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eastern youth 吉野寿が明かす、20歳の原点と50歳の今「音楽とギターを使って生き延びてやる」

リアルサウンド

18/11/13(火) 20:00

 結成30周年を迎えたeastern youthが、3曲入りのニューシングル『時計台の鐘』を11月14日にリリースする。2015年にベーシストの村岡ゆかが加入して以降、今年のフジロックに出演するなどライブ活動を精力的に展開する彼ら。 TVアニメ『ゴールデンカムイ』第二期エンディングテーマ(TOKYO MXほか)である表題曲を含む本作でも、重層的なバンドサウンドを聞かせる一方で、歌詞の面では陰影に富んだ心情を歌い上げるなど、作詞作曲を手がける吉野寿の新境地を感じさせる。リアルサウンドでは、『ボトムオブザワールド』リリース時以来約3年ぶりのインタビューを行うにあたって、石井恵梨子氏をインタビュアーに迎え、バンドの現在地と吉野の作家的ルーツを探った。(編集部)

「内側だけで爆発してる人間のブルース」

一一今のeastern youth、リラックスというとニュアンスが違うんですけど、あまり気負いのない印象があります。

吉野寿(以下、吉野):そうですか。気負い、ないと思いますよ。なんかスッと抜けて自由になった感じ。今まではメンバー3人のバランスで歪みが生じたり、音楽的に行きたい方向も違うから、船頭多くして船山に登る、みたいなところもあったんですよ。それでメンバーが抜けることになって、そこで一回「もう辞めよっかな」と思ったし……極端な言い方すると、拾った命、みたいな感じで活動を繋いだので。そこからの開き直りみたいな気楽さはあるんじゃないかなと思います。

一一新しく入った村岡(ゆか/Ba)さんの影響もありますよね。ステージでも柔和に、いつも微笑んでいるような方ですし。

吉野:うん。ほわっとした感じの人ですよ。ただ、ミュージシャンとしてのキャリアはあるし、凄い人なんですよ、あの人。でも人間的な性格はあんな感じで。助かってます。今はあんまりぶつからないですしね。

一一少しずつ曲調も変わっていませんか。一言でいうと「限界でいきり立っていなくてもいいのだ」という前提があるような。

吉野:うーん……そういうことは何も考えないし、今までも考えたことはないんです。別に「尖っているものを」とか狙うこともないですし。ただその時その時のこれだっていう感じを、どうにか形にしてるだけで。

一一たとえば「負けてたまるか」みたいな強気の言葉が、今回の3曲には見当たらないんですね。歌詞だけを読むと打ちのめされていたり、未来に展望もなかったり、ちょっとネガティブな印象すらあって。

吉野:そのとおりです。打ちのめされて生きてきましたから。で、そういう「でも最後には負けねぇって言ってくれ」みたいな聴き手側からの願望? それは意図的に自分の中に入れないようにしてます。そのまんま、本当のことだけで作ればいいんじゃないかなと思って。そういう感覚の3曲にしたかったんですよね。こういうふうに俺は生きてますし、こういうふうに生きてる人もたくさんいると思うんです。もはや夢もない希望もない、ただただ運ばれて流されて生きている人たち。それを形にしておきたかったんです、ちゃんと。

一一今、夢も希望もないんですか。

吉野:希望は持ちたいと思ってますけど……ないですよ。夢とかもないです。もう……ねぇ? この先モテることもないだろうしお金が降ってくることもないだろうし。何もいいことはないんですよ。

一一……文字にすると身も蓋もないですが(苦笑)。

吉野:でも、だから絶望、死ぬっていうこととは違いますよね。希望があろうがなかろうが、今は今です。それなりに精一杯生きていくだけで。そんなふうに生きていくしかないのかなと思ってますよ。

一一最初にライブで披露されたのは「循環バス」でした。これは実際に引越して、循環バスに乗るようになったことから生まれた曲だとか。

吉野:そう。こんなにバスに乗る人生になるとは思わなかった。すげぇ乗ってます。今日も乗りました。バス……バス……バスですよ。

一一3回言いました(笑)。そこには何があるんですか。

吉野:「……くっそぉー、バス、ファック!」っていう感じ。

一一ははははははは!

