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松下優也が明かす、6年ぶりソロアルバムへの想い「影の部分にフォーカスを当てたかった」

リアルサウンド

19/3/27(水) 19:00

 前作から約6年。長い時を経て、松下優也渾身のフルアルバム『BLACK NEVERLAND』が3月27日にリリースされる。今作は、楽曲はもちろん、アルバムタイトルから衣装、ビジュアルまで松下本人がセルフプロデュース。彼はこのアルバムにどんな想いを込めたのか。胸の内を語ってもらった。(高橋梓)

(関連:YUYA(松下優也)率いるX4はなぜ面白い? メンバーの個の強さで一線を画すグループの在りかた

■「今回は、自分の感性に素直になりました」
ーー6年ぶりのフルアルバムですが、どんな気持ちでこの作品に向き合ったのでしょうか。

松下優也(以下、松下):そうですね、自分を応援してくれているファンのみんなや、自分のやりたいことに興味を持ってくれるであろう方たちに対して、100%全力を注いで作ったアルバムです。今回は曲もそうですし、ジャケットからアルバムの中の写真まで自分でプロデュースしているので、より手作り感があるアルバムになったんじゃないかなと。

ーーセルフプロデュースだからこそ、貫いたものもあると思います。

松下:自分の中で「こういう表現がしたい」と思ったことに素直になるというか。今までは、「こういうのは良くないんじゃないか」と勝手に思っていたんですよね。「こういう表現はしないほうが良いんじゃないか」とか、「こういうことは誰も求めてないんじゃないか」とか。自分で、やりたいことやひらめきを勝手にないものにしていた部分もあったんです。でも今回は素直になって、自分が本当に良いと思うことを忠実にやりました。

ーーなるほど。「ないものにしていた部分」とはどんな部分なんですか?

松下:結構尖った表現だったりだとか、ですかね。

ーーそれは歌詞で?

松下:歌詞もそうですけど、たとえば『BLACK NEVERLAND』のジャケ写の時、髪の毛を赤と黒のツートーンにしたんですよ。そもそも「ツートーンなんて、周りに批判しかされないだろうな」と思ってて。やってもいないのに、勝手に「そんなの良くないでしょ」って。けど、やりたいって思ったし、それが良いって思ってるから、まずはやらないとわからないじゃんって。自分で自分を決めつけるのが良くないなって思ったんですよね。それは髪の色だけじゃなくて、歌詞、曲の表現、曲の幅、全般的に思います。なんとなく自分のファンの方が求めるものは理解しているんですけど、そこだけに安心しているのもアーティストとしてはどうなんだろうって。楽しませたい、驚かせたい、感動させたい、色々感じてもらいたいっていう思いでやっているわけです。一方的に求められるものだけに甘えて、やっていくのは表現者として良いとは思えなかったんですよね。

ーー『BLACK NEVERLAND』には松下さんのやりたいことが詰まっている、と。

松下:そうですね。「やりたいこと」っていうと独りよがりになっちゃいますけど、自分の頭の中にしかない、表現したいことをやった感じですね。

ーー作詞もすべて松下さんが手がけてますよね。特に思い入れのある曲はありますか?

松下:7曲目の「In Darkness」は思い入れがありますね。歌詞を見てもらうと分かるんですけど、タイトル通り自分の影の部分を書いています。でも、自分のことだけじゃなくて。今の世界って、SNSとかで物事を簡単に発信できるようになりましたよね。その分、ちょっとしたことでいろんなことを言われちゃうから、ものすごく気を遣う。特に僕らってアーティストであり、表現者であり、大きく言うと芸術的なことをやっているのに、表現の幅が狭まって物事を軽々しく発言できなくなってしまっているような気がします。でも、音楽の中だったら自由に発信しても良いんじゃないかなと思い、歌詞に落とし込みました。影こそ本当の部分じゃないか、と。

ーーなるほど。そういったアイデアや考え方は、どんな瞬間に生まれるんですか?

松下:いろんな時に生まれます。ライブを観たり、音楽を聴いたりしている時に生まれることもありますし。あとは、不本意なんですけど、すごく自分が疲れている時に出てくることもあります。意外とそういう時の感情の方が強いことがあるんですよね。それは発散ではなくて、同じ気持ちの人がいるんだったら、音楽に残しておけば救われる人がいるかも知れないと思い、音楽に落とし込むというか。より多くの人に音楽を聴いてもらいたいですけど、一人でも僕の曲で救われる人がいれば、それで良いのかなとも思ってます。

