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大手シネコンの映画鑑賞料金、相次ぐ値上げ “お財布に優しい”映画鑑賞を伝授

リアルサウンド

19/6/3(月) 10:00

 大手のシネコンの一部が6月1日より値上げした。

参考:映画割引カレンダー詳細はこちらから

 映画館の一般鑑賞料金は長らく1800円であったが、この値上げは実に26年ぶり。今回、値上げを発表したのは、TOHOシネマズ、109シネマズ、MOVIXなどのSMT系列にティ・ジョイ。東京テアトル系列の映画館も増税前の値上げ実施を検討しているというニュースもあった。大手シネコンではイオンシネマとユナイテッド・シネマ、コロナシネマワールドはまだ値上げの発表はない。増税前に何らかの動きはあるかもしれないが、一時的にでも映画館の料金がバラけることになる。いまだ値上げを発表していない会社はこの間の動員数に変化があるかを注視しているかもしれない。値段で映画館を選ぶ、という贅沢は東京近郊以外では難しいかもしれないが、わずかな期間でも値上げせずにいることも結構な企業努力なのかもしれないと思って、筆者はなるべく努力している映画館にお金を落としたいなと考えている。

 無論、値上げを一概に否定するのも間違いで、値段が上がった分環境が良くなり、より良い鑑賞体験が得られるならそれは良いことでもある。とはいえ、ほとんど人にとってお財布事情はシビアなものだと思うので、個人で対策できることを考えてみたい。

割引サービスだらけの日本の映画館
 もっともシンプルな対策は割引サービスの活用だ。日本の映画館の一般料金は、1993年から1800円なのだが、年間の鑑賞料金の平均単価は毎年1200~1300円代なのだ。なぜかというと、日本の映画館は割引サービスがたくさんあるからだ。

 例えば、今回値上げを発表したTOHOシネマズ一社だけでもこれだけの割引デーがある。
・毎月1日の映画サービスデー
・毎月14日のTOHOシネマズデー
・毎週月曜日のauマンデー
・毎週火曜日のシネマイレージデー
・毎週水曜日のレディースデー

 これに加えてシニア割引、障害者割引、夫婦50割引やレイトショー割引などもあり、シネマイレージカード所有者なら6本観ると次の1本は無料になる。月曜日から水曜日は、条件付きだが毎週何らかの割引サービスが受けられる。無条件の割引は毎月1日と14日の2日間だ。

 他のシネコンもそれぞれ独自の割引、会員制度を用意しており。全部合わせるとかなりの数の割引サービスが存在するのでないか。

 そこで、大手シネコンの割引サービスをカレンダーにしてみたらどうなるか試してみた。もしかして、ほとんどの日でどこかの映画館が割引をしているのではないかという気がしたのだ。

 カレンダーには、TOHOシネマズ、イオンシネマ、109シネマズ、ユナイテッド・シネマ、ティ・ジョイ、MOVIXの大手シネコンとすでに値上げを発表している東京テアトルグループの実施している割引施策を反映させてみた。

 まず、各映画館が実施している会員制度などの入会を必要としない割引デーをカレンダーに反映してみた。

 そして、次に会員やメンバーズカード所有者向けの割引デー。auマンデイやイオンのクレジットカード所有者向けの割引制度も反映させた。

 上記の2つを合わせてみた。すると、平日が埋まってしまった。土日を除けば毎日どこかで割引をしているわけだ。

 実際には、以上の結果にレイトショー割引や、会員特別割引、レディースデーなどもある。日本の映画館は割引だらけである。

 こんなに割引乱発しているなら、もう割引やめて通常料金を1400円くらいにしたほうがわかりやすくていいんじゃないかという気もするが、とにかく、スケジュールを工夫すれば結構安く映画を観られるということだ。みなさんも最寄りの駅や行動圏にある映画館の割引デーをカレンダーで一覧にしてみるといいと思う。

 どうして、こんなにも割引サービスが多いのだろうと不思議に思うが、割引が増え始めたのはシネコンが日本に上陸した90年代からだ。シネコン増加によって競争意識が高まった部分もあり、1995年に通産省(現・経産省)が発して映画の入場料金弾力化の要望に応じなければならなかったというのと、主として2つの要因があったと思われるが、そこで基本料金には手を付けずに割引サービスの多様化で競争しようとなるのは、いかにも日本的だなという印象を受ける。例えば日本の携帯電話の料金体系も異様に複雑だが、この割引の多彩さも似たようなものかもしれない。

 上記のカレンダーの下部にiCalのリンクも貼っておくので、自分のカレンダーにインポートした方は自由に使っていただきたい。しかし、割引が多すぎて、大事な仕事の予定などが見にくくなるかもしれないが。

コアな映画ファンにおすすめしたい日本映画テレビ技術協会
 いちいち割引スケジュールの確認などやってられないという人もいる。筆者がそうだ。そういうコアな映画ファンにオススメしたいのが、「日本映画テレビ技術協会」への入会だ。

 入会金、年会費は少々高いのだが(入会金は5000円、会員発行費は毎年1000円、年会費は毎年15000円)、月に3回以上映画館に行けば元は取れる計算になる。その他、入会特典もあるので、お得感はかなりある。ネットでの座席予約に対応していないが、都内ならばほとんどの映画館にてシニア料金で鑑賞可能となるお得な会員制度だ。