吉野:今までは駅に降りたら歩いて家だったんですよ。でももう歩けない距離なんです。歩けなくはないけどけっこうかかるんで、駅からさらにバス、さらに流されて遠くに行かなきゃいけない。で、バスはなんせ暗いんですよ。雰囲気も暗いし実際の照明具合も暗い。なんか空気も重くて。微妙な揺れとエンジン音、そして遠くに運ばれていく人たち。もうあの倦怠感というか。でもバスに乗る……乗らなきゃ帰れない……乗ります、っていう。

一一この曲には〈もどかしさにふと諦めてしまうのさ〉っていう歌詞があって。もう「負けねぇ」とか言ってられない、バスに乗るしかないんだっていう感覚ですか。

吉野:うん。でもそういうことって日々多いですよ。もちろん「よし、やるぞ! どこにだって行けるんだ!」と思ってはいるんです。誰かに止められてるわけじゃないし、行こうと思えば行けるって実際わかってる。でもなーんか足取りが不器用で、上手く前に進めなくて、もどかしくて。ぐにゃぐにゃやってるうちに「……まぁいいや」って諦めてしまう、その繰り返し。「またいつか。まぁいずれ」って思ってるうちにバスは来ちゃうし乗っちゃうんです。で、それが悪いことだとも思ってないんですよね。そんなもんだよって感じです。

一一虚勢を張らなくなっているんでしょうか。勝手なイメージですけど、吉野さんといえば絶対に屈しない人、負けを認めない人、なので。

吉野:そーんなことないですよ? このザマです。負けまくってます(苦笑)。ほんとに勝ってたらバスに乗ってない、ベンツとか乗ってますよ。でもそうやってバスの中で感じる静かな侘しさ……侘しさの爆発みたいなものが歌になっていって。傍から見れば俺もただバスに揺られてる人ですけど、心の中はもう絶叫。沈黙の大絶叫っていうか、侘しさの半狂乱って感じ。もう嗚咽がこみ上げるような気持ちになるんだけど、それは表面には出てこないんです。内側だけで爆発してる。そういう人間のブルースですよ。

一一ただ、曲調は全然寂しく聞こえないんですね。メロディラインもそうだし、あとは村岡さんとのツインボーカルであることも大きい。

吉野:そうでしょうね。メロディ自体にも爆発力があるから。あと、彼女はもともと弾き語りの人なんで、歌えるんですよ。そりゃ使えるものは全部使いたいですし、これからもっと入ってくると思ってますよ。明るいですもんね。女性の声が入ってくると音質的にパアッと明るくなる。何もブルースは男にだけあるわけじゃないですからね。女性にも当然あるものですから。

一一同じように、男性の中にも女性性ってありますよね。この曲には母性みたいなものも感じるんです。強がることもなく「それでも生きていていいんだよ」って背中を押してくれるような。

吉野:あぁ。そうですね。じゃないと俺自身が生きてけないですから。自分に対する子守唄じゃないけど、そういうニュアンスはあるのかもしれない。

一一そして表題曲は「時計台の鐘」です。タイトルとジャケットを見て、札幌時代の歌なのかと一瞬早合点したんですけど。

吉野:吉野:あぁ、でもあるでしょうね。アニメーションの主題歌(TVアニメ『ゴールデンカムイ』第二期エンディングテーマ)で、そのアニメ作品が北海道の、アイヌの関係しているお話だし、なんとなくそういうイメージのスイッチが入ったんでしょうね。やっぱり心の底には札幌にいた頃の何かがあるんですよ。札幌には6年間、まぁ学校は早々に辞めたから17から住んでいて。当時いろんな刺激とか出来事がありましたけど、それを象徴してるのがあの鐘の音で。住んでたアパートは時計台から近くて、定期的に聞こえるんですよ。乾いた音なんですよね。カーン……カーン……って。で、俺は仕事もしねぇし腹は減ってるし、でも働きたくねぇし将来の展望も見えねぇ。この先どうすんだろうって。うん……侘びしかった。その象徴の音ですよ。それが未だに心の中で鳴り止まないっていうか、ずーっと鳴ってる感じがする。

一一当時のことは「夢があって楽しかった」とは語れないんですか。

吉野:語れないです。夢なんてないですよ、そんなの。バンドで一旗揚げるなんて言える音楽性じゃないし、当時は尚のこと「ハードコアで食えるなんて冗談じゃない」っていうような時代で。もう、ただの雑音! それに賭けてただけですよ。それこそ子供の頃からいわゆる世の中……子供だったら学校ですけど、そういうものを白眼視してましたから。ほんとに馴染めなかったし、憎めば憎むほど孤立するし、「全員ぶっ殺す」と思って生きてきた少年時代で。その具現化がバンドですよ。中1くらいまではどうアウトプットしていいかわからなかったけど、エレキギターっていう良いものをもらったんですよ。あれを弾くと、憎しみみたいなものが形になる。身体も華奢なんで体力面では殴っても勝てない。だったらこのギターで殺すしかないだろうと。そうやって始めた反撃ですよ、多数派への。

