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AKB48「NO WAY MAN」で告げるアイドルの海外進出の幕開け 楽曲&パフォーマンスから考察

リアルサウンド

18/11/14(水) 8:00

 AKB48の54作目シングル『NO WAY MAN』の表題曲MVが先日公開された。作曲は前迫潤哉とYasutaka.Ishioの共作、編曲はAPAZZIが担当している。

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 共作曲で名を連ねている2名は、NMB48「普通の水」、乃木坂46「ANOTHER GHOST」、欅坂46「W-KEYAKIZAKAの詩」「ガラスを割れ!」「イマニミテイロ」といった最近の秋元康プロデュース系グループの楽曲にしばしばクレジットされているコンビで、メロディの自然さや、心を揺さぶる曲作りには定評がある。AKB48としては、今回の楽曲は前作「センチメンタルトレイン」から作風をがらりと変え、エレクトリックなタッチとビートの効いたリズムが主体となり、前々作「Teacher Teacher」あたりを想起させる路線。攻撃的なシンセが印象的なダンスナンバーだ。

 また、歌詞で核となっているのがこの部分。

〈レッドオーシャンなんてきっと面白くないだろう?〉
〈ブルーオーシャンこそがこれから目指す場所〉

 ブルーオーシャンとは、”ブルーオーシャン戦略”という未開拓市場を意味するマーケティング用語から引用したもので、逆にレッドオーシャンとは競合他社の多い市場を指す。ライバルの多いフィールドで戦うより、誰もいない場所を目指して突き進もうというフロンティアスピリット溢れる内容となっている。この歌詞を見て真っ先に思い付くのが、先日韓国デビューを果たしたIZ*ONEの存在だ。

 今作は10月29日に韓国でデビューしたIZ*ONEに専任となるHKT48宮脇咲良(センター)、HKT48矢吹奈子、AKB48本田仁美の3名のIZ*ONE専任前ラストシングルである。秋元康プロデュースにおいて、SNH48やJKT48など”地産地消型”として立ち上げられたグループは前例があるが、日韓合同のグループとして世界へ向けて活動することを視野に発足したものはない。つまり、彼にとっても、彼女たちにとっても(あるいはJ-POPにとっても)まったく新しい試みが今まさに行われているところなのだ。今回のシングルは、海外へ飛び立つそんな彼女たち3人へ向けた壮行会的な意味合いを持った楽曲となっている。

 同じグループの中でメンバー間の順位を争う総選挙のあるAKB48は、いわばレッドオーシャン。日本全体を見渡してみても国内のアイドル市場はすでに飽和状態で、数年間続いたアイドルバブルもすでに沈静化しつつある。そんな中で目が向けられているのが海外市場だ。BTS(防弾少年団)の成功例や、女性グループにおいてもTWICEなどの多国籍グループが盛り上がっている。世界的に見ればこうしたアイドルコンテンツはまだまだ伸びしろのあるホットな市場だ。現に、この「NO WAY MAN」のMVにも海外からのコメントがずらりと並ぶ。国内よりも海外から注がれる視線の方が熱いのだ。国内アイドルにとって海外市場はまさに”ブルーオーシャン”なのである。

 さて、このように”赤”と”青”を対比させた歌詞に対して、MVにはグレーを基調に”赤”を差し色にした衣装で激しくメンバーたちが踊る様子が映っている。灰色のスタジオは無機質で退廃的。ピタリと合った演技というよりはむしろ、それぞれが高難易度の振り付けに喰らい付くために必死にもがいているといった印象で、”レッドオーシャン”、つまり”血で血を洗う戦い”がダンスを通して繰り広げられているのだ。これが逆に美しく洗練されてしまうようでは元も子もないだろう。一糸乱れぬ動きよりも、それぞれが力強く体を動かす熱量の方が重要で、結果的にそれが全体として意味を帯びたものになればよい。ある意味、今作は海の向こうで華々しくデビューを飾ったIZ*ONEを引き立てるための、あえて”踏み台”役を買って出たような愚直なパフォーマンスである。

 海外で華々しくデビューした3名、日本で凌ぎ合う国内組。今後これを機に海外へと進出し、世界で活躍する日本出身のアイドルが続々と増えていくかもしれない。その幕開けを告げるシングルが、この『NO WAY MAN』だ。(荻原 梓)