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ELLEGARDENからONE OK ROCKへと受け継がれてきた“ヒーローのバトン”

リアルサウンド

18/8/28(火) 13:00

 8月15日、千葉・ZOZOマリンスタジアム。ELLEGARDENとONE OK ROCKのライブツアー『THE BOYS ARE BACK IN TOWN TOUR 2018』のファイナル公演に訪れた。

(関連:ELLEGARDENとONE OK ROCKの対バンを“必然”だと感じる理由ーー両者の歩みから考える

 ELLEGARDENにとっては約10年ぶりの復活ツアー。チケットは当然争奪戦だった。僕の周囲にもチケットを取れず悔やんでる人は沢山いた。高額転売とその対策、2,900円という破格の値段(ZOZOマリンスタジアムは4,500円)も話題になっていた。

 そして当日にTwitterでも書いたのだけれど、僕がこのライブを訪れたのは取材のためではなかった。メディアや関係者としてではなく、運良く当選したチケットを持った一人の“オールドファン”として会場に入った。なので、ここに書けるのも、客観的なライブレポートというより、あくまで僕の個人としての体験談と感想だ。

 ライブが終わったときの精神状態も、まったく冷静なものじゃなかった。

 席はスタジアム最上段。スタンドとアリーナの客席を見下ろす場所だ。なので始まる前は、俯瞰で、少し引いた目線からバンドの復活を見届けるようなモードになるのかと思っていた。正直、こんなに胸が揺さぶられるとは思ってなかった。途中、「Space Sonic」あたりで涙腺がヤバくなって、「風の日」や「Middle Of Nowhere」あたりでこみ上げてきて、後半の「金星」あたりでは頬を涙がつたっていた。

 世代という意味でいえば、ELLEGARDENは決して僕にとって“青春のバンド”というわけではない。彼らが活動を始め、人気を拡大していったときには、自分はすでに音楽雑誌の編集者やライターとして仕事をしていて、そろそろ30代に差し掛かろうとしていた。

 でも、“世代”とか、そういうことじゃないんだよな。

 ELLEGARDENというバンドはいつも、正直でいること、自由であること、理想を貫くこと、常識や普通みたいなものも含めてあらゆる抑圧に立ち向かい、その力を跳ね除けることを歌っていた。

 で、その考え方や価値観は音楽の中だけじゃなく、活動のあり方にもしっかりと表現されていた。だからこそ、多くの人たちにとって彼らは特別なバンドになっていた。そこに信頼があったからこそ、ELLEGARDENはこんなにまで待たれるバンドになっていた。

 10年前、僕が最後に彼らのステージを見たのは嵐のフジロックだった。自分のブログを読み返してみたら、活動休止の一報を受けて、こんな風に書いていた。

「やはり一報を聞いて、心のどこかに穴が開いたような、痛切な思いは禁じえない。彼らに託された期待の高さ、彼ら自身の真っ直ぐな誠実さ、聴き手一人一人との強固な結び付き……そういうものに思いを馳せると、簡単には言葉で言い表せられないような気持ちになる。それぞれが成長して、笑顔で戻ってきてくれることを祈る。」

 きっとあの場に集まった3万8千人も、チケットを取れなかった沢山の人も、そういう記憶を大切に抱え続けてたんだと思う。

 そして、彼ら4人もバンドマンとして誠実に歩み続けてきた。そのことも、集まった人たちはちゃんと分かち合っていた。だから 〈最後に笑うのは正直な奴だけだ/出し抜いて 立ち回って/手に入れたものはみんな/すぐに消えた〉という「金星」を歌った後に「いい歌詞だなあ」と細美武士が噛みしめるように呟き、「正直者はバカを見るというのが本当だったらどうしようと思ってたけど、誇らしいね」と言ったとき、ひときわ大きな歓声と拍手が上がったのだ。

 ONE OK ROCKのライブも、とても感慨深いものだった。

 彼らは単なるオープニングアクトではない。この日の細美武士のMCでも明かされたのだが、むしろONE OK ROCKがこの復活ライブを実現させた立役者だった。彼らがELLEGARDENの4人に話を持ちかけたことから今回のツアーが始まったのだ。

 だからこそ、ONE OK ROCKもその思いを爆発させるような、全力のパフォーマンスだった。世界中を舞台に戦い、数万人相手のライブも行ってきたバンドだからこその、スタジアムクラスのスケール感があった。すごく印象的だったのは、TakaがMCで「いろんな時代にヒーローみたいなバンドがいて、自分たちにとってはそれがELLEGARDENだった」と語ったこと。ELLEGARDENに救われてきた、と言ったこと。

 彼自身は言葉にしなかったけれど、その言葉の背後にはきっと、ONE OK ROCKが今の時代のヒーローたるロックバンドを真っ向から引き受けている自負もあったはずだ。

 そして、そういう熱いライブをONE OK ROCKがやったからこそ、ELLEGARDENもそれに呼応するステージを見せてくれたんだと思う。

 細美武士もMCで言っていたが、そもそも彼らはスタジアムに立つことを目指すようなバンドじゃなかった。デカくなることに、ロックスターに憧れるようなバンドではなかった。でも、細美武士は「ワンオクから一緒にやろうという話をもらって、この日だけはロックスターをやってみようかと思った」と話した。その言葉もすごく胸に迫った。

 この後、ELLEGARDENがどうなるかはわからない。4人にはそれぞれのバンドもある。

 でも、この日のライブは、ちゃんと未来につながる道を示していた。過去のノスタルジーに終わる場でも、ある世代の青春を分かち合うだけの場所でもなかった。ここ10年の日本のロックシーンで、ELLEGARDENからONE OK ROCKへと“ヒーローのバトン”が受け継がれてきたことを、強く感じさせるライブだった。

 そのことが、何より感動的だった。

■柴 那典
1976年神奈川県生まれ。ライター、編集者。音楽ジャーナリスト。出版社ロッキング・オンを経て独立。ブログ「日々の音色とことば」/Twitter

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