【eastern youth】「時計台の鐘」MV(TVアニメ『ゴールデンカムイ』第二期エンディングテーマ

「100回クジ引いて、ハズレっぱなしっていうのがいい」

一一そこからeastern youthに発展するのがハタチの頃。

吉野:気持ちはおんなじでしたね。今もずっと一緒。要するに「冗談じゃねぇよ、殺されてたまるか」ってことですよ。黙ってると殺されちゃいますから。どうにか殺されないために押し返す。

一一殺されるというのは、何かの比喩ですか。

吉野:いや、本当に押し潰されるんです、世の中に馴染まない人間っていうのは。どこにも属せない人間は排除されて、村八分にされて、そいつが死ぬように仕向けられていく。周りの奴らは実際には手を下さないし、そいつが負けても「自分で死んだ」って言うんですけど、ほんとは殺されてるんです。そういうのがアタマにくる。冗談じゃねぇよ、なんでお前のために俺が死ななきゃいけないんだって。「お前が働かないから自業自得だ」って言われても「自業自得だろうが何だろうが俺は死なねぇからな?」ってことですよ。そのために俺には音楽とギターが要るんですよね。それ使ってまんまと生き延びてやるぞ、っていう。ほんと単刀直入に単純化して言うと、未だにやってることはそこに尽きると思いますよ。

一一それが30年変わらないって驚異的だと思います。

吉野:ほんとどうかしてるんでしょうね(苦笑)。

一一大人になると、ある程度許容できるものも増えてくるじゃないですか。

吉野:や、俺もだいぶ丸くなったし「人にはいろいろ事情もあるよね?」って思えるようになりましたよ。だけどやっぱ……人に決められたくないんです。押し付けられたくないんです。「こういうもんだよ」って言われても自分で掴んでみてそうだと思わない限り、それは自分のものにならないんです。誰かが成し得たことがあって「もう結論も出てるからお前も従え」って言われても、自分で掴み取らない限りは意味がないんです。押し付けられてたまるかと思ってる。ほんとに簡単なことでも、みんながわかってることでも、自分で「あぁ、そうなんだ」って思うまでは納得できない。だからこんなに悪足掻きしてるんでしょうね。

一一今も、そこまで押し付けられる声や空気を感じますか。

吉野:感じるね。すごく感じます。ほとんど全部押し付けに聞こえる。それは俺の性格的な歪みだとも思いますけど、それだけじゃない部分も絶対にある。「そんなの常識、みんな知ってことだよ」とか言われても困るんですよ。「感動をありがとう」「あの感動をもう一度」とか、うるせぇなってことばっかり。みんなで共有する高揚感みたいなものを「感動」と呼ぶなんて、ロクなもんじゃない。そんなもん押し付けられてたまるか。そういうことをなんとか曲にしてるような気がしますね。なんとか歌にすることで実感を掴み取ろうとしてるだけ。だから空虚だったりネガティブに思えるような歌詞っていうのも、これが俺の実感の掴み方だからであって。

一一ええ。言葉はしょぼくれているようでも、曲は全然そう聞こえない。3曲目は「歩いた果てに何もなくても」ですけど、本当にここには何もないとは思えないですし。

吉野:いや、そんなことないですよ? この先に何があるかなんてわからないし、結局何もないんですよ。最後は死ぬだけですから。

一一……また身も蓋もない言い方ですね。

吉野:でもそうですよ。死ぬまでずーっと過程ですからね。辿り着くっていうことはない。もちろん「何かあるんじゃないか?」とは思ってますけど、でも何もなくても歩きますよ。歩くしかない。実際に毎日、時間がある時はけっこうな距離を歩くんですけど、その行為には目的がないんです。

一一散歩?

吉野:散歩、と言われるとね……ちょっと心外なんですよ。そんなのんびりしたもんではない!

一一ははははははは。

吉野:よく言われる。「お散歩ですかぁ?」って(笑)。お散歩って、お爺さんが「いい天気だなぁ」とか言いながら日向ぼっこしてるようなイメージですけど。そんな生易しいものではない。何なのかは自分でもわからないですけど、ただ歩くことを自分に課してるんですよ。とにかくヘトヘトになるまで歩く。目的はないんです。ただ2時間くらい歩いて帰ってくるだけ。

一一それは確かに散歩じゃない(笑)。ウォーキングって言葉も心外ですか。

吉野:ウォーキング……と言われると、まぁ許してやろうって感じ(笑)。でもそんな心境でもないんですよね。めちゃくちゃ早足で歩いてて、そこに意味や目的なんかない。なんだかわかんないけど歩く。だって家で座っててもしょうがないし、ドアを開けないと部屋の中だけの観念で完結しちゃうんですよ。でも外に出ると人がいて、営みがありますから。ただ歩くだけでも世の中と関われますよ。やっぱり一人じゃ生きていけないし、俺も社会っていうものの中で生きていくしかないんですから。ただ、関われば関わるほど自分に還っていくところはあって。人と出会えば出会うほど孤独になっていく。やっぱり山の中の孤独とは違いますよね。

