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『コード・ブルー』成功の理由は“妥協なき追求”にあり? 劇場版ヒットの必然性を解説

リアルサウンド

18/8/12(日) 10:00

 7月27日に公開された『劇場版コード・ブルー -ドクターヘリ緊急救命-』が好調だ。

 映画興行ランキングは2週続けて1位を獲得。興行収入は36億を超えた。8月17日からは、MX4Dと4DXでの上映が決定しており、まだまだ勢いは止まらない。

 『コード・ブルー -ドクターヘリ緊急救命-』(フジテレビ系、以下『コード・ブルー』)は2008年に1st seasonが放送された医療ドラマで、当時はまだ知られていなかったドクターヘリをモチーフにした作品だった。フライトドクター候補生の藍沢耕作(山下智久)たちが過酷な現場を経験することで医師として成長していく姿が高く評価され、テレビドラマは3rd seasonまで作られ、この度、初の映画化となった。

 筆者は『劇場版コード・ブルー』のパンフレットの取材・監修を担当しており、出演者やスタッフのインタビューに立会い、1st seasonから劇場版にかけて『コード・ブルー』がどのように作られてきたのかについて伺っている。その結果、思ったことは、劇場映画のヒットは、ある種の必然だったということだ。

参考:戸田恵梨香が貫いた緋山美帆子の“愛情深さ” 『劇場版コード・ブルー』で見つけた進むべき道

 まず、成功要因として切り離せないのが宣伝だろう。関東地区では映画公開の前から1st seasonから3rd seasonまでのテレビドラマが再放送されていた。特に3rd seasonは深夜にも再放送し、フェロー(新人医師)の灰谷俊平(成田凌)のエピソードを追加した『コード・ブルー 特別編 -もう一つの戦場-』も放送。フェローたちを主人公としたスピンオフドラマ『コード・ブルー -もう一つの日常-』も5夜連続で放送し、他にもフライトドクターのドキュメンタリー『実録ドクターヘリ緊急救命―命の現場最前線―』も放送した。

 バラエティ番組にも山下智久ら出演者が宣伝のために出演し、すさまじい量のタイアップ企画がおこなわれていた。これだけの物量を投下したのだから、注目するなという方が無理な話である。

 しかし、どれだけ宣伝量が多くても、作品の世界観を壊しては台無しだ。そのため統一されたイメージを打ち出すためのクオリティ・コントロールが必要となる。宮崎駿や細田守のアニメ映画は宣伝における統一感があり、それが強固なブランドイメージを作り上げ、観客にとっては信頼の担保となってきた。『コード・ブルー』もそれは同様で、テレビシリーズからの統一された世界観とブランドイメージを打ち出してきた積み重ねが、劇場映画のヒットへとつながったのだ。

 これは、プロデューサーの増本淳の力だろう。増本にとって『コード・ブルー』は初の単独プロデュースとなる作品だった。プロデューサー補の時代に『白い巨塔』、『救命病棟24時』、『Dr.コトー診療所』(全て、フジテレビ系)といった医療ドラマを手がけた増本は、そこで得た経験を元に『コード・ブルー』の企画を立ち上げた。

 『コード・ブルー』で増本が最初におこなった仕事は、ドクターヘリを中心としたリアルな医療ドラマの世界を作り上げるということだった。そのために綿密な取材をおこない医療監修の医師との意見交換を重ねてきた。その上で、フィクションでしかできないエンタメ作品を作りあげた。

 言葉にすると単純だが、これを徹底することは、とても困難なことである。面倒な手続きを一つ一つクリアしていく増本の妥協なき姿勢が本作の完成度を高めている。それは監督の西浦正記も同様である。

 1st seasonからチーフ演出を務めている西浦は、『コード・ブルー』の医療場面はドキュメンタリーのようにリアルに撮り、ドクターヘリの飛ぶシーンはロボットアニメのようなケレン味たっぷりに描いており、そのリアルとフィクションのバランスは絶妙である。

 同時に彼らの作品には、独自の毒っ気がある。本作で言うと、フライトナースの雪村双葉(馬場ふみか)の母親(かたせ梨乃)がアルコール依存症となって登場するシーンはショッキングだが、同時に「気まずい笑い」とでも言うようなブラックユーモアもあり、単純な感動大作では終わらない奥深さとなっている。

 つまり増本Pと西浦監督の妥協なき追求が、『コード・ブルー』を成功に導いたのだ。

 映画版の評価が割れるとすれば、藍沢たち5人の成長を描いたテレビシリーズの総決算として作られていることだろう。CMを見た観客の中には、成田空港や海ほたるを舞台にしたパニック映画を期待した人も多かったかもしれない。実際、成田空港や海ほたるの場面は映画として見応えのあるものに仕上がっているだけに、尺が短いのが、もったいないとも思った。

 独立した映画であることよりも、『コード・ブルー』らしさを優先したのは本作らしいと思うが、同時に、これだけの作品を作るチームが、パニック映画を作ったらどんなものになるのだろうかとも考えた。ドラマでも映画でもいいのだが、例えば『シン・ゴジラ』のような映像作品を作ったらどうなるのか? 本作を見ていると、そんな期待が膨らむ。

 『コード・ブルー』はしばらくお休みかもしれないが、圧倒的な力量を示した増本たち制作チームが次に何を手がけるのか、とても楽しみである。

(成馬零一)

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