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『やすらぎの刻~道』1年にわたる放送がスタート! 倉本聰の新境地となった前作の“4つの驚き”

リアルサウンド

19/4/8(月) 6:00

 2017年に放送された帯ドラマ『やすらぎの郷』(テレビ朝日系)の続編となる『やすらぎの刻~道』(同)が4月8日からスタートする。放送は前作同様、昼の12時30分から50分までの月~金。放送期間はなんと1年。前作の2倍である。

【参考】『やすらぎの刻~道』八千草薫の体調不良により、風吹ジュンがヒロイン役に

 テレビ界に貢献した人々だけが入居できる高級老人ホーム・やすらぎの郷で暮す脚本家・菊村栄(石坂浩二)は、前作で亡くなった姫こと九条摂子(八千草薫)をモデルに、「道」のシナリオ執筆にとりかかる。同時に白河冴子(浅丘ルリ子)、水谷マヤ(加賀まりこ)、高井秀次(藤竜也)等、やすらぎの郷で暮す人々のその後も描かれる。

 「道」は昭和初期から現代までを描くドラマとなるようで、本編では菊村の脳内ドラマとして展開される。このパートには風間俊介と清野菜名が出演する予定で「道」だけ抜き出しても、朝ドラ(連続テレビ小説)でも成立するような内容だ。この二つのドラマが同時進行するとのことだが、1年という尺も含め、壮大な構想の作品となっている。

 事前情報だけみてもワクワクする要素が盛りだくさんの本作だが、まず予習ということで、前作『やすらぎの郷』の革新性について振り返ってみよう。

■倉本聰の最新作にして新境地

 『やすらぎの郷』は4つの意味で衝撃だった。一つは巨匠・倉本聰の最新作にして新境地だったこと。

 『北の国から』(フジテレビ系)で知られる倉本は山田太一や、亡くなった向田邦子と並ぶテレビドラマ史におけるレジェンド的存在であり、ドラマ脚本家の社会的地位を高めた作家の一人だ。

 当時の倉本は2008年の『風のガーデン』(フジテレビ系)以降、民放の連続ドラマは手がけておらず、文化人としてはともかく、ドラマ脚本家としては現役とは言い難い存在だった。そんな倉本が久々に新作ドラマを手がける。しかも半年間の帯ドラマだというのだから、二重の驚きだった。

■帯ドラマ枠をテレビ朝日が新設

 2010年代のテレビドラマは朝ドラ一人勝ちとなっている。15分の短い話を週6日放送する形態がSNS時代の視聴者にマッチし、逆に一週間に一度、決まった時間に45分弱のドラマを1クール(10話)放送するという連ドラの形態は視聴者のニーズとズレはじめていた。視聴率が欲しい民放各局は“朝ドラのような作品”をやりたくて仕方がなかったが、編成の都合でなかなか動くことができなかった。そんな中、テレビ朝日は本作を放送するために『やすらぎの郷』を放送する「シルバータイムドラマ」という帯ドラマ枠を新設したのだ。

 この、朝ドラに対抗する民放の帯ドラマ枠をテレビ朝日が新設したことが、第二の驚きである。

 尚、“シルバータイム”とは、若者向け番組が並ぶ夜中のゴールデンタイムに対する大人向けドラマを放送する枠という意味だが、それ以上に『やすらぎの郷』が、老人ホームを舞台にした高齢者(シルバー層)が主人公の作品だということを表している。

■高齢者たちのドラマ

 本作に登場する高齢者たちはとても現代的だ。ドラマ内に高齢者が登場すると遺産相続をめぐる骨肉の争いになり、妙に悟りきった仙人のような存在かかわいそうな被害者として描かれがちだったが、『やすらぎの郷』に登場する高齢者は俗っぽい人ばかり。

 肉体の衰えや死を間近に控えた哀しみは存在するものの、主人公の菊村を筆頭にみんな若々しく、女性に翻弄される菊村の姿は、まるで思春期の少年のようだ。さながら本作は、老人ホームを高校に見立てた全寮制の学園ドラマのようで、しかもコメディとして笑えるのだから素晴らしい。

 つまり第三の驚きは、老人ホームを舞台とした高齢者たちのドラマを描ききったことで、シルバードラマというジャンルを確立したことこそが『やすらぎの郷』における最大の発明だったと言えるだろう。

■昭和芸能史・テレビ史の総括

 そして最後の驚きは、このドラマ自体が倉本による昭和芸能史・テレビ史の総括となっていること。

 倉本の分身である菊村が語る芸能人の逸話の多くは実話をもとにしたものである。石坂浩二を筆頭に名立たるベテラン俳優が総出演していることは本作の最大の魅力だが、演者のバックボーンと役柄はかなりシンクロしている。そういった虚実の混濁した作りゆえに、ドラマでありながらドキュメンタリー的な面白さが存在したのだ。

 倉本は文化人として新聞や書籍を通してテレビへの苦言を発し続けてきた脚本家だが、それを外部からではなくテレビドラマという内側から描いたからこそ『やすらぎの郷』のテレビ批判は、真に迫ったものとして響いてくるのだろう。

 この4つの要素は『やすらぎの刻~道』にも、もちろん引き継がれる。しかも放送期間は前作の2倍となる1年なのだから、面白さもきっと2倍である。

 ドラマは長ければ長い程、独自の味わいが生まれる。『北の国から』はその最たるものだが、役者の加齢とともにダラダラと続いていく映像空間によってのみ語り得る物語がドラマにはある。だから『やすらぎの郷』の続編が延々と作られることは大歓迎である。出演者と脚本家が生きている限り、延々と続けてほしい。

(成馬零一)

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