 こうした専門団体は、通常、その業界に従事していないと入れないものだが、日本映画テレビ技術協会は、入会資格を「映像技術に興味、関心のある個人」としている。映像関連の仕事に就いていなくても入会できるのだ。

 毎月届く定価1500円の機関誌「映画テレビ技術」も面白い。撮影監督から見た撮影現場の裏側や、俳優の魅力などを語ったインタビューなどもあり、ここでしか読めない情報が満載だ。

 筆者はこれに入会して、大いに利用している。スケジュールを考えなくてもいつでも1100円で映画を観られるのは大変開放的な気分だ。「今日映画観たい気分だけど1800円だから損だなー」とか思って躊躇することがない。

 一点注意してほしいのは、全国津々浦々で利用できるわけではないこと。「日本映画テレビ技術協会」と提携している興行組合支部のある都道府県のみが対象となる。対象地区は以下の通り。

<対象地区一覧>
札幌市・宮城県・埼玉県・千葉県・東京都・神奈川県・愛知県・ 京都府・大阪府・ 奈良県・兵庫県・広島県・福岡市・愛媛県・香川県・高知県・徳島県

 詳しくは、公式サイトの入会資格や、割引入場の詳細を観てほしい。

・増税後はどうなるのだろう
 今年の10月には消費税10%への増税が控えている。今回のシネコンの値上げは、増税対策なのではないかという意見もあるが、どの社の公式リリースにも増税に関しては触れられていない。増税のタイミングでさらなる値上げもあり得るのかもしれない。

 映画館の料金と消費税については、これまでは必ずしも連動してこなかった。今回の値上げが26年ぶりであることからわかるように、消費税が5%、8%と上がったにもかかわらず基本料金の値上げは行われていない(割引料金の改定などは行われている)。

 しかし、消費税が初めて日本に導入された1989年には、映画館は増税を理由に値上げをしている。当時の映画館の一般料金は1500円だったのだが、これが3%の消費税が始まった4月1日から1600円になっている。

 1500円の3%は45円なので、100円の値上げはおかしい。だが、映画館側はこの値上げを増税対策とは「公式」には言っていない。

 故・斉藤守彦氏は著書『映画館の入場料金は、なぜ1800円なのか』(ダイヤモンド社』で消費税導入時の映画館運営会社への取材の体験をこう書き残している。

「主要な興行会社に電話取材を行ってみた。すると、ほとんどの会社が『まだ分かりません』『未定です』『検討中です』との返事だったが、1社だけ『うちは料金を上げます。100円上げて1600円にします』との返事があった。

 当時まだ映画業界紙記者歴2年弱の僕は、そのことを正直に記事にした。ご丁寧に『消費税に対応して値上げ』などという見出しまで用いて、興行会社の名前と対応してくれた部長のコメント、名前も確か記載したと思う。すると翌日、当の本人から電話があり、お小言を頂戴してしまった。

 『君なあ、確かに値上げをすると言ったが、消費税に対応して、という風に書かれると困るんだよ』『はあ、でも確かにそうおっしゃってましたが・・・』『今業界では、こういう書かれ方をすると困るってことぐらい、君だって分かってるだろう!!』。いや、あまり分かってませんけど。『あたかも便乗値上げをうちの会社がするように思われるのは心外だ
!』」(P107)

 などというやり取りがあったそうだが、消費税施行の4月1日になったら、各社一斉に1600円に値上げしたそうだ。1500円の3%は45円なので、それを1600円にしたらどう見ても便乗値上げだと思うが、要するに「公式に増税対策で値上げです」と言うと、じゃあなんでさらに55円上乗せするのかと突っ込まれたら答えに窮するのだろう。

 さて、今回大手シネコンの一部が6月1日という、妙に半端な時期に値上げをすることになったわけだが、これが増税と同じタイミングだったら、おそらく斉藤氏と同じ疑問を抱く人間が続出することだろう。現在、消費税8%を1800円の内税で処理している日本の映画館だが、これを10%で計算し直すと、1834円となる。増税対策で1900円にしますと発表した場合、残りの66円はなんですか? と誰もが思うだろう。別に100円単位で値段を設定しなければならない決まりなどないので、1840円とか1850円という値段だって設定可能なのだが。

 まあ、今回の値上げはあくまで「設備負担や人件費などの高騰で利益が圧迫」されていることが理由であって、「公式」には増税は関係ない。ただ、1900円の8%内税は140円なので、10%で計算し直すと1935円であることは覚えておいた方がいいだろう。便乗値上げはあまり褒められたものではないと思う。筆者は、1840円のような「中途半端」な値段を設定してくる映画館が出てこないかなと期待している。割引だけでなく、基本料金にももう少し弾力性があってよいのではないだろうか。

 シネコン化や、邦画の成長によって90年代にどん底だった映画館の入場者数は、2000年、2010年代を通じて回復傾向にあったが、それも頭打ちになりつつある。令和という新時代は、日本は本格的な人口減少時代に突入するだろうから、ここからいかに映画人口を減らさないでいられるかが問われることになる。値上げの結果がどうなるかまだわからないのだが、映画館は一層の営業努力が求められるだろう。筆者も消費者としてもより努力していると思える映画館を選んでいきたいと思う。 (文=杉本穂高)

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