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ロックバンドの伝記映画は鬼門? 過去データから『ボヘミアン・ラプソディ』の「奇跡」を探る

リアルサウンド

18/11/22(木) 18:00

 前週1位に初登場した『ボヘミアン・ラプソディ』の勢いが加速している。先週末の土日2日間の動員は26万3000人、興収は3億8900万円。この数字は前週末との比較で110%という成績。公開から10日間の累計動員は92万9326人、興収は13億2144万円。これは今年2月に公開された『グレイテスト・ショーマン』と比べても107%という成績。今週末には本年度屈指の超強力タイトル『ファンタスティック・ビーストと黒い魔法使いの誕生』が公開されるため、3週連続で1位となることはないが、年越しを見据えたロングラン興行になることはほぼ間違いなし。『グレイテスト・ショーマン』の累計興収53億円を超える可能性も出てきた。

参考:『ボヘミアン・ラプソディ』爆発的ヒット! 勝因は「クイーン中心史観」と「イベントムービー化」

 「さすが、昔からクイーンの人気が高かった日本」とつい言ってしまいたくなるところだが、『ボヘミアン・ラプソディ』は世界中で大ヒットを記録中。決して「ビッグ・イン・ジャパン」ではないのだ。公開から3週目にして早くも全米で1億3000万ドルを突破した同作は、先週の時点で「音楽ものの伝記映画」のカテゴリーで歴代2位に(Box Office Mojo調べ。以下同様)。このペースでいくと、同カテゴリーにおける歴代1位作品となる見込みだ。

 さて、「音楽ものの伝記映画」でクイーンが現時点の歴代2位。「では1位は?」というと、LAのヒップホップ・グループ、N.W.A.の結成からメンバーの脱退、再集結までを描いた2015年の『ストレイト・アウタ・コンプトン』で、全米で約1億6120万ドルを稼ぎ出している。でもって、『ボヘミアン・ラプソディ』が抜き去った現在歴代3位の作品はカントリー・ミュージックのレジェンド、ジョニー・キャッシュとその2番目の妻で歌手のジューン・カーターの恋を描いた『ウォーク・ザ・ライン/君につづく道』。いずれもアメリカと日本では対象アーティストの人気以前にその音楽ジャンルそのものの浸透度に大きな差があるため、日本では比較にならないほど小さな規模での公開、累計興収で終わった作品だ。

 しかし、日本公開されればまだいい方。歴代4位の作品『I Can Only Imagine』にいたっては、今年の作品にもかかわらず未だ日本公開もされていない。もっとも、オクラホマ出身のクリスチャンロックのバンド、マーシーミーの2001年の代表曲「I Can Only Imagine」の誕生秘話を描いた作品と言われても、ほとんどの人は「知らんがな」と言うしかないだろう(自分もそうです)。

 その『I Can Only Imagine』を除くと、ロックバンドを描いた「音楽ものの伝記映画」で上位に顔を出しているのは、先週の同コラムでも触れたドアーズの『ドアーズ』(1991年)とビーチ・ボーイズの『ラブ&マーシー 終わらないメロディー』(2015年)くらい。ちなみに前者が「音楽ものの伝記映画」歴代15位、後者が歴代22位。いずれも、ギリギリ「ヒット作」と呼べる程度の結果しか出していない。そう考えると、『ボヘミアン・ラプソディ』がいかに特別な作品であるか、そして、このような「ロックバンドの伝記映画」がいかにハードルの高い企画であるかがわかるだろう。今回『ボヘミアン・ラプソディ』は大成功を収めたが、もしこれに便乗してハリウッドで「あのバンド」や「あのバンド」で新たな企画が動いているとしたら、製作サイドはそのことを肝に銘じておくべきだ。(宇野維正)

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