ーーアルバムタイトルの『BLACK NEVERLAND』は、以前開催されたライブのタイトルでもある松下さんの造語です。どんな風に導き出されたのでしょうか。

松下:いつもは「タイトルどうする?」って、考えなきゃいけないタイミングで考え始めるんです。でも、『BLACK NEVERLAND』は何でもないときに出てきたんですよ。“BLACK”と“NEVERLAND”って相反するものだし、「面白いな」と思って。それに僕はブラックミュージックが好きで、“光の影の部分”を表現したいなと。人間誰しも一つの面だけじゃなくて、環境や状況、時期によっていろんな面を持ち合わせていると思うんです。その中でも、影の部分にフォーカスを当ててみたいなと。だから、BLACKってすごく自分らしいし、NEVERLANDはずっと子どもでいられる場所なので、僕も音楽などの創作的な活動は、常にそういう気持ちを持ってやっているため、意味合い的にもいいなと思いましたね。今回アルバムを出すってなった時に、世界観を考えても『BLACK NEVERLAND』というタイトルがしっくりきました。

■今のミュージックシーンには、危うげなものも受け入れられる多様性がある
ーーアルバムの中で、他に印象的な曲はありますか。

松下:アルバムの中で最後にできた曲が、5曲目の「Rendez-Vous」って曲なんです。最近ラップっぽい曲やダンスナンバーが多かったんですけど、最後もう一曲入れるなら懐かしいテイストのR&Bをやりたいなと思って。その日のテンションによって聞く曲って変わるじゃないですか。ラップは攻撃的に勢いづけたい時は良いんですけど、普段なんでもない時に聴ける曲もほしいかったんですよね。それで「Rendez-Vous」を書きました。

ーーどこか懐かしい印象ですよね。9曲目の「Playa Playa」にも通じるものがあるというか。

松下:「Rendez-Vous」は、流行りのR&Bというよりも1990年代後半とか2000年代前半くらいの、懐かしいサウンドのR&Bを意識しています。ライブで盛り上がる曲も欲しかったですし、「Playa Playa」もオールドスクールっぽい感じで、歌詞もそういう風にしてます。1980年代っぽい雰囲気のものを今っぽく落とし込んだイメージですね。

ーー前作からの6年間で日本の音楽シーンも変わってきていますよね。その変化に合わせた部分もありますか?

松下:僕よりもうちょっと下の世代、さとり世代あたりって、闇の要素とか破滅的な要素がウケてるなって、最近感じるんですよ。ただ明るいだけのものじゃなくて、危うげなものというか。たとえば、欅坂46さんのような。アメリカでもそういったダークミュージックが流行っていますよね。ヒップホップとかも「明日死ぬんちゃう?」と思うほどロックなアーティストたちがいて、音楽的にも面白いし、すごくかっこいいなと。ラッパーなんだけどロックスターみたいな(笑)。僕も以前から音楽でそういった影の部分の表現をしていたので、今の日本の音楽シーンにもあっているのかなと思います。

ーーでは、今の音楽シーンに合わせているというよりも、もともと作っていたものをより出しやすくなったという感じでしょうか。

松下:そうですね、多様性が認められやすくなったのかなと。「あ、こういうのでもいいんだ」と思えるようになりました。

ーー曲作りの面でいうと、Jin NakamuraさんやSHUNさんなど長年一緒にやってる方と今回もタッグを組んでいますね。

松下:Nakamuraさんはお願いすると、僕が想像していたよりも遥かに上のものを毎回作ってくださるんですよ。中でも「Painful Romance」は、新曲なんだけど、デビュー当時から僕を知ってくださっている方にとっては、懐かしい雰囲気があるように感じるのではないでしょうか。SHUNは一番の親友なので、好きなことも価値観も似てるんですよ。今回、ようやく組めて嬉しかったです。このアルバムを制作している期間は、舞台本番中だったのですが、SHUNの家に行って「どういうテーマにする?」とか、いろいろと話し合って、意見を出し合いました。でも、SHUN以外の方とも作品を作るときは、トラックダウンのことも含めて、ディスカッションを重ねるようにしています。たとえばラップの曲だと、ラップの重ね方や声のエフェクトのかけ方とかは全部僕が考えています。ラジオっぽいサウンドがいいとか、ピッチシフトで声質を変えたいとか。なんども試行錯誤を重ねて作っているので、案外歌モノよりもラップのほうが時間かかることも多いんですよ。

ーーアーティスト活動以外も忙しいなか、作品づくりにおいて妥協は許さないのですね。

松下:別の現場にいても、スタッフさんから送られてきた音源は必ず聴いてました。自分的に「ここ思ってたのとちゃうねんけどな」と感じる部分があったら、「ここの音もっと上げてください」「ベースの音もっと聴きたいです」などとお願いするようにしていましたね。

ーーそうやって作り上げた『BLACK NEVERLAND』には、R&Bやラップなどいろんな表情の曲が詰まっています。これまでの楽曲と聴き比べると、根本は変わらないけれど幅が広がっているように感じました。

