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SEKAI NO OWARI、なぜ米倉涼子主演ドラマ『リーガルV』主題歌に? 世代超えたバンドへの進化

リアルサウンド

18/10/11(木) 19:00

 米倉涼子主演の連続ドラマ『リーガルV~元弁護士・小鳥遊翔子~』(テレビ朝日系)が、本日10月11日からスタートする。本作は米倉涼子が演じる資格を剥奪された女弁護士が法律事務所を立ち上げて活躍するドラマだ。

参考:SEKAI NO OWARI Saori、クリープハイプ 尾崎、WEAVER 河邉…ミュージシャンの小説を読む

 米倉は毎年、この時期(10月クール)は『ドクターX~外科医・大門未知子~』シリーズに出演している。『黒革の手帖』(2004年)で主演を務めて以降、テレ朝と米倉の蜜月は続いており、中でも最大のヒット作となったのが『ドクターX』シリーズだ。今年は久々に米倉がニューヒロインを演じるのだが、本作が成功すれば、シリーズ化もありえるため、放送前から大きな注目を集めている。

 そんな『リーガルV』の主題歌「イルミネーション」を歌うのがSEKAI NO OWARIだということも話題となっている。SEKAI NO OWARIは、2006年に結成した4人組バンドだ。当初は「世界の終わり」という表記だったが、このバンド名には00年代後半の若者の気分がとてもよく現れていたと思う。00年代後半にデビューしたバンドをみていると、それ以前とは違うセンスを有していると感じるものが多い。その筆頭が、SEKAI NO OWARIと、相対性理論(2006年結成)と、神聖かまってちゃん(2008年結成)で、音楽性こそ違うが、この三組はどこか同じ気分を共有していたのではないだろうか。

 それは戦略的には、CDが売れなくなった時代に、いち早く適応したバンドだったということになる。相対性理論は「ポストYouTube時代のマエストロ」と名乗り斬新なMVをアップし、神聖かまってちゃんは、いち早くニコニコ動画で配信をおこなった。

 一方、SEKAI NO OWARIの場合は、もっとフィジカルに寄ったものだった。それはメンバー4人で共同生活を送り、借金をして自前でライブハウスを作るというDIY精神に強く現れているのだが、こういう仲間たちと、秘密基地を作るような感覚は、ネット文化人がおこなっているSNSを入り口にしたコミュニティサロンのようで、とても先駆的だったと感じる。

 その意味で彼らの音楽はとても開かれていたが、同時に表現される世界は閉じていて、その閉じていることこそが、心地よかった。その心地良さは、当時のオタク系コンテンツで、よく使われていた“セカイ系”という言葉に象徴される気分ではないかと思う。

 セカイ系は、今では意味が広がりすぎて、何でもありのマジックワードとなってしまっているので解釈が難しいが、筆者は、思春期の少年少女の不安を、戦争や天変地異に結びつけ、中間にある社会のしがらみは拒絶して、最愛の人と引きこもっていたい、という感覚だと理解している。

 「世界の終わり」というバンド名を聞いた時にまず思い出したのは、セカイ系のことで、それをバンドとファンいう最小単位の関係に落とし込んだのが、彼らの表現だったのではないかと思う。同時に、こういった感覚からいち早く脱却したのも、SEKAI NO OWARIだったと言えよう。

 SEKAI NO OWARIは2011年にメジャーデビューした際、名前をローマ字表記に改めたが、この年は東日本大震災のあった年だ。思春期に誰もが考える甘美な破滅願望の依代(よりしろ)だったはずの「世界の終わり」は、大地震や原発事故が実際に起きたことで、生々しい現実の問題として、私達の前に姿を現れた。そういう現実と直面した時、より普遍的で万人が共有できる前向きで優しい価値観を提示する方向に、SEKAI NO OWARIは舵を切ったのだろう。

 その中核となっているのが、彼らの曲の根底にあったファンタジーというモチーフである。しかしその描かれ方は、少年の鬱屈した心象風景的なものから、もっと開かれたものへと変化していく。それはもっと万人が楽しむことができるアミューズメントパーク的なものだ。

 SEKAI NO OWARIはもともと、中高生に人気の高かったバンドであったが、その反面、当初は大人世代からの支持を得がたく、メジャーデビュー以降は中二病的なバンドと見られる向きもあった。しかし、そこで表現されていたのは、セカイ系的な思春期の鬱屈ではなく、異世界ファンタジーの世界を仲間たちと冒険したいというRPG(ロールプレイングゲーム)的なものである。それは「Dragon Night」などのMVに強く現れており、音楽性もバンドサウンドから大きく脱却した豪華絢爛なものへと変わっていった。

 だからこそ、彼らの表現は、世代を超えた普遍的なものとなったのだろう。それを踏まえれば、映画やドラマのタイアップが増えていったのは必然であり、『リーガルV』に起用されたことも、彼らの実績に対する当然の評価だと言えよう。

 最後に、「イルミネーション」が興味深いのは、配信によるリリースだということだ。星野源が連続テレビ小説『半分、青い。』(NHK総合)の主題歌「アイデア」を配信限定でリリースしたことが記憶に新しいが、こうしてテレビドラマとのタイアップ曲の配信リリースが続いているのを見ると、いよいよ日本も、CDの時代が終わり、配信メインの時代に変わりつつあるのだと実感する。そんな新しい時代の変わり目と、SEKAI NO OWARIがどう向き合うのかにも、注目している。(成馬零一)

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