一一あぁ。雑踏のほうが孤独だったり。

吉野:うん。ほんとに砂漠でひとりぼっちだったらせいせいすると思う。どうしようもないもんね。あぁもう死ぬんだなって。でも社会の中にいると他の人との違いを否応なしに感じないといけない。「なんであの人はできるのに俺にはできないんだ」「あの人は持ってるのにどうして俺は持ってないんだろう」とか。そうなると「自分はどうしてこうなんだろう」ってことを考えざるを得ない。だけど「いいんだよ、それで」とも思ってるから、それが今日話したことに結びついてるんだと思う。

一一何もなくていい、夢も希望もなくていいんだっていう。

吉野:そう。「何かなかったらダメなんですか?」っていうこと。結果とか成果を出さなきゃいけない強迫観念みたいなもの、なくてもいいと思ってる。何か掴んだところで時間は過ぎ去っていくし、それは手の中にとどまってくれない。そしたら次に向かうだけだし、成果が掴めなくても歩くしかない。100回クジ引いて100回ハズレでもいいんじゃねぇの? 100回クジ引いてハズレっぱなしっていうのがいいじゃん。そこに価値があるんじゃねぇの? って思ってる。そして性懲りもなく101回目をまた引くわけですよ。そういう粘り強さが一番重要なんじゃねぇの? って。だからことさら何にもないって歌うんじゃないかな。「空っぽ? いいじゃないですか。大丈夫だよ!」って。

一一そう言えるのは、今のeastern youthに対する自信とも取れます。

吉野:どうだろう? そんなことも深く考えてはないです。そん時そん時に精一杯やるだけ。ライブの日は一曲一曲を精一杯やるし、それが終わったら「終わった! 以上、捨て!」って感じですね。過ぎたものは残像になるし実態も何もない。あるのは今、今からのこと。「今までこれだけやってきたから」みたいなことはまったく関係ないと思ってる。

一一今、まさにeastern youthは30周年イヤーですけども。

吉野:そこも何も感じないですよ。そりゃまぁ30年って言われたら、「ずいぶんしつこくやってきたね?」とか「案外しつこい性格なんだな、俺」っていうのはありますけど(笑)。しつこいのは恥ずかしいことですよ。できりゃ伏せておきたいくらい。めでたくない。

一一でも若いバンドから見れば、30年続くっていうのは憧れでしょう。

吉野:いやぁ、そんなもんに憧れてるようじゃダメだよ! そんな暇があるなら、やるべきことやりなさいって。やってるうちに30年くらい経つから。だいたい人に憧れるっつうのが間違ってますからね。憧れたところで同じにはなれないんだから、絶対(笑)。

(取材・文=石井恵梨子)

■リリース情報
シングル『時計台の鐘』
11月14日(水)発売
定価:¥1,296

<収録曲>
1.時計台の鐘
2.循環バス
3.歩いた果てに何もなくても

■ツアー情報
『eastern youth全国・巡業ツアー
極東最前線/巡業2018~石の上にも三十年~』

9月23日(日)千葉 LOOK 17:30/18:00  ¥4,000(ドリンク代別)
9月29日(土)京都・磔磔 17:30/18:00  ¥4,000(ドリンク代別)
9月30日(日)金沢 GOLD CREEK 17:30/18:00 ¥4,000(ドリンク代別)
10月6日(土)札幌 cube garden 17:30/18:00  ¥4,000(ドリンク代別)
10月27日(土)仙台 CLUB JUNK BOX 17:30/18:00  ¥4,000(ドリンク代別)
10月28日(日)盛岡 the five morioka 17:30/18:00  ¥4,000 (ドリンク代別)
11月3日(土)新潟 CLUB RIVERST 17:30/18:00  ¥4,000(ドリンク代別)
11月4日(日)長野 LIVE HOUSE J 17:30/18:00  ¥4,000(ドリンク代別)
11月10日(土)福岡 DRUM Be-1 17:30/18:00  ¥4,000(ドリンク代別)
11月23日(祝)広島 4.14 17:30/18:00  ¥4,000(ドリンク代別)
11月24日(土)岡山 ペパーランド17:30/18:00  ¥4,000(ドリンク代別)
12月1日(土)梅田CLUB QUATTRO 17:30/18:00  ¥4,000(ドリンク代別)
12月2日(日)名古屋 CLUB QUATTRO 17:30/18:00  ¥4,000(ドリンク代別)
12月8日(土)渋谷 TSUTAYA O-EAST 17:00/18:00  ¥4,000(ドリンク代別)

eastern youth オフィシャルサイト