松下:僕は音楽において、とにかくやりたいことが多いので、自分のスタイルは確立していないと思っています。ブラックミュージックは好きなので、そこはブレることはないですが、、今やりたいことを一つひとつやっている感じですね。あとは曲の世界観を意識しながら、松下優也としてどう落とし込むかを常に考えています。

ーーデビュー曲の「foolish foolish」と聴き比べると、曲の世界観や影の部分がより際立ってきたように思います。

松下:あの頃もやりたいことはいっぱいあったし、ダークな世界観も好きだったんですが、まだ18歳だったから、曲に黒い部分がなかったんですよね。素材をどう活かすかを考えていたのかもしれないんですが、ただのマセたガキでした(笑)。その年齢から仕事をしていく上で感じ取った部分もあったんでしょうね。少し前までそういう影の部分を抑え込んでいたんですが、テレビやニュース、SNSとかを見ていると「立場や職業が違ってもみんな悩んでるんだな」、「ぶち当たってる壁って似てるのかもしれない」って思うようになって。だったら、今僕が思っていることを素直に音楽にしちゃった方が僕も良いし、それを求めている人もいるんじゃないかなと。だとしたら、Win-Winだなと思うんですよね(笑)。

■グループ活動、俳優業、すべてがアーティスト・松下優也の素になる
ーーX4の活動とあえて差別化しているところはありますか。

松下:X4をはじめたのは2015年。可能性を広げるために、ソロで表現できなかったものもやりたいと思い、グループをはじめました。やり始めた頃はまだ、他のメンバーも僕も荒削りだったんですよね。だから僕がやりたいことをそのままグループの活動に落とし込んでいた部分が強かったのですが、時間が経って今は、みんなそれぞれやりたい方向性が定まってきました。だから、僕が思い描いていたものだけをやる必要はないんじゃないかと。グループはグループ、ソロはソロではっきり分けようと思ったんです。曲にしても。僕が詞を書く時は、X4と松下優也で全く違います。他のメンバーが歌う姿や、それぞれどういう言葉が似合うかをイメージしながら書くので、自然と言葉が変わってきますね。

ーーお互いを知り尽くしてるからこそできることですね。X4は松下さんが牽引して結成しましたが、メンバーから刺激を受けることもあると思います。

松下:僕とは全く違った才能を持っているメンバーなので、常に刺激はもらっていますね。T-MAXは多分人生で会うことがないレベルの天然ですし(笑)。それも才能ですよね。JUKIYAは年齢が9個も違うので、僕よりも9年分の可能性に溢れています。それに彼の世代から見えているものと、僕の世代から見えているものは違う。そういう意味では、僕にないものを持っているから面白いんですよね。KODAIは、すごくしっかりしている。歌の才能もあるので、そういう面でも刺激を受けていますね。

ーー刺激と言えば、演技の仕事からもアーティスト活動へ活かされてる部分はあるのでしょうか。

松下:めっちゃありますね。こういう仕事をしていると特殊に思われることもあるんですが、僕も普通の人間です。だから人生において、とんでもないドラマがしょっちゅう訪れるわけではないんですよ。でも、お芝居をやると自分の人生では経験できないことが経験できる。時代や生い立ちや環境など、僕ではない誰かの生活を体験できるので、、役を通していろんな感情が芽生えてくるんですよね。それは創作にも活かせますし、人間としての幅も広がります。

ーー『BLACK NEVERLAND』でも活かされてますか?

松下:最後の「Moonlight」はそうですね。自分の役に当てはめてるわけではないのですが、2017年の舞台『僕だってヒーローになりたかった』で芝居をしている際に生まれた気持ちを書いた曲です。実際目に見えているものと、その人の中身ってギャップがあるんじゃないかなと思って。

ーー曲調だけでなく、いろんな“松下優也”が詰まっているアルバムなんですね。このアルバムで最も注目してほしいポイントがあれば教えてください。

松下:歌詞を見てほしいです。歌詞に凝っていて、自分なりに言葉遊びをしているので、考察してもらいたいな。自分的には「これ面白い」と思って書いてるんですけど、わかりやすくはしていないので、ちょっとしたところの言葉選びにも、僕の個性を詰め込んでいるので、そういうところを読み解いてほしいです。

ーー単に聴くよりも、楽しめそうですね。では最後に。今後やってみたいことは?

松下:めちゃめちゃたくさんあるんですけど……、今思っているのは、フルアルバムって作るのに時間がすごくかかるんですが、なるべくコンスタントに新しいものを発信していきたいなと。でも僕はやりたいことが多く一つに絞れないので、ミニアルバムみたいな形式が良いなと思っています。たとえば、ラップの曲を集めたものや、もともとネオソウルも好きなので、今で言うオルタナティブR&Bを集めたものとか、それぞれジャンル分けした作品を出していきたいです。

(取材・文=高橋梓)

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