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眩暈SIRENが表現する、暗闇に差す一筋の救済 楽曲を通した“感情の共有と共鳴”を見た

リアルサウンド

19/3/10(日) 16:00

 眩暈SIRENの全国ツアー『囚人のジレンマ TOUR 2019』が1〜2月にかけて開催。このツアーの最終公演が2月10日、渋谷WWW Xにて行われた。このツアーは昨年11月にリリースされた4th EP『囚人のジレンマ』を携えて名古屋、大阪、福岡、東京の4都市で開催されたもので、各公演にはThe Winking Owl、嘘とカメレオン、神はサイコロを振らない、秋山黄色といったアーティストがゲストアクトとして参加。ツアーファイナルとなった東京公演は眩暈SIRENと秋山黄色という注目アクトによる組み合わせとあって、大勢のロックファンが駆けつけた。

 ライブのトップバッターを務めるのは、1月23日に1stミニアルバム『Hello my shoes』をリリースしたばかりの秋山黄色。ギター&ボーカルの秋山に加え、ベースとドラムというシンプルなトリオ編成で、「やさぐれカイドー」からライブをスタートさせる。音源ではところどころに繊細さも見え隠れする彼の楽曲だが、ライブでは太い音と豪快なアンサンブルで会場の空気をグイグイと引っ張っていく。歌詞に合わせて感情を絶妙にコントロールする(ように見えた)、存在感が強い秋山の歌声は圧倒的なものがあり、たった1曲で魅了されたオーディエンスも多かったのではないだろうか。

 ライブは『Hello my shoes』からの楽曲に加え、アルバム未収録の「クラッカー・シャドー」「Rainy day」といったナンバーを交えて進行していく。ヒリヒリした90年代のUSオルタナティブロックと2000年代以降のJ-POP/J-ROCK、両者の良い部分を程よいバランスでミックスしたかのようなサウンドや、過去に経験したことのある痛みや孤独などに共感を覚える歌詞は、筆者のように決して若くはない層にもストレートに響くものがある。秋山の「本気でやるんで、ついてきてください」という言葉に続いて披露されたラストナンバー「猿上がりシティーポップ」では、何かを爆発させたかのようなエネルギーに満ちた演奏と歌で会場の熱を一気に上昇させる。これに応えるように、フロアのオーディエンスも前のめりな盛り上がりで場を盛り上げ、ステージからぶちまけられたカオティックなノイズを思う存分浴びたところで全5曲にわたるライブは終了した。

 続いてステージに登場したのは、この日の主役である眩暈SIREN。ステージ後方の暗幕が外されると、「私は自分が嫌いです」という独白をモチーフにしたSEとともに、そのSEやセリフに合った映像が映し出されていく。早くもここで独自の世界へと引き込まれたところでバンドメンバーが登場し、そのまま「ジェンガ」から勢いよくライブをスタートさせた。

 ダイナミックなバンドアンサンブルとメロディアスな歌からは、CDで聴く以上の説得力が伝わってくるものがある。曲によっては昨今のラウドロックとの共通点も見受けられるが、改めてこの日のライブを観て感じたのは言葉に対する強いこだわり、その言葉をより効果的に伝えるためのバンドアレンジと映像表現が、非常に独創的だということだ。

 エッジの効いたオオサワレイ(Gt)のギターと繊細さと儚さを感じさせるウル(Piano/Vo)のピアノが眩暈SIRENならではの世界観を構築し、その地盤を森田康介(Ba)&NARA(Dr)のリズム隊がしっかり固める。そして、京寺(Vo)はネガティブさの強いストレートな言葉をまるで吐き出すかのように歌い続けるのだが、ウルによるスクリームとの対比もあってか、そこにほんひと握りの希望が感じられる……そんな瞬間がこのライブ中、何度か感じられた。

 この感覚は何なのだろう……曲間に始まる京寺のセリフめいた独白やその流れで演奏される楽曲の数々からは、観る者の心に過去に経験した“痛み”を呼び戻す。しかし、今の自分はひとりではない。ステージには眩暈SIRENがいるし、周りには自分と同じような人間がたくさんいる。そこに覚える安堵感……この「感情の共有/共鳴」こそが眩暈SIRENというバンドに惹きつけられる理由なんじゃないか。京寺はMCで「もっともっと新しい曲を作って、聴いてもらって、またみんなに会えるように」とオーディエンスに告げたが、この言葉にも楽曲を通した「感情の共有/共鳴」に似たものを感じた。

 “闇”(それは文字通りの意味であると同時に、心が晴れないという意味も含む)から始まったライブも、終盤の「かぞえうた」あたりから光が射し始める。届けられる言葉の数々は決してポジティブとは言い難いものがあるが、そこと聴き手が共鳴することで見える“先”がある。少なくともこの日のライブを観たかぎりでは、そう前向きに捉えることができる。「故に枯れる」「思い出は笑わない」とクライマックスに進むにつれ、その思いはさらに強い確信へと変わる。バンドの演奏も激しさとエモーショナルさを増していき、最後はどこか希望や救いを感じさせる形でライブは幕を下ろした。

 眩暈SIRENは早くも次のツアー『夕立ち TOUR 2019』を4月からスタートさせる。全国8都市へと拡大したこのツアーの最終公演では、過去最大規模となるLIQUIEROOM ebisuでのワンマンライブも予定されている。ライブを重ねるごとに動員と会場の規模感を広げている彼らがなぜここまで支持されるのか、ぜひその答えを各会場で直接受け取ってほしい。きっと音源を聴いているときとはまた違う「感情の共有/共鳴」を得られるはずだから。

■西廣智一(にしびろともかず) Twitter
音楽系ライター。2006年よりライターとしての活動を開始し、「ナタリー」の立ち上げに参加する。2014年12月からフリーランスとなり、WEBや雑誌でインタビューやコラム、ディスクレビューを執筆。乃木坂46からオジー・オズボーンまで、インタビューしたアーティストは多岐にわたる。

■セットリスト
眩暈SIREN『囚人のジレンマ TOUR 2019』
2019年2月10日(日)渋谷WWW X
<秋山黄色>
01. やさぐれカイドー
02. Drown in Twinkle
03. クラッカー・シャドー
04. Rainy day
05. 猿上がりシティーポップ

<眩暈SIREN>
SE. Voice
01. ジェンガ
02. その嘘に近い
03. HAKU
–SE–
04. 偽物の宴
05. ハルシオン
06. 空気よりも透明な
–SE–
07. 夕立ち
08. 囚人のジレンマ
–SE–
09. かぞえうた
10. 故に枯れる
11. 思い出は笑わない

眩暈SIRENオフィシャルサイト

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