性アイドルシーンが落ち着きつつある中、同じ方法論を用いた男性アイドルシーンが現在、盛り上がりを見せつつある。その流れがどこにたどり着くかはわからないが、『KBOYS』に可能性があるとすれば、技術の習得による成長の可能性と、憧れの先としての海外を描いていることだ。この10年、アイドル業界は過去のサブカルチャーをどうやってアイドルで再現するかという内向きの実験がおこなわれ、ガラパゴス化を加速してきた。それはすごくユニークな試みだったが、そろそろ日本のアイドルは、国外を意識して少年少女の成長の可能性を模索する段階にきているのかもしれない。(成馬